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第91話 「どういうことなの!?」

 ある日、僕の兄を名乗る二人組の男がやって来たと、校門の警備に当たっていたハンターズの隊員から知らされた。

 もしやと思った僕は狼太郎との訓練を中断して、校門前までやって来た。


 少女達から銃を向けられる二人は間違いなく僕のお兄ちゃんだった。


「セナ兄ちゃんとキョウヤ兄ちゃん!」

「ようナイン!逞しくなったな!」

「久しぶりだね、ナイン」


 頼れるお兄ちゃん達が来てくれた!これなら魔獣が何体現れようとも負けはしない!


「あれ?キョウヤ兄ちゃん。アン・ドロシエルの事は他のお兄ちゃん達に任せるんじゃなかったの?」

「そうしたかったんだけど…事情が変わったんだ。ノートさんから連絡を受けて俺はセナ兄ちゃんとここを守ることになった」

「あの魔法少女たちは?」

「魔法少女じゃなくてヤマタノビジョタチね。魔獣の発生に備えて皆、日本の色んなところで待機させてるよ」


 あの人達いないんだ。苦手だったから安心した。

 

 お兄ちゃん達が敵じゃないと知ると、周りの少女達は武器を降ろした。もっとも、そんな鉄砲じゃ傷付ける事すら出来ないだろうけど…


「お兄ちゃん達がいるならもう怖いものなしだね!早くアン・ドロシエルをやっつけよう!」

「そのことなんだけど…ごめんねナイン。俺達、アン・ドロシエルの相手をする余裕がないみたいなんだ」

「え、なんで!?どういうこと!?」

「その角を使えば分かるよ…魔力をサーチしてみて」


 キョウヤ兄ちゃんの言っている意味が分からないまま、僕は周囲の魔力を探った。


「お兄ちゃん達の強い魔力しか感じないよ?」

「もっと集中して…探る範囲を広げてみて」


 市内に発生した魔物に気付けるぐらいには、この角の探知範囲は広いんだけどな。

 ………あれ?微弱だけど変な力を感じる。


「空の上に何かいるよ…?」


 次の瞬間、僕は曇天の向こう側に無数の魔力を探知した。


「魔獣だ!空に沢山!」


「思ったより動きが早い…兄ちゃん、先に行くから説明よろしく」


 巨大な姿、超人モードに変身したキョウヤ兄ちゃんが空へ向かった。そして雲を破って現れた数えきれない程の魔獣にたった一人で応戦した。


「どういうことなの!?」

「魔獣が大量発生したあの夜、この街の空、大気圏ギリギリの位置にアン・ドロシエルの物と思われる巨大な装置が現れた。ノートさんが調べたところによると、それは魔獣の召喚装置だと判明した」

「だったら壊しちゃおうよ!」

「出来ないんだ。あの装置は次元に干渉して魔獣を召喚しているから、稼働した状態で壊せばこの世界にどんな影響が出るか分からない」

「装置を止めるには!?」

「キョウヤはアン・ドロシエルを捕まえて本人に止めさせるつもりだ」


 説明を終えたセナ兄ちゃんも超人モードに変身した。


「俺とキョウヤは出現する魔獣を倒し続ける。お前はアン・ドロシエルの野望を阻止して、あの装置を止めさせるんだ」

「そんな…お兄ちゃん達なしで戦わないといけないの!?」


 せっかく強い味方が増えたと思ったのに…

 もしかして上空にあるその装置は、街を攻めるためじゃなくて、二人を引き寄せるために造られた物なんじゃないか!?


