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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
少女と少年

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第92話 「俺を必要としてくれてる」

「なんだあれ…」


 空の上でロボットみたいな2体の巨人が魔獣達と戦いを繰り広げていた。特に巨人の方は超人モードのダイゴさんと似ている感じがした。

 ちょうど生徒会の女子が近くを通り掛かったので、空中のあれが何なのか聞いてみよう。


「うわっ黒金…何か用?」

「空のあれって何だ?」

「プッ…ナインちゃんから何も聞かされてないの?優先順位ひっくいんだね~!あれはね──」


 嫌味を含めた説明を聞いて、ようやく何が起こっているのかを理解した。


「まさかそんなことになってたなんて…」

「あのさ、狼太郎達の邪魔しないでよね」

「分かってるよ」


 しかし、俺もこのまま避難者の支援をするだけじゃダメだ。ナインから杖を借りて、次の戦いまでに強くならないと!


「どこにいるかな…」


 俺はナインを探して生徒会要塞に来た。きっと以前と同じ訓練場にいるはずだ。




「狼太郎!」


 第三訓練場からナインの声がした。深刻な感じだが、何かあったのだろうか。


 ビュン!


 頭の真横を魔法の杖の様な物が訓練場から飛び出して行った。

 気になったので音を立てず、静かに訓練場を覗く。そこにいたナインは膝を付いて、倒れている狼太郎に胸骨圧迫を行っていた。

 心臓マッサージしてるって結構ヤバい状態なんじゃないか!?人を呼ばないと!


「水を差すような真似はしないでおくれよ」


 キュルキュルキュル!


 助けを呼びに行こうとしたその時、俺の身体に何かが巻き付き、さらに物陰へと引き寄せられた。


「生徒会長!?ムグッ!」

「まあ黙って見ているんだ」


 突然現れた生徒会長に捕まってしまった。彼女はハンカチを俺の口に詰め込んで、声が出せないようにした。

 一体なんのつもりだ!


 その頃ナインは身体を止めた。そして倒れている狼太郎に顔を寄せるのだった。


「見ろ。倒れた狼太郎のために人工呼吸をしてくれるみたいだ」


 ナインは狼太郎の顎を持ち上げて、お互いの口を密着させた。

 違う。あれは真面目な人工呼吸だ。決してキスなんかじゃない。


「平静を保ってるつもりだろうが…酷い顔をしているぞ」


 分かってるはずなのに…この抑えられない苛立ちはなんだ!?どうしてあの光景を見てゾッとしているんだ!

 ナインが人を助けようとしているのは当然のことだ。それの何が気に入らない!?


「またやったぞ!」

「プハッ!ペッ!ゲホッゲホッ…いちいち興奮しやがって!小学生かよてめえは!あれはキスなんかじゃない!」

「おや?私はキスなんて一言も言っていないが…」


 物凄い力で拘束されて身動きが取れない。今すぐこの女を殴ってやりたいのに…!俺は弱すぎる!


「私は考えを改めたよ。やはりナイン君はハンターズに必要だ。全ての行動に迷いを持たず狼太郎の蘇生に取り組んだ。彼女は狼太郎の元にいるべき人材だ」

「狼太郎が倒れてるのにお前は何もしないのかよ!」

「あぁ、言い忘れていたがあれは一服盛ったことによる一時的な物だ。しばらくすれば止まった心臓は動き出し呼吸は元に戻る。ついでに訓練で溜まった疲労も回復する」


 だったら、今ナインのやってることは全部無意味じゃないか。


「狂ってる…!お前は最低だ!」

「君も愛する家族を失ってみろ。そうすれば私を理解できるさ」


 すると訓練場からナインの声が聞こえてきた。


「心臓が動き出した!それじゃあ呼吸は…息してる!うあ~良かった~!」


 滝嶺に怒りを向けている間に、蘇生は成功していた。


「私はこう思うんだ。狼太郎は騎士で、彼に助けられた私達は姫なんだと。その姫の口付けで息を吹き返すとはロマンチックだとは思わないかね?」

「全部お前が仕組んだことだろ!それにナインはあいつに助けられてなんかいない!傷付けられてばかりだ!」

「ナインはこの先、ここで命を救った狼太郎に救われることになるだろう。ハッキリ言うが君は邪魔な人間だ。ナインもきっとそう思っている。もう君は必要ないんだ」

「ナインがそんなこと思ってるもんか!」

「事実、君がいなくても彼女は強い。杖がなければ戦うことも出来ない黒金君はお荷物なんだよ。そんな君のお守りをしながら戦う彼女の気持ちにもなってみろ」


 そんなはずがない…ナインは俺を邪魔者だなんて思ってない。


 訓練場にはハンターズの少女達が集まっていた。狼太郎は彼女達に見守られながら保健室へ運ばれて行き、その場にはナインだけが残った。


「誰からも必要とされている狼太郎はあんな風に心配してもらえるが、君はどうだろうな」

「ナインは…俺を必要としてくれてる」

「君は自己評価が高すぎるな。もっと客観的に自分を見てみるといい…一つ教えておいてやるが、ハンターズの皆はお前の事が嫌いだ」

「それがどうした。ナインはな…俺を…」


 訓練場から出ていくナインは、俺に気付かずどこかへ行ってしまった。


「さて、狼太郎の様子を見に行くか…なっ!」


 グビャッ!


 滝嶺は去り際に俺の股を蹴り上げて、駆け足で狼太郎の元へ。


「くぅ…うぅ…!」


 一緒に戦ってきた俺よりも、あんなやつの方を必要としているだって?

 だから俺は今まで特訓という形で雑用させられていたのか?


 いや…だったら次の戦いで証明すればいい。ただ暴れるだけの狼太郎と、ナインの戦いを支えられる俺のどちらが必要なのか。


 ナインならちゃんと分かってくれる。

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