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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
アドバンスセブンス
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第37話 「勇気がいるかなあ」

 海面を走っていた新幹線はラグドッチに到着。現在はこういう時の為に用意されている非常用のターミナルに停車しており、これから車両用のエレベーターで地下のターミナルに降ろされるそうだ。

 海賊から新幹線を守ったことで僕達はお礼のお金とアイテムを貰った。


「全く、武器がなくて不便したよ」

「お前が造らなかったのがいけないんだろ」

「如意金箍棒で頭がいっぱいになっちゃったんだよ!それよりウドウ、どうやってディアゴロをやっつけたの?」

「俺は倒してなんかいないぞ」

「嘘だぁ!だってディアゴロをやっつけたって実績は解除したしその分の経験値だって手に入れたもん!」


 そう指摘すると、「あちゃ~」と言った感じのリアクションをした。それでも僕の問いには答えてくれず、そのままターミナルを出た。




 ラグドッチは科学の島だった。島全体に街が広がっていて、その隅々まで水が走っている。それによって回る水車が発電して街に命を吹き込んでいるんだ。

 しかしその科学の力が原因なのか、ここでは魔法の威力が落ちてしまうようだ。もちろん僕のエネルギーボールも例外じゃない。


「ここでの戦いは接近戦がメインになるかな」


 通り掛かったレンタル工房で如意銀箍棒を3本造った。それ以外にも造れる如意棒がいくつもあったけど、あんまり造っても素材が勿体ないのでそれだけにしておいた。


「銅に比べると重量があるな。それで伸び縮みは…命令するだけでいいのか。伸びろ!」

「ひゃう!?」


 僕の命令を聞いて利口に伸びた如意銀箍棒。その伸びた先には街の景色を眺めている海さんが立っていて、彼女の肛門目掛けて棒は突撃した。


 そして僕は死ぬかもしれないギリギリまで殴られた。


「このリアルファイト台パン女…殴り慣れてる辺り日常的に殴ってるな…」

「思った事が口に出てるわよ!いい、次やったら青い鯨が出てる時に撃ち殺すからね!?」

「ご、ごめんなさい…」


 伸び縮みの能力。便利だけど味方に当らない様に練習が必要みたいだ。



 僕は海さん、空さんと三人で。ウドウは地地さんとで別れて、街にいるプレイヤー達へバグについての聞き込み調査を開始した。


「ここはなんだか平和なような…」

「ラグドッチは指定された場所以外で戦うとガードロボが作動して襲い掛かって来るんだ。一撃でも喰らったら強制的に海にワープさせられて24時間入島禁止。ここが一番安全だってプレイヤーも多く集まる島なんだ」

「そうだったんだ。ならちょっと気持ち楽にして歩いても大丈夫かな」

「死ぬのが嫌ならそもそもゲームをやらなければいいと思うけどね」

「そう言われるとそうかもね」


 海さんは気が強くて聞き込みに向いてないので、空さんと僕で聞き込みを行うことに。しかしるーてぃーんえーじゃーずとの戦いは広まっているようで、冷たい目で見られることもあった。


「ファンから見たら悪者は私達なんだね…」

「言わせておきなさいよ。それでしかやり甲斐を感じることのできない連中なんだから」

「ねえ、あの4人はどんな戦い方をするの?」


 ウドウは戦うのを嫌がっていたけど、戦いは避けられない気がする。そのためにもあいつらにどう立ち向かうか考えておきたかった。


「全員がレベル200で物凄く強いけど、特に警戒するべきがロアクよ。あいつ以外なら…」

「私達が束になって一人に集中攻撃。そうすれば他の三人は倒せると思う。だけどロアクは…」


 何か引っかかる。ウドウはあいつらと対峙した時、ロアク一人だったら何とか出来たと言っていた。思えば僕は彼の実力を知らない。彼は間違いないくディアゴロを倒しているんだ。


「ねえ、ウドウってどんだけ強いの?」

「そりゃあ決まってるじゃん!私達の中で最強だよ!」

「そういうのじゃなくて!…ウドウはプレイヤーを殺したくない。だから青い鯨が出ている時は実力を出せないんじゃないのかなって」

「流石にウドウが全力で戦ってもロアクには…いやでも…どうなんだろう」

「勝てるかもしれない…だけど無意識に力を抑えてしまっているとしたら?」

「そういえばウドウって青い鯨が出てる時に一度も覚醒してなくない?」

「そう言われたらそうかも…」


 覚醒。僕の知らないワードが出てきたぞ。きっとそれがウドウがディアゴロを倒せた要因だ。


「だとしてもあなた、ウドウに殺すつもりで戦えって言える?それで全力出して戦えると思う?」

「それは…勇気がいるかなあ」

「まあでもでも!もしも戦うことになったら、ロアクの足止めをウドウにさせるっていうのはどうかな?その間に私達で敵を叩く!」

「他の二人はどうするのよ」

「だったら僕がぷらはとイサミ相手に時間を稼ぐ。海さん達は残りのあいつ…えっと…名前分かんないけど、あいつをやっつけて」

「リュウザンのこと?っていうかあなた、それ本気で言ってるの?」

「僕はこのゲーム内で直接ぷらはの戦いを見た。レベル200に到達すれば、僕はあいつの動きに対応できる。それとイサミだけど──」

「一人で話を進めようとしないで!レベル200になったとして、二人同時に相手できると思ってるの?」

「まあまあ落ち着いて!ナインちゃんの言ってることは無茶苦茶だけど、理にかなってるかもしれないよ。イサミとぷらはの二人は接近戦を得意としてるけど、リュウザンはライフルを使っての中、遠距離戦が得意なんだ。その三人の中からだったらリュウザンを相手にするのが一番楽だと思う。それに私よりも海の方が、彼女の力を分かってるんでしょ?」


「…マンティ・ゼーレで初めて言葉を交わした時、ウドウはこの子を過大評価してるんじゃないかって思ったわ。だけど砂金の城塞でボスを倒した時やシーシェパードから逃げた時の底力、果てにはファイアーマウンテンから直接地底街に来たのを見て、彼女には不思議な力があるんだって思った。それにあなたと同じこと言ってたの。格闘系の技は身体が勝手に動くのが気に入らないって」

「あ、それ凄い分かる。嫌な感覚だよねえ。まあそこまで言えるなら信じてみてもいいんじゃない?」


 海さんはそれから唸って悩んだ。そうして何度もウンウンと頷くと結論を出した。

 それにしても面白い悩み方だ。とか言ったらまたボコボコにされてしまうから言わないでおこう。


「あなたが提案した作戦、ウドウに話してみなさい。彼が認めたら私もそれに従って動いてあげる」

「本当!?」

「ただし彼が認めたらよ」


 後はウドウを納得させるだけだ。そうすればぷらはと戦える。人殺しだったことを黙ってた上に視聴率のためなら平気で人を殺すようなやつに負けたままで終われない。

 あいつは絶対に僕の手で倒すんだ!

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