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第30話 「悪いことしたから」

「僕達悪いことしたかな?」

「悪いことしたから捕まってんじゃねーの?」


 俺とナインは体内にダンジョンを創る竜、ダンジョンドラゴンに襲われたが、力を合わせてこれを撃破した。ナインはアーヌーンという町を守る為にドラゴンを倒したはずだった。


 しかし俺達のいるこの国、バボロスでは魔族に対して差別意識を持つ人間が多くいた。

 魔族に町を守られたことが気に入らないんじゃないのかなって思う。

 町の人達はドラゴンを倒したナインの力を怖がり、警戒されたナインは兵士に捕まり、それを止めようとした俺も一緒に連行された。


「おいお前!この箱を開けろ!」


 牢屋の前に現れた男は、シールボックス・ワンドを手にしていた。かなりの重量なのに、軽々と振り回している。


「さっき殴られたショックで開け方が分かりませーん!チンプンカンカーン!」

「馬鹿にしているのか!」

「づっ!?」


 いや、ビックリしてるけど今のは怒鳴られて当然だろ。

 ナインは捕まる直前、再びバッグを封印していた。これで牢屋の前で怒鳴っている男から杖を取り戻せれば、すぐにでも逃げ出せるわけだ。


「俺達を出してください!別に悪いことしてないでしょ!」

「いいや、ドラゴンを倒したあの力!隣にいるサキュバスは危険すぎる!」

「僕より強い魔族なんて他の国に沢山いるよ!お願いだから出して!」


 男は封印の箱を破壊する作業に戻っていった。簡単に壊せる物ではないので心配なさそうだが…


「差別意識の強い国で被差別者が裁判に掛けられたら、まず間違いなく有罪にされる」

「マジかよ…これからどうする?」

「脱獄だよ」

「プリズンブレイクか…」


 元いた世界ではそんなこと、やる力があったとしてもやりたくないが、ここは異世界アノレカディア。脱獄したところで日本の法律じゃ裁かれまい。


「お前のせいで俺まで捕まったじゃねえか!」

「いいや僕じゃない君のせいだ!」


「おい何やってるんだお前ら。静かにしろ」


「チビ」

「ザコ」

「貧乳!その胸の上でマグロ捌いてやるよ!」

「ザコザコザコ!後方腕組み指示厨主人公!」


「お前ら!静かにしろって言ってるのが分からないのか!」


 格子の扉が開いた瞬間、取っ組み合っていたナインが警備兵に向かって俺を投げ飛ばした。

 身体を丸めた俺は兵士に激突。壁に叩きつけられた兵士は、気を失って動かなくなった。


「いってー…優しく投げろよな………」

「ごめんごめん………」

「…ごめん、貧乳は言い過ぎた」

「必要以上に強く投げてごめんね…早く脱出しよう」


 喧嘩のフリで扉を開けさせ、牢屋から出ることに成功したのは良かった。

 その代償に空気が重くなってしまったが…後でもう一度謝っておこう。


「こっちだ」


 次はシールボックス・ワンドの回収だ。ナインは角で感じ取った魔力を頼りに建物を進み、杖を目指して通路を進んだ。


「警備がザルだけど、油断しちゃダメだよ」


 ナインの言う通り、最初の警備兵を倒してから他の兵士とは遭遇していない。俺は背後、ナインは前方を警戒し、建物の中を移動した。


「なんて強固な封印だ。解除出来るやつを町で探して来い」

「叩き割った方が早いんじゃ…」

「この箱含めて大事な押収品だから、ちゃんと開けろとの命令だ。ほら、行って来い」


 会話を終えた兵士が押収品の集まる倉庫から出ていくのを見てから、俺達は扉の前に移動した。


「杖はこの中だよ…けどまだ誰かいる。同時に飛び込んで殴り込もう」

「…」

「どうしたの?」

「いや、前に格闘戦してなかったか?素手で強いなら俺なしで突っ込んだ方が良くね?」


 こいつとさっき喧嘩する演技をしていた時に気付いたけど、かなり力があるんだよな。


「馬鹿言わないでよ。この建物の中には兵士の身体能力を高めるバフと、反対に僕達みたいに捕えた人間を弱めるデバブ、両方の魔法が掛けられてる。それに兵士が着ているのはAランク装備。あの魔力の放出量から推測すると、おそらくエンチャントも──」

