表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
アドバンスセブンス
291/314

第59話 戦闘開始!夜の都市での戦い!

 夜の都会を3人の戦士が駆け抜けた。

 1対2という状況だがナインは落ち着いたままエネルギーを放つ手を構える。それに反応したイサミが刀を握る手を動かすのを見て、ナインは攻撃を放った

「エネルギーショット!」


 ナインが放ったエネルギーショットはアスファルトを砕いて礫を巻き上げた。視界に塵が舞ってイサミの気が散った瞬間、ナインは急接近。右拳によるストレートを打ち込もうとするが、ぷらはの接近に気付いて距離を開けた。


「ウィンドブレイド!」


 ぷらはが鎌を振ると風の刃が発射されてナインを追った。

 ナインは足を止めて回避に専念した。


 だがそこへ、風に押されたぷらはがビルの外壁を蹴ってナインに急接近した。

「くっ!」


 ナインは姿勢を低くして上方からの攻撃を避ける。そこへ駆けつけたイサミが、ナインに一撃を振り上げた。


「エネルギーチョップ!」


 ナインはかつてぷらはと交えた時のように、エネルギーを帯びた手刀で刃を受け止める。しかし力比べをしている暇もなく、背後からぷらはの気配を感じると横へ跳ねて腕を構えた。


「エネルギー!」


 するとイサミ達は二手に分かれてナインを挟撃しようと動いた。その動きで焦ったナインは、技名を唱えるのをやめてしまった。


「居合!」

「ヘルサイス!」


 二人が技を構える。ぷらはの技は何度か見ているが、イサミの技はこれが初めてだ。ナインはぷらはの技から対処しようと彼の方へ駆けた。


「グラビティ!」

「なっ!?」


 しかしこれは初めての技だった。ヘルサイスグラビティという技をぷらはが発動すると、ナインは発動者の元へ引き寄せられた。

 その光景を見たイサミは刀を引いたまま仲間の元へ向かった。


「閃光(ぎり)!」

「エネルギーバリア!」


 ナインが咄嗟に展開したバリアを突進で突き破り、イサミは一撃を繰り出した。


「うぁぁぁ!」


 居合切りを喰らったナインは身体に大きな傷を付けられた上、近くに立っていた街灯に曲がる程の勢いで激突した。




 傷に対して体力はまだまだ残っている。ナインは地面に足を付けると、二人から離れるように走った。


「さっきまでの威勢はどうしたぁ!?」


 街中に飛んでいるドローンがこの戦いを撮影して動画サイトで配信している。もちろん、逃げるナインの醜態も晒されていた。現実では彼女達の負けを望む者達が盛り上がってることだろう。


 ナインは誤算だったと、戦う前まで過信していたことに気付いた。

 それはイサミが、るーてぃーんえーじゃーずの中で最弱ということに関してだ。あくまで彼はグループ最弱というだけで、簡単に倒せるような弱いプレイヤーではない。しかもそれと同時にぷらはを相手するとなると、勝てる可能性がさらに低く感じられた。


 ナインはビルに挟まれた路地へ逃げ込むと、壁を蹴って10メートルほど地上から離れた。


「エネルギーボール…」


 そして光球を作り出し、追手が路地に入り込んだ瞬間に技を放った。


「エネルギービーム!」


 強力な光線が地上にいるイサミ達を襲う。ナインは片手から照射される光線の勢いを利用して壁を駆け上がった。


「流石に──」


 しかし休んでいる暇はなかった。傷付きながらも、ぷらはは壁を駆け上がってナインを狩りに来ていたのだ。



 壁を登りきったぷらはがフェンスを越えて屋上に足を付けた。しかしそこにナインの姿はなく、塔屋の後ろ側に隠れているだろうと鎌を引いた。


「ヘルサイス…」


 小さな声だがナインは聞き逃さなかった。塔屋ごと斬られると直感すると、そのままフェンスの方へと走ってビルから飛び立った。


「逃がさない!」


 しかし聴こえた詠唱はフェイントである。

 ぷらはも逃げたナインを追って勢いよくビルを発ち、鎌のリーチに彼女を捕えた。


「伸びろ!」


 ナインは隠していた如意銀箍棒でぷらはを迎え打つ。彼の姿勢が空中で崩れると、ナインは腕を構えてエネルギーショットを放った。

 ぷらはは自分を打った如意棒を掴むと、それを軸に回転して光弾を回避した。


「おりゃあ!」


 ナインはぷらはごと如意棒を傾け、周囲のビルと平行になるように立てた。そして自分を斬ろうと足元から跳んで来ているイサミの方にも如意棒を伸ばした。


「伸びろ!」

「何っ!?」


 伸びた如意棒はイサミの顔面に命中し、彼を追い払った。こうしてぷらはとの1対1の状況を作り出し、ナインは攻めに転じた。


「縮めぇ!」


 ナインが命じると、如意棒はぷらはの方へ縮んでナインを連れていく。ナインは棒から手を放すとぷらはに拳を打ち込み、彼を連れて夜空へ飛び上がった。


「いくら強力な鎌でもここまで近いと取り回しが効かないだろ!」

「ボクの武器がこれだけだと思うな!」


 ぷらはが別の武器を出そうとした瞬間、今度は額で殴りつけた。そして怯んだところにナインは渾身の連続攻撃(ラッシュ)を繰り出した。


「おりゃああああああ!」


 ナインの強烈な拳が何度もぷらはに打ち込まれる。最後の一撃で地面に向かわせると、そのままエネルギーボールを構え、そして…


「エネルギービーム!」


 強化されたエネルギービームで追撃し、ぷらはをアスファルトに叩き落とした。



 ナインは付近のビルのガラスを突き破り、建物の中から地上を見下ろした。エネルギービームはよほどの威力だったのか、埃が舞ってぷらは達の姿が確認できなかった。


「どうする…」


 このままぷらはの安否を確かめに行きたいが、今の戦いでイサミを見失ってしまった。

 イサミはライフルを持っていたので、どこかに潜み、ナインを狙撃するチャンスを待っているかもしれない。


「…確実に一人ずつ倒そう。でないとずっと不利だ」


 ナインは腹を括ると、エネルギーボールを溜めてビルから飛び降りた。



 動けなくなっていたらエネルギーチョップで仕留め、埃に隠れて反撃させたらエネルギーバリアで身を守ろう。そう考えていたが、それでも想像力が足りなかった。


「…しまった!?」

「ヘルサイス!」


 ぷらはの全力はこんな物ではない。まだ覚醒した姿を残しているのだ。


「エネルギーバリア!」

「クレッセントスラッシュ!」


 覚醒したぷらはは蹴りでバリアを破壊し、ナインに斬り込んだ。

 絶対にもらってはいけない攻撃を受けてしまったナインは、背中から地面に落下した。


「や…やべえ…」


 ぷらはがトドメを刺そうと鎌を振り上げた。

 だがナインは鎌の刃よりも高くに広がる夜空を見ていた。

 なんとそこには、消えたはずの青い鯨が泳いでいたのだ。


「へへ…いいぞぷらは!カメラもいいところに浮いてる!そのまま殺っちまえ!」

「このままじゃ…」


 まさかの青い鯨。ナインはこのまま鎌を振り下ろされ、ゲームと現実からリタイアしてしまうのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