第78話 「残念ですね…」
光太が急にいなくなった次の日…
ボガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
「あ…あああ…」
「嘘でしょ…」
僕達の住んでいたアパートが突然爆発した。
僕はサヤカ達と一緒に遠くの方まで出掛けていた。ちょうど帰って来たその時、目の前で爆発が起こったんだ。
ノートとバリュフは爆発に巻き込まれたが、瓦礫を掻き分けて出てきた。
「…加奈子は!?」
「ナッコー外出中だって!良かった~!」
ナッコーは高校の図書室にいるみたいだ。ノート達も大した怪我じゃないみたいだし、これで一安心だ。
「うん、全然良くないからね」
新入居者のノート達に差し入れを持って来た大家さんは涙を流し、倒壊したアパートを眺めていた。
「俺の思い出のアパート…前の大家さんから託されたアパートが…」
「いってって…なんだよも~!ボロアパート遂に倒壊か?だったら今月分の家賃払わなくて良いよなぁ?」
「倒壊したのではなく爆発したみたいです。敵襲かもしれないから警戒してください」
建物が爆発ということで、警察と消防が来る騒ぎになってしまった。
「俺の思い出のアパートなんです~!」
「残念ですね…」
大家さんは泣いていた。警察はウンウンと、めんどくさそうに頷いていた。
それから1時間後。大家さんは怒りに燃えていた。
「犯人はこの中にいる!」
ナッコーを除く住人をアパート跡地に集めたかと思えば、なんと僕達の中に爆発を引き起こした犯人がいると疑ったのだ。
「私達は出掛けてたから犯人はノート達だと思います」
「僕達を疑うのか?お前たちこそ、ガスの元栓を閉め忘れていたんじゃないのか?」
「私がそんなミスするわけないでしょ!?あんたこそ寝言で魔法使ったんじゃないの!?」
「バリュフは寝相こそ悪いけど寝言なんか言わないよ」
「もおおおお誰が犯人はどうでもいい!」
大家さんが怒鳴った!ってか疑心暗鬼に追い込んだ末にどうでもいいって雑過ぎでしょ!?
「どんな理由だとしても、こうなったのは住んでいる君達全員の責任だ!」
「なにそれ!?僕達悪くないもん!」
「いいか!君達の自費だ!自費で新しくアパートを建てるんだ!それが出来なければ…」
バタリ。大家さんはアパート爆発のショックでとうとう倒れてしまい、入院することになった。
「というわけで!大家さんが退院するまでに新しくアパートを建てよう!みんなで力を合わせればきっと良い物ができるよ!」
僕らはこれまで力を合わせて戦って来た仲間なんだ。アパートの建築だって出来るさ!
「いや無理だろ。俺達素人だぞ」
「お金作って業者さんに頼も~よ?…ほら、杖出して」
「ノートさん、このアパートが一番安いかと」
「うわーここと同じくらい汚いな…てか安すぎでしょ。絶対事故物件じゃん」
「みんな!頑張ろう!」
「おー」
残ったのはサヤカだけ。ツカサとジンはパトロールと言って逃亡してしまい、ノート達は新しいアパート探しへ。
「…ツバキは?」
「あそこ」
ツバキは遠くに見える高層マンションを見ていた。僕達じゃ手出しできないくらい高いぞあのマンション。
「それでこれからどうするの?」
「ビルディング・ワンド!これでイメージした建造物が一瞬で建てられる…だけど建材が必要なんだ。どこかで手に入れられないかな…」
「だったら都市部の幽霊屋敷をバラして使おうよ」
「勝手に壊して大丈夫かな~?」
「どうせ100年経ったって放置され続けるんだろうし、私達が使っても良いんじゃないかな?」
まあどうせずっとそのままなんだろうし、僕達が有効活用してあげた方が家も嬉しいよね。使われていた物を再利用する建物。名付けてリユースビルディングとかどうだろうか。
僕達は早速、幽霊屋敷をバラしにやって来た。
「すいませ~ん!誰もいませんか~!…今からこの建物、ぶっ壊しますよ~!」
「そんな呼び掛けしなくたって、このハートビート・ワンドがあるから大丈夫だよ」
幽霊屋敷にはホームレスなどが住み着いているかもしれないから、壊す前には要注意だ。
「人間の反応なし…でも猫とかがいるな。バリア・ワンド!」
建物の中にいる動物達にバリアを付与した。これで怪我をする心配もない。準備完了だ!