「よし分かった。俺がいなきゃダメなんだな」

「そういうこと!」


 ナインは自分の得意な話になると、口が早くなるタイプなのかもしれない。

 俺達は扉を蹴破って、中にいた兵をタコ殴りにしてシールボックス・ワンドを回収した。

 早速ナインは封印を解いて、取り出したバッグを装着。しかしこれらも、建物の魔法による制限を受けているようだ。


「ウエストとボディー、両方のバッグが開けられない…」

「そんな、魔法使えないのか!?」

「みたい…とりあえず光太はこれを使って」


 そして俺は先程までバッグを封印していた杖を渡された。何も封印してなきゃ、頭のサイズが変わるだけの魔法のハンマーだな。


 俺達は出口を探して建物の中を探索した。どういうわけか、警備している人間が誰もいない。ここは悪党を捕えておく留置場だというのに、誰かが逃げ出したらどうするつもりなんだ。


「窓でもあれば叩き割って出られるのにな…」

「壁にはかなり良い素材が使われてる感じだし、壊すことは出来ないね」


 しばらく走り続けて、施設の出入口へとやって来た。


「やった!出れるぞ!」

「ちょっと待ってよ光太。さっきから僕達、誰も見てないよ!」

「言われてみれば…慎重に行かないとな」


 ダンジョンドラゴンの体内で、俺の迂闊な行動がピンチを引き寄せたんだ。ナインの言うことを聞いて動かないと。


「でもどうする?せっかくここまで来たのに…別の出口を探すのか?」

「ううん。順番で出よう。僕が最初に出て、安全が確認できたら合図を送る。そしたら光太が出てきて」


 ナインは外に向かって走り出した。俺は彼女とその周囲に意識を集中し、異変がないか警戒した。


 ドガアアアアアン!


 ナインの足元にあった地雷が爆発!そして彼女は業火に飲み込まれた!


「なーんて…ないか」


 何事もなくあっさりと外に出たナインは、向こう側からこちらに手を振っていた。

 合図を信じ、俺も恐る恐る外へ出た。


「プリズンブレイク…出来ちゃったな」

「意外とあっさりだったね」


 あっさり脱獄出来たら大問題だが、今回はそれのおかげで助かった。

 この後はどうやってサヤカ達と合流しようかと話そうとしたその時、ナインが大きな声をあげた。


「魔獣を感じる!それも近くにだ!」


 ナインは叫ぶと同時に魔法の杖を振り、俺を掴んで空に上がった。そして煙の上がる町へ急加速した。


「あれはアーヌーンか!」

「あの状況だとずっと前から暴れてる感じだ!どうして気付けなかったんだ!」


 魔獣が現れたら、ナインの角が感知して気付けるはず…まさか建物に掛けられていた魔法が魔獣の魔力を感知出来なくしていたのか!?


 町に着いた時には既に多くの人が倒れていた。その中には収容場の制服を着た人も混ざっている。きっと魔獣を倒すためにあそこの人たちが駆り出されて、それで警備がほぼゼロに近い状態だったんだ。


