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第62話 「あのね…」

 レーダックスフンド馬鹿2匹と素材を集めに行ったナッコー。

 どうやって合流しようかと考えていたら、彼女は小舟で待っていた。


「おかえりなさい。素材集めは終わりました…ただ…」

「…やられちゃったんだね」

「はい…大きな猪が襲い掛かって来て、それから私を守るために…」


 ダックスフンド達は島の主からナッコーを守ろうと懸命に戦ったみたいだ。


「ナッコーが無事で良かったよ」

「素材は…ちゃんとここに」


 ボディーバッグから出てくる生き物たちは作り物だ。実際には命と魂は存在しない。ただ、悲しむ彼女にそれを説明することは野暮な気がした。


「それじゃあ帰ろうか。薬を待ってる人たちの元へ!」


 僕達も飛んで帰りたかったが、この小舟が借り物なので返さなければならない。なので再びスクリュー・ワンドでスピードを上げて、シャイアラへ一緒に戻ることにした。



 帰還後、ナッコーが集めてくれた素材を医者達に渡した。


「まさか本当に素材を持って帰って来るとは…それもこの量、予備の薬も用意できるぞ!」

「ナッコー凄いじゃん!」

「ワンちゃん達が一緒に頑張ってくれたおかげです」


 これで治療が再開出来る。それにしても彼女がいなければもっと時間が掛かっていた。


「ナッコー、一緒に来てくれてありがとう!」

「力になれたみたいで何よりです」


 大人びてるなぁ~同い年の誰かさんと違って。


「今どうして俺の顔見た?」

「べっつに~」


 薬は用意出来たけど患者は沢山いる。僕の順番が来るのは明日になりそうだ。


「今日はもう休もう」

「ホテル借りれたんだってな?やっとベッドで眠れるのか~!」


 光太も頑張ってくれた。魔獣との戦いであの指摘がなかったら、今頃身体を乗っ取られていたかもしれない…ゾッとするなぁ…


 薬の材料を集めたお礼として、街のホテルを二部屋貸して貰えた。


「それじゃあ、ナッコーは僕と一緒に──」

「私、一人じゃないと寝れないんです」

「あ、そう…」


 ナッコーは一人でしか眠れないらしい。なので僕は光太と一緒の部屋を使う事にした。


「疲れた~!俺もう寝るわ!」

「もう!お風呂入らないと汚いよ!」


 ドボン!


 そのまま眠ろうとしていたので、早速沸かしたお風呂に光太を投げ入れた。


「あちいいいいい!」

「ベッド臭くすんな。従業員に迷惑だろ?」

「テメエ!温度考えていれろよ!」

「ギャアアアアア!」


 光太は生意気にも抵抗し、僕を浴槽へ引っ張り入れた。


「あっつ!?ふざけんなよ!」

「お前が沸かしたんだろうが!何℃にしたんだボボボボボ!」

「ギャハハハハハ!」


 頭を掴んでお湯の中へと押し込む。これで頭も洗えて身体も温まる。僕ってなんて優しいんだろう。


「ブハア!」

「うわきったね!鼻から水出すな!」

「ちょっと待てえええ!今のはやりすぎだろ!マジで死ぬとこだったぞ!」

「魔法の杖あるし大丈夫かなって…それよりも…」


 お互いに服がびしょ濡れだった。


 魔法の杖を並べ、服を乾かす用意をしていると光太がシャワールームから出てきた。とてもダサい寝巻きを着ていた。


「今度こそ寝るからな。絶対起こすなよ」

「分かったよ。おやすみ」

「……おやすみ」


 僕もシャワーを浴びてから、ベッドで横になった。疲れていたので、眠りに落ちるのは早かったと思う。


 次の日。僕は名前を呼ばれて診察室に案内された。担当してくれるのは長い尻尾を器用に使う魔族、テウルの女性だった。

 僕は義足を外して断面を見せた。これが結構恥ずかしい。


「フムフム…魔獣との戦闘で無理矢理引き裂いたと…触りますよ」

「ヒヒッ…」


 早く適当に魔法を掛けるか薬を出して欲しいんだけど…再生するのってそんなに大変なの?


 プスッ…


 片足ずつ採血が行われた。かなりの量を採ったので、ボーッとする。帰りは光太に背負ってもらおう。


「………この濁った血液…あなたはもしかして…」

「はい。僕は…」


 しばらくして僕は病院を出た。外では光太とナッコーが身体の健康に良いというジュースを飲んでいた。


「あんまり美味しくないですね」

「味覚に不健康だなこりゃ。おーどうだったよ?」

「ウチじゃあ治せません!だってさ~」

「え!?なんでよ?」

「あー…話すと難しくなるんだけどさー…」


 このタイミングで光太にある秘密をカミングアウトしようとした時だった。


「大変だ!マナサ島から魔物が攻めて来たぞ!」


 街に走って来た男性の言葉に僕達は驚かされた。


 昨日、木舟を出発させた砂浜まで移動した。既に集まっていた多くの冒険者が武器を構えている。


「大変だよ。もしもあれだけの魔物がここに乗り込んで暴れるものなら、大勢の犠牲者が出る!」

「そこの少女の言う通りだ!家族や仲間、俺たちの大切な人がここで治療を受けている!いいか!とにかく島に入れるな!守り抜け!」


『ウォオオオオオオオ!』


 大砲を片手で持った男の人が鼓舞する。光太も杖を抜いて、準備は出来ていた。


「攻撃の射程距離に魔物が入ったやつからとにかく射て!近接武器を持った冒険者は彼らのカバーをするんだ!」


 ドオオオン!ゴロゴロゴ!ヴィィィン!


 海が燃え、雷が落ち、光線が放たれる。強力な魔法ばかり撃ち込まれた魔物達は、それでも前進をやめなかった。

 普通、ここまでレベルの差を見せ付ければ逃げ出すはずだ…


 ここにいる冒険者はきっとあの魔物達よりも強い。それなのにどうして逃げないんだ?力の差が分からないのか?


「これは…ミサイル・ワンド!」


 光太はミサイルを召喚、群れへ発射して連続して爆発を起こした。


「着たぞ!」


 魔物達が陸へ上がると、格闘戦を得意としない魔法使い達が狙われる。僕や他の剣士たちは、そんな彼らを守りながら戦った。


「ナイン!」

「気にしないで!海から来るやつらに攻撃を続けるんだ!」


 海を渡ったことで体力を消費しているみたいだ。僕の攻撃1発で次々に倒せてしまう。そこまでして、どうしてここにやって来たんだ?


「ビシュウウウ!」


 左腕に魔物の子どもが噛み付いた。草食のクロアンコクヘビが、どうして僕に噛み付いている?


「まさか…!」


 なんとなく彼らが攻め込んでくる理由は分かった。けれどここで防戦をやめるわけにはいかない。

 僕は魔物達を一匹残らず殲滅するまで戦い続けた。


 戦いは日が変わるまで続いた。最後のポイズンゼリザートを倒した時、疲労でほとんどの冒険者が倒れていた。

 倒した魔物は国の病院で使う道具や薬などに使われることになった。


「…ナイン、どうかしたのか?」

「あのね…きっとまた次も来るよ」

「次って…あいつら、また来るのか!?」


 動けないはずの冒険者が反応を見せた。こんなつらい戦いがもう一度あると知ったら、驚かずにはいられないだろう。


 僕もそう思いたくはないけどきっと来る。だからすぐには帰らず、数日間マナサ島の様子を見て待機していた。


 そしたら、島の主がさらに多くの魔物達を引き連れて、シャイアラへ向かって来ていた。

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