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第59話 「こっちはもうヘトヘトなのにさぁ」

 俺達は3日ほど掛けて、シャイアラ医療国へ到着した。


 色々大変だった…ガタクの転送屋はトラブルで営業を中止。復旧の目処も立たず、俺達は色んな交通機関を利用してここまで来た。

 そんなわけで予定していたよりも時間が掛かってしまったのだ。


 パシャリ!パシャリ!


 同行して来た石動はこうして異世界の写真を撮影している。世間に公開するつもりなどはなく、思い出として撮っているそうだ。


「凄い景色ですね。地面も建物も真っ白です」

「ヒールパウダーに似た成分の土みたいだね」


 するとナインは土を手で一掴み。それを俺の腕にまぶした。


「…なにすんだよ」

「君、さっき船で歩いてる時に壁で強く擦ったでしょ」


 ナインの言う通りだ。しかもその壁が錆びてザラザラしていたので傷が出来てしまった。


「この土なら…ほら!」


 土を払い落とすと、俺の傷はなくなっていた。さらにその部分だけ、肌にツヤが出ている。


「この土は軽い傷を治す事が出来るんだ」

「美容成分もあるんですね…」

「持って帰っちゃ駄目だよナッコー。ちゃんとお店で袋に入ったやつを買わないと」


 さて、本題に入らなければ…ナインの脚を治さないと。

 さて、このシャイアラには沢山の街が存在する。その街の一つ一つに専門としている医療分野があり、俺達はナインの脚を戻せそうな街へ向かわなければならない。


「再生医療の街フィージン。ここなら僕の脚を治してもらえるかな」

「なあ、医療費足りるのか?」

「パロルートの活動経費で…落ちるかなぁ…」


 国を走っているのは白い車ばかり。救急車か24時間運行している医療従事者、患者用のバスなど。事故による怪我などを防ぐため、そして健康のために不要不急の人間は歩かなければならない。


「ナインはバスに乗ってもいいんじゃないか?」

「義肢付けて歩けるからね。それに光太達置いてっちゃうし」


 地図を見たがフィージンは遠い。健康のためとか言っているけど、歩き過ぎるのも身体に毒だと思うがな…


「転送屋はないのか?」

「ないよ。疲れたらタクシーを呼ぼう。怪我人、病人がいれば割引してくれるらしいから」


 しかしナインはタクシーを呼ばず、遠くに見えるフィージンへ向けて白い大地を歩き続けた。


「はぁ…はぁ…」


 疲れた…出発してからここまでの3日間、移動の連続でロクに眠れてないからな…


 バァフォバァフォバァフォ!


 石動が土を顔に塗っている。いつの間にか肌がツヤツヤになっていた。歩きながらずっとこの土を付けていたのだろうか。


「ふぅ…これだけ塗れば私も美人ですね」

「ナッコーは元から美人だよ」

「お前ら体力有り余ってるなぁ!こっちはもうヘトヘトなのにさぁ」


 2時間近く歩き、大勢の人が押し入るフィージンに到着した。


「凄い混んでるな…」

「怪我で身体を失うことが多い冒険者ばかりだね。これは順番が来るまで何日か掛かりそうだ…」

「薬が切れたってどういうことだよ!」

「早く次の冒険に行かないといけないんです!」

「ですから!薬の入荷がいつになるか分からないんです!!マナサ島に材料を集めに行っているボランティアの方々からも現在連絡が途絶えておりまして!」


 これはただ混雑してるってわけじゃなさそうだな。なにか事情がありそうだ。

 ナインは早速、近くにいた看護婦に声を掛けていた。


「あの、どうかしたんですか?」

「身体を再生させるのに必要な薬の材料が足らなくて、治療が出来ずに患者が溜まってきちゃってるの…それを集めにマナサ島へ多くの人が向かっていったけど、何の応答もなくて…」

「だったらその材料集め、僕達も手伝います!」

「君みたいな子が?危ないわよ。それにその脚、義肢でしょ?患者に薬を集めに行かせるわけにはいかないよ!」

「でも僕はパロルートです!困ってる人を助ける義務がありますから!」


 ナインの名字が出た途端、辺りが一斉に静まり返った。


「パロルート…あの女の子が?」

「長女がいたって話には聞いていたけど…若すぎないか?」

「証拠を見せてみろよ!パロルートの隊員は超人モードっていうデカイ姿があるはずだぞ!」


 両腕のない患者が証拠を求めた。確か超人モードって、ダイゴさんが変身していたロボットみたいな姿のことだって説明されたな。

 ナインもあんな風に変身出来るのか…?


「超人モードは僕にはない!」


 ねえのかよ!そりゃそうだよな!あったらこれまでの戦いで苦労してねえよ。


「看護婦さん、必要な物を教えてください!」

「え…でも…」


 看護婦も困惑している。こんな小さな子どもに材料集めを任せるわけにもいかないよな…


「パロルートは報酬を受け取らない代わりに冒険者のランク等を無視してクエストに参加出来る。そうだったよな」


 病院から髭を生やした老人が出てきた。ここの院長だろうか?


「あなたは…?」

「私はこの再生医療の街のリーダーだ。君は本当にパロルートなのか?」

「はい。戦闘部隊パロルート、隊員9号のナイン・パロルートです」

「ナイン…あまり良い噂を聞かない子だ。信じていいのか?材料のあるマナサ島はとても危険場所だ。生きて帰って来られるか?」

「ちゃんと薬を持って、先に行った人達もちゃんと連れて帰って来ます」


 それを聞いた老人は文字が書かれた紙をナインに渡した。


「それが必要な材料だ。船を貸そう」

「ギルメラの眼球にドドウ花…素材を落とす魔物が強いやつばかりだ。大仕事になるよ、光太!」


 やっぱり俺も行くことになるか。まあ、頼まれなくても同行するつもりだったけどな。


「私からのクエストだ。ナイン・パロルート、薬に必要な素材を集めて来てくれ」

「えぇ、任せてください!」


 ナインの脚を治そうにも材料が足りない。それを集めるために、俺たちはマナサという危険な島へ赴くことになった。


「船って木舟かよ!」

「これが無限に物が入るアイテムボックス…この中に材料を入れていけばいいんですね」

「スクリュー・ワンド!これでマナサまであっという間だ!」


 ナインが船底に杖を付けた途端、小舟は物凄い速さで海を走り出した。


 この小舟、島に着くまでに壊れないよな…?

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