 今回の魔獣は、大きな虎の様な姿だった。さらに全身が燃えていて、周辺に落ちている武器は溶けていた。


「サヤカ!皆!」


 そしてサヤカ達も、大きな火傷を負って倒れていた。まだ生きているのが不思議なくらい酷い傷だ。


 ナインは近くの薬局に走って向かい、ポーションという傷を癒す薬を持って戻って来た。


「この液体を皆の身体にぶっかけて!」

「分かった!」


 栓を抜き、瓶の中に入っていた液体で皆を濡らしていく。火傷は凄いスピードで治り始めたが、意識は戻る事はなかった。


「水魔法!放て!」


 町の魔法使い達が集まって、魔獣に向けて一斉に放水する。消防車からの放水とは比にならない程の勢いだった。


 しかし魔獣の炎は弱まることなく、周りにいた魔法使い達は巨体による突進を喰らった。


「なんて強さだ…それにデカい!今まで戦った魔獣と全然違うぞ!」

「ああいう個体もいるとは聞いてたけど、僕も見るのは初めてだよ。それよりも皆を避難させよう」


 それぞれ二人ずつ肩に担いで、その場から離れ始めようとした。しかし逃げる獲物を見つけた魔獣は、燃える体で追って来てしまった。


「空に逃げるぞ!」

「あの脚力じゃ今から飛んでも捕まっちゃうよ!」


 そもそも、サヤカとツバキを担ぐ今、杖を出すのは不可能か!


「来るんじゃねえええええ!」


 もうすぐそこまで来ている!ヤバい!




「お兄ちゃんだ!」

「どうしたいきなり!?」


 こんなピンチな時になに笑ってんだこいつ!まさか魔獣の熱で頭がやられたのか!?


「ダイゴ兄ちゃんだよ!ほら!」


 顎をクイクイと動かして正面を指すナイン。何言ってるんだ、目の前にはこっちに向かって走ってくる車しか…


 車!?それも普通自動車の何倍も大きなスーパーカーだ!


「これで100体目か!今日はよく魔獣に会うな」


 運転手は独り言をかなり大きな声で呟いていた。

 …っていうか俺達が前にいるのに、全然減速しねえぞ!?


「ぶつかる!?」


 避けようと横へ歩くが間に合わない。しかし車は大きくジャンプし、俺達を飛び越えて魔獣に立ち向かっていた。


「うおおおおおお!」


 ガシャガシャガシャン!


 そして車は空中で変形した!人型になって、ここまで走って来るまでの速度が乗ったパンチを魔獣に食らわせた!魔獣はぶっ飛んで、勢いよく建物に叩きつけられた!


「ダイゴ兄ちゃん!」

「俺を呼ぶのは誰だ~ってナイン!?お前帰って来てたのか!?」


 このロボット、(くち)が動いてる!まさか人が操ってるんじゃなくて、この変形ロボットそのものがナインの兄なのか?兄妹なのに似てないねってレベルじゃねえぞ!


 ボオオオオオ!


 いつの間にか立ち上がっていた魔獣が、こちらに向けて炎を吐き出した。ナインのお兄さんは俺達を掴むと、素早い動きで炎を避けて、安全な場所に降ろしてくれた。


「ここで待ってろ。あいつは俺が倒す!」


 そして車に変形すると、魔獣に向かって猛スピードで走り出した。

 魔獣は炎を噴射し続け、急接近する車を迎撃しようとしていた。


「カースタントの演出にしちゃ、ちょっとショボすぎるな!」


 しかしナインのお兄さんは炎に屈せず、その中を駆けて行く。そして魔獣の正面で変形すると、両手で口を無理矢理閉じて、身体に何度も膝蹴りを加えた。


「お兄ちゃん頑張れー!」


 ただ大きいだけで魔獣と戦えるんじゃない。あの炎に耐える頑強さ、そして臆しない勇気がナインのお兄さんにはあるんだ!


「アクセル全開だぜ!」


 前腕を魔獣に付けた。そして密着していたタイヤが回転し、魔獣の身体を削り始め、全身の炎も回転に飲み込まれた。


 炎の消えた身体に拳が何発も叩き込まれる。最後に振り上げた拳で魔獣を空へ打ち上げると、それを追ってお兄さんもジャンプした。

 しかし、魔獣はそれ以上の追撃を許さず、近付いて来た巨人の腕に噛み付いて抵抗した。


「それくらいじゃ砕けないぜ」


 しかしお兄さんはロボットだ。噛まれたぐらいではなんともなかった。


 魔獣の牙に触れていたタイヤが回転する。牙を失った魔獣は腕から離れて、地面へと落ちていった。


 そして再び車へと変形すると、真下にいる魔獣へと落ちていく…

 いや、タイヤが回ることで落下速度が増している。お兄さんは魔獣に向かって空を駆け降りているんだ!


