↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
少女と少年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/364

第49話 「なんてパワーだ!」

 獣人の元へ走る間にバッグから杖を抜く。

 ファーストスペルでナインを強くする分の魔力を考慮して、1本ずつ使おう。


「始めて見る杖だ。ナイン──」


 尋ねる前に、ナインは加速して獣人に蹴り掛かる。

 それを見たジンとツカサは敵の腕を掴んでは広げて、胴体を無防備にした。


「「せーの!」」

「オリャア!」


 二人がタイミング良く獣人を前に投げ、そこにナインの強烈な蹴りが入った。


「ガルッ!?」


 ナインは羽根を動かして空中で姿勢を維持。そこから連続して蹴りを繰り出し、獣人を押し出していった。


 一方で俺は、杖の能力を確認していた。風の流れが視覚化されるという変わった物だ。面白い能力だけど引き直しだ。


「今度こそ出ろ強いやつ…てなんだよこれ!」


 先端に丸ノコが付いてる!魔法の杖じゃなくて電動ノコギリだろ!

 けれど武器として使うにはちょうどいい!


「これ使え!」


 投げた杖をナインは後ろを見ずにキャッチ。獣人の背後へ瞬時に回り込み、回転した刃を背中に押し付けた。えげつない攻撃だ。


「グルア?!」

「それのどこが魔法の杖だ!」

「このサーキュラー・ワンドの刃は相手の防御力を下げながら魔力を排出させる優れ物なんだよ!」


 ナインは刃を回転させたまま獣人を持ち上げた。

 背中を切り刻まれ、内蔵をぶちまけるのも時間の問題だな。


 しかし獣人は腕と脚を勢いよく振り、その力だけで空へ跳んだ。


「なんてパワーだ!」

「ごめん、遅くなった!」


 ツバキとサヤカもやって来て全員が揃った。


 四人は視線を合わせて頷く。どうやらあれをやるつもりらしい。


「「「「フォーメーションソード・コンバイン!」」」」


 全員が同時に呪文を唱えると、その身体は光となって1つに合わさった。そして誕生した剣が、フォーメーションソードである。

 初めてサヤカたちに会った時以来だ。今回は俺でなくナインが剣を握った。


「弱点を分析する。ナイン、あいつと少しやり合って」

「分かった!光太、サーキュラー戻しといて!」


 サーキュラー・ワンドを投げ渡され、それをバッグに戻した。


「いくよ!」


 俺の時とは違い連携がしっかりしている。ナインはすぐに剣を抜かずに跳び上がり、右腕と両足で格闘戦を繰り広げた。



「ナイン!」


 ファーストスペルを叫ぶと、少しだけ彼女の勢いが増した。

 パワーアップしたナインは、獣人の防御を崩して顎を殴った!


「光太!」

「ナイン!」

「全然パワーが上がらない!」


 勢いが増したのは気のせいか!


「刃に切断力強化の魔法を掛けた。獣人の弱点は胸だ!そこだけが脆くなってる!」

「ひたすら蹴った部位か!」


 ナインは抜刀し、すかさず剣を振り下ろす。

 光る刃に切り裂かれた獣人は空中で大の字に広がった。


「今だ!」


 柄を回して刃を獣人に向けた。このままトドメを刺すつもりだ。




 ダダダダダダ!


「うわあぁぁぁ!?」


 なんだ!ナインの背中に何かが撃ち込まれた!


 4人は元の姿に戻ると、傷付いたナインを連れてこちらに戻って来た。


 せっかく倒せそうだったのに、誰かが邪魔をした!


「シールド!」

「言われなくても!」


 ツバキは指示が飛ぶ前に無数の盾を召喚。自身を軸に浮遊させた。


 獣人は起き上がると背を向けた。


「逃げちまう!」


 カランカラン…プシュウウウウウ…


 なんだ!?何か転がって来たかと思ったら煙を噴き出した!


 ダダダダダダ!


 ツバキが盾を動かして何かを防いだ。


 音の聴こえた後ろには、重装備の人間が銃を構えていた。ナインはあいつに撃たれたのか。


「誰だあいつ!」

「一人だけじゃないみたい」


 俺たちはいつの間にか、同じ格好の連中に囲まれていた。


「なんだよこいつら…」


 サヤカは盾を1つ取り、安全地帯から外に出た。


「私たちの狙いはさっきの獣人です!銃を降ろしてください!」

「ならば我々はお前をここで始末する!」


 顔は見えないが、ヘルメットに付いているスピーカーから女の声がした。


「どうしてですか!」

「ウォルフナイトは私たちの仲間だからだ」


 ウォルフナイト。それが獣人の名前か。


「仲間って…あなたたちは一体なんなんですか!」

「それをお前たちが知る必要はない!撃て!」


 ダダダダダダ!


 サヤカは射撃を盾で防ぐ。

 返事してすぐに迷いのない発砲。本気で殺すつもりだ。


「サヤカ来て!」


 銃弾を避けながら、サヤカは盾に囲まれた安全地帯に戻って来た。

 そしてナインはバッグから見たことのない杖を取り出した。


「ステルス・ワンド。姿を透明にして逃げるよ」


 ナインが杖を振ると俺たちの姿が薄くなり、やがて見えなくなった。

 それと同時に、ツバキは周囲に浮かせていたシールドを地面に墜落させた。


「消えた!魔法とやらでワープしたのか!?」


 みんなどこに逃げたんだ?見えないから分からないぞ…




 不安もあったが、逃げ出したウォルフナイトを追うことにした。足跡と血痕が続いていたので、それを辿って進んだ。


 あと一歩で倒せるところまで追い詰めたんだ。このまま逃してたまるかよ!


「ガルル…」

「大丈夫!?」


 見つけた!それにさっきの重装備のやつらも一緒だ!


「よしよし…大丈夫だよ…私たちはみんな………の味方だから」


 何を言ってるのか聞き取れない。透明なんだし、もう少し近付いても大丈夫だよな…


 シュウウウ…


 ウォルフナイトの手が崩れていく…あれは…


 人間の手!ウォルフナイトの中に人がいる!


「早く連れて帰ろう」

「待て!」


 一人がスマホを取り出した。そして次の瞬間、ウォルフナイトたちの姿が消えてしまった。


 目の前で人が消えたことにも驚きだが…まさかあいつは人間なのか?


 ふとガラスを見ると俺の姿が映っていた。透明化は解除されてしまったようだ。




 結局、俺は何の収穫も得られずにアパートに帰宅した。


「もう光太!僕が逃げるって言ったんだからちゃんと逃げてよ!撃たれてたかもしれないんだよ!」

「心配掛けてごめん」

「…無事で良かったよ。夜ご飯作ってるから、シャワー浴びてくれば?」

「うん、そうする」


 ウォルフナイトという名前の獣人にその仲間の部隊。また面倒なやつらが増えた。


 それにしてもファーストスペルが発動しなかったのは何故だろう。ナインを強くできていれば、あの弾丸にやられなかったはずだ。


 まずはそこからだ。ファーストスペルを使えるようにならないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。