「それじゃあサヤカ!」
「プレス・ワンド!」
そして目の前の建物は、上から何かに押し潰されたかのように倒壊。瓦礫から這い上がって来た動物達は慌てて逃げていった。
プレス・ワンドは押し潰す力を発生させることができる、今回の作業にはピッタリの杖だ。
「キネシス・ワンド!キャリア・ワンド!」
物体を持ち上げるキネシス・ワンドで瓦礫を持ち上げて、物を収容するキャリア・ワンドの中へ。
「1軒目完了!次、いってみよう!」
それから僕達は幽霊屋敷を次々と解体していき、どんどんアパートの材料となる瓦礫を回収した。
30軒ほど破壊したところでパトカーのサイレンが近付いてきので逃走。
僕達はアパートの跡地に戻り、ビルディング・ワンドを地面に突き刺した。
「どんなアパートにしようか?」
「前より大きいのが良いな」
各部屋1LDKで地下にガレージがあればいいな。あと魔獣が現れた時のために発進用カタパルトが欲しい!
「サヤカもイメージしてみてよ。何が必要かを」
僕とサヤカの脳内イメージが共有され、アパートの形が出来ていく。この状態で能力を発動すれば、アパートが一瞬にして建つのだ。
「ただいま~って面白そうなことやってるじゃん」
「俺にもやらせろ!」
さらにジン専用の部屋とツカサの考案した修行部屋が増えた。
「ビルは高くないと!」
さらにツバキによって部屋の天井が高くなり、アパート自体の高さも上がった。
「事務所欲シイデース!」
「アパート建てるんだってね!私も手伝うよ」
なぜかやって来たナイス・バディが探偵事務所、ユッキーはコンビニを設置することを提案した。
君達知らないかもしれないけど、これから建てるのアパートなんだよね。
そのあと生徒会の人たちもやって来て、アパートは色んな人の欲を合わせたキメラビルディングへと変質した。
「それじゃあ…ビルディング・ワンド!作動!」
キャリア・ワンドから材料が飛び出し、自動的に建物が出来上がっていく。
そして完成した!僕達の都市防衛要塞オーディンだ!
「違うだろ!僕達アパート建てなきゃいけないのになんでこんな風になっちゃったんだよ!」
「なんか凄い人増えてない…?」
「どうしよう…こんなの見たら大家さん怒っちゃうよ…」
「そんなことないよ」
人混みの中から大家さんが現れた。しかし僕の予想に反して怒っている様子はなく、優しく微笑んでいた。
「凄いじゃないか。みんなのやりたいことが一つに合わさって、こんなアパートが出来上がったんだ」
これがアパートに見えるなら眼科に行った方がいいですよ。
「設備を紹介してもらっても良いかな?」
まず、コンビニが出来ていた。夜更かししてると買い物に行きたくなるけど、そういう時に便利だ
屋上には対空ミサイルの砲台が設置されている。この要塞にシェルターがないのは、ミサイルが来ても絶対に撃ち落とすという自信の現れだ。
「こ、この部屋は…」
「身体が重い!」
ツカサの望んだ修行部屋は30倍の重力で立っているのがやっとだった。ここで特訓すれば強くなれそうだぞ!
それからも色んな部屋を案内した。大家さんはとてもニコニコしていて、楽しそうだった。
「皆の夢が詰まった凄いアパートだ…実はね、俺の願った物も入ってるみたいなんだよ」
大家さんも造る直前、杖に触れていたみたいだ。一体どんな設備を願ったんだろう?
ウィーン…
地面が開いて台座が出現した。その上にはボタンが一つ付いているだけだった。
ポチッ
大家さんがボタンを押した。
「大家さん、なんですかそれ?」
「これはね…自爆スイッチだよ。名付けてラグナロク」
「へえ~自爆スイッチですか~」
「Ten…Nine…Eight…」
カウントダウンが始まってしまった。
「大家さん落ち着いて!システムを停止させるんだ!」
「うるさい黙れ!俺のアパートを滅茶苦茶にしやがって!貴様ら全員!この日本と共に海の藻屑にしてくれるわ!」
ヤバい!派手にやりすぎた!大家さんの怒りに触れてしまったんだ!
「みんな下がれ!オーディンが爆発する!」
「ほあああああああああああ!」
僕達が住もうとしていたアパートが大爆発した。
そしてこの日、世界から日本という国が消滅。ユーラシア大陸は大きく傾き、地球の自転も狂ってしまった。