 車体が魔獣へと直撃。その瞬間に爆発が起こり、お兄さんも炎に飲み込まれた。


「流石に100戦目となるとバテるな…ふぅ」


 炎の中から現れたのは人の形をしたロボット…ではなく、俺達よりも少し背丈の高い普通の青年だった。一体どういうことだ?


「ダイゴ兄ちゃん!」


 ナインはその青年へ走っていき、ジャンプで抱き付いた。あれがナインのお兄さんか。


「元気してたかー?向こうの世界は楽しいか?」

「うん!サヤカ達が来てからもっと賑やかになったよ!」

「キンジのやつ、口じゃナインをサポートさせるためって言ってたけど、お前が寂しくならないようにサヤカ達を行かせたからな。ん?あいつは…」


 お兄さんと目が合った。そして彼は俺の方へ歩いてきた。


「はーん…」


 凄い見られてる…怖い!


「な、なんですか?俺はナインの仲間ですよ…」

「お前、この世界の住人じゃないな?ナインが修行に行った世界のやつか?」

「え、まあ…あいつ…彼女とは助け合ったり足引っ張りして一緒に暮らしています」

「そうかー!これからもナインをよろしくな!俺はパロルート家五男のダイゴだ!」


 ホッ…殴られるかと思った。夜中にバイクを走らせてるヤンキーって感じだ。


「ところで…なんでアノレカディアに帰って来たんだ?」

「その光太の修行をしに来たんだよ!この町に来てダンジョンドラゴン倒したら捕まって、脱獄したら魔獣がいたんだもん!」

「え…ダンジョンドラゴン倒したのになんで捕まってんだ?…話が全く分からん」


 ガチンッ


「いてぇ!」


 なんか硬い物が頭にぶつかったぞ!これは…石だ!


「やっぱり!魔族は不幸を呼び寄せる!ダンジョンドラゴンに続いて魔獣が現れるなんて異常だ!お前が呼んだんだろ!」


 その投げてる石、今のところ俺にしか…いて!いてぇ!…うっ!


「俺の膝に矢があああああああああ!」

「光太っ!ちょっとやめてよ皆!僕達は何も…」


 喋るのをやめたナインの視線の先。そこには縄で拘束された魔族達がいた。

 俺とナインを襲った盗賊も持っていた差別意識。人間から魔族に対しての差別…ちょっと不運が続いただけでここまで過激化するものなのか。


「やめろおおおおお!」


 男が怒鳴ると、俺達への攻撃が止んだ。叫んだのは今朝訪れた集会所の所長だった。


「…お久しぶりですダイゴさん。今日は随分来るのが遅かったですね。ご覧の通り町はもう滅茶苦茶です。明日から冒険者達には復興に携わるクエストを受けてもらう事になりそうですよ」

「すまない…スピードが取り柄のクセして、肝心な時に遅くなった」


 魔獣を倒したダイゴさんは礼を言われる事もなく、頭を下げて謝罪した。


「いいや…悪いのはあなたではないですよ。どれもこれも、不幸を呼び寄せるとされている魔族たちです。こいつらのせいで魔獣が来た!」

「それは違う!魔族と魔獣は名称が似てしまっただけで一切の関係性はないって科学者達が証明してるだろ!」

「ダイゴさん!あなたはパロルート、平和を望む者達の味方なんだろ…頼む。この町にいた魔族全員を受け入れてくれる国へ連れて行ってやってくれ。これ以上この町の平和を乱されるのは嫌なんだ」