「これはパロルート隊員7号から9号への命令だ。アン・ドロシエルの捕縛、頼んだぞナイン!」


 セナ兄ちゃんも飛んでいった。そして二人が揃うと、街の空に大きなバリアが発生した。

 お兄ちゃん達はその向こうで発生し続ける魔獣と長く続くであろう戦いを始めた。


「お兄ちゃん…」


 いや、気落ちしちゃダメだ。お兄ちゃん達がいなくても倒さないと。元々いない前提で動いてきたじゃないか。


「ナイン!空のあれなんだよ!」

「狼太郎、訓練に戻るよ」

「え、空のあれは?魔獣を放っておいていいのかよ?」

「お兄ちゃん達が止めてくれる。僕達はやるべきことをやろう」

「あ、あぁ…」




 そうして訓練場に戻り、中断していた狼太郎の訓練を再開した。

 初日からほとんど進展してないが、狼太郎は力のコントロールを諦めなかった。


「まだ…もう一回だ!」

「おう!」


 いや、暴走した後すぐに立ち上がるようになったの大きな成長と言える。

 彼は成長が遅いタイプだ。けど目標に到達すればあの生徒会長よりも強く頼もしい味方になる!


「頑張れ!狼太郎!」

「ガルルルルル!」


 ウォルフナイトが暴れ出す。この時はフェン・ラルクという魔獣の意識が表に出ているそうだ。

 もしかしたら何か情報が得られるかもしれないと、僕はコミュニケーションを試みた。


「やぁ!フェン・ラルク!」

「グゥゥ…」

「諦めなよ。お前みたいなやつじゃ心の強い狼太郎の身体を完全に支配することなんて不可能だ」

「ガウッ!」

「狼太郎からは卑劣な性格って聞いてるけど、僕とは会話すらしないんだね」


 ウォルフナイトが襲い掛かろうと予備動作を見せた。その瞬間、周囲の杖を起動させて一瞬で身動きを封じる。

 だんだんこの作業にも慣れてきたな。


「はい、ざ~んねん」

「ガウッ!ガウガウガウ!…グルル」


 狼みたいな魔獣人だ。近くで見るとフワフワした部分があって少し可愛いかも。


 シュゥゥウウウ…!


 そして人間の姿へと戻っていく。これの繰り返しだ。


「あんまり近寄ると危ないぞ」

「その時は君が何とかするんだよ」


 さて、きっと「もう一回」と言ってくるはず。僕はまだまだやれるぞ!


 バタン!


 しかし狼太郎は倒れてしまった。疲れてしまったのだろうか?

 とりあえず、保健室に運んであげよう…


「…狼太郎?」


 様子が変だ…息してない!脈が止まってる!


「狼太郎!?ねえ!狼太郎!」


 これまでにも倒れることはあったけど、呼吸と心臓が止まることなんてなかった!


「メッセンジャー・ワンド!狼太郎が倒れたって保健室の人に伝えるんだ!」


 メッセージを任せた杖が飛んでいき、僕は心臓マッサージを開始した。お兄ちゃん達がやってるのを見たり、練習はしたけど実践はこれが始めてだ。


「………」


 どうしていきなり倒れてしまったんだ…


「ハァムッ!フーッ!」


 頼むから目を開けてくれ!


 意識のない彼にそう頼みながら、僕は人工呼吸を行った。




「ナインちゃん!狼太郎君大丈夫なの!?」


 うわぁ!保健室の女子だけ呼んだつもりがたくさん女の子が来ちゃったぞ。


「うん。呼吸、鼓動共に正常だよ」

「良かった~!とりあえず保健室に運ぶからみんな手伝って!」


 まだ目を覚まさない狼太郎は、担架に乗せられて訓練場から連れて行かれた。


「ふう…あーあ…」


 僕のファーストキス、人工呼吸ついでに捧げちゃったよ。それも凄いプレイボーイの男子に。

 まあ、放っておけなかったし仕方ないか。

 


 とりあえず今日の訓練はここまでかな。何度もウォルフナイトの動きを止めるってだけでかなりの魔力を消費しちゃった。


 敵はいつ攻めてくるか分からない。こうしている間にもお兄ちゃん達は空で戦っているんだ。

 ちゃんと休んで、戦いの時に備えないと…

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