 拘束されている魔族達が背中に武器を突き付けられ、こちらへと渡される。ダイゴさんは縄を引きちぎり、彼らを解放した。


「ダイゴ・パロルート殿、我々からも頼む。どこか魔族が生きるのを許してくれる場所へ連れて行ってくれ」

「…分かった。お前らが望むならそうしよう」


 ダイゴさんはさっきの車に変身し、正面のライトを照射。光を浴びた魔族達は吸い込まれるように乗車していった。


「…」

「ナインの同居人。言いたいことは沢山あるだろうが抑えろ。この人達は町が破壊されたショックで冷静さを欠いているだけなんだ…」

「……………だからと言って!すぐ八つ当たりするような人間にはなりたくありませんね!」


 そして俺も光を受けて、車内へと移った。そこは周囲の景色が見渡せるようになっている空間で、町の人が嫌な物を見る目でダイゴさんを…いや、乗車している魔族達を睨んでいるのが分かってしまった。


「ここからかなり離れた場所に、魔族だけのバルプスって大陸がある。そこなら難民だろうと受け入れてくれるはずだ。飛ばすぜ!」


 ダイゴさんが走り出し、町があっという間に離れていく。もうアーヌーンには…この国には二度と来たくない。残念だ。


 遠く離れているはずのバルプスへは10分で到着した。車の姿をしたダイゴさんは、海の上も走れてしまうみたいだ。

 車から降りた魔族達は礼をして、自分たちの住む場所を探しに歩いて行った。


「お前達はどうする?」

「俺の修行がまだだけど、もうやる気分じゃないし、早く元の世界に帰ろうよ」

「そうだね。ダイゴさん、ラミルダまでお願いします」


 サヤカに頼まれると、ダイゴさんはラミルダへ向かって出発した。


 修行の為にこの世界に来たけど、俺は強くなれただろうか…あの魔獣には手も足も出せなかった。ダイゴさんが来なければ、俺達はやられていた。


「光太、疲れたよね」

「あぁ。凄く疲れた。早く帰って寝たいや」


 それから少しの間、外を眺めてボーッとしていた。するとダイゴさんは凄い速さで移動しているので、もうカレーライスアイランドが見えて来た。


「ナイン。修行のついでに一つ頼みたい事がある」

「なぁに?僕で力になれる事?」

「今、俺達はとある女を捜している。そいつの名前はアン・ドロシエル。魔獣を操る能力を持ち、それを悪用する邪悪な魔女だ。そいつを見つけたら兄弟の誰にでも良いから連絡して欲しい」

「その魔女が光太の世界に逃げたの?」

「分からない。ただそっちの世界にも魔獣が現れるらしいし、可能性はあるってキンジが言ってた」


 ナインの手元に女性の写真が1枚出現した。

 この美人な女性がアン・ドロシエル…魔獣を操る能力を持っているのか。


「ところでお前、キョウヤにはもう会ったか?」

「え?会ってないよ」

「あれ?そっちの世界で魔獣が出たって知った途端、お前が心配だって飛び出していったんだけどな…まあシャイなやつだし、顔出したくても出せないって感じなんだろ」

「キョウヤ兄ちゃん来てたんだ…全然知らなかった」


 ラミルダに入り、ダイゴさんは俺達をアノレカディア・ワンドがある滝の前で降ろした。


「じゃあなナイン。修行ちゃんとやれよ」

「やってるよ!」


 やってるところ見たことないぞ…


「黒金光太。改めて、ナインの事をこれからもよろしく頼む。こいつのせいで日常生活に支障が出ていることを許してくれ」

「は、はい。一緒に頑張っていきます」

「光太は僕が面倒見てるから大丈夫だよ」


 生意気な事を言うのでげんこつを入れてやりたいが、ダイゴさんの前だ。帰ってからにしよう。




「ってしまった!」


 元の世界へと戻った瞬間、俺は悲惨な部屋を目の当たりにした。床に大きな穴がある。今着ている道着の重さに耐えられずに出来た物だ。


 ミシミシ…


 こりゃあヤバイぞ。俺だけでこんなになってるってことは…


「たっだいうわあああああ!?」


 そして6人が1ヶ所に集まった瞬間、残っていた床がさらに壊れ、俺達は下の部屋へと転落した。


「着地成功!」

「ちょっとジン!分かってたなら先に言いなさいよ!」

「お、重いよツバキ!」

「二人とも…早く降りて」

「潰れうううううう!」


 締まらないなぁ…結局今回の修行、効果はあったのかな?

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