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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
アドバンスセブンス
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第27話 「どうすんだよこれ…詰んでんだろ」

「このまま飛んでけえええ!」


 エネルギーボールとバズーカの爆発で宙に浮かんだ筏は、僕達を乗せて火山の島ミネラジソールへの軌道を描いていた。


「そんなはしゃぐことでもないわよ。これぐらい誰にでも出来るし、もっと便利な飛行手段なんていくらでもあるんだから」

「…じゃあなんでそれ使わなかったの!?」

「ウドウが楽なやり方を選ばせるなって言ってたから」


 もしかしたら僕達はとんでもなく無駄の多い手段で島を渡ろうとしてるんじゃ…



 そんな時、正面の火山が突如噴火した。


「嫌な予感…」


 火口から放たれた噴出物が僕達目掛けて降ってきた!このままじゃ危ない!


「うわあああ!?」

「このままじゃ落ちる…!」

「どうしよう海さん!」

「ミネラジソールの大地を歩けるのは屈強な戦士かモンスターだけよ!命が惜しければ地下を目指しなさい!」

「えぇ!?」


 意味ありげな言葉の直後、僕達の乗っていた筏に巨大な噴石が命中した。


「落ちるぅぅぅ!ってそうだ!僕には羽根が…ってここゲームの中だったあああ!?」




 僕は海沿いの岩場に墜落した。海さんと別れてしまったけど、青い鯨は出てないしあの人は大丈夫だろう。

 それよりも僕だ!岩と岩の間に挟まった頭が抜けない!


「ぐぬぬぬぬ!?ぎゃああああああ!」


 何かに脚を引っ張られてる!怖いんだけど!?


「なんだプレイヤーか、マンドラゴラかと思った。ちょっと痛いけど我慢しなよ」

「誰っ!?いだだだだだ!」


 その人は強引に引っ張って、挟まっていた頭を岩の間から抜いてくれた。



 僕を助けてくれた男性は、海さんが使っていた物と似た大きなライフルを背負っていた。


「はぁ…はぁ…どうも、助かりました」

「ホント嫌になっちゃうよねこの島」


 辺りを見渡したが人の集まるような場所はない。この人はどうしてこんな場所にいるんだろう。


「それじゃあ俺は行くよ。噴火は頻繁に起こるから、その度に退避壕に入った方がいいよ」

「あ、ありがとうございます」


 噂をすれば再び火山が噴火した。助けてくれた上にアドバイスをくれた男性だったが、彼はライフルを構えると降ってくる岩を破壊しながらどこかへ去っていった。


「…って僕は隠れないと!」


 岩を壊す手段がない僕は壕の中に隠れた。


「いらっしゃい、何か買っていくかい?」


 壕の中には僕の他にNPCの旅商人がいて、こんな場所でアイテムを売っていた。


「…この国の地図をください」


 ミネラジソールの地図を購入した。

 中心には度々噴火するファイアーマウンテンがあり、避難壕のあるポイントには点が記されている。しかしそれ以外には何もない。この旅商人もたまにいる、つまりランダムイベントのような物らしく、そうだとするとここには火山と避難壕以外に何も存在しないのだ。


 ウドウがいるとしたら…そう考えても検討が付かない。多分、地図には載らない何かがある。海さんはそれを知っていて、あんな風にヒントを叫んだに違いない。


「ウドウか…それとも海さん?」


 どっちかに試されてるんだろうなぁ。


 噴火が収まって避難壕を出た。とりあえず地図に載っている壕を全て当たってみることにした。


「さぁて、行くか…」


 だがその時、地面の中から何かが這い出てきた。


「あれは…骨?」


 それは真っ白な骨だった。無数に現れた骨はそのまま合わさって、恐竜のような形を作った。

 モンスター名はスカルザウルス。僕よりレベルが高くとても大きかった。

 戦ってやろうと思ったけど、そういえば如意銅箍棒がない。何よりも海さんと別れてしまって僕一人だった。


「あ…あっはっは!サヨナラ!」


 あんなやつ相手に僕一人で勝てるかっての!


「カラカラカラカラ!」

「見た目通りな気の抜ける鳴き声しやがって!」


 くそぉ!武器さえあればあいつと戦ってコテンパンにしてやれるのに!


「カラカラカラカラ!ゴオゥ!」

「えっ!?」


 妙な音の直後、後方から尖った大きな骨が飛んできた。それを拾って武器にしてやろうと思ったけど、グラグラと揺れていて不気味だったのでやめた。

 そして恐竜が横を通り過ぎようとすると、地面に突き刺さっていた骨はボディに戻っていった。


「避難壕()っけ!」


 逃げる先には避難壕があった。僕は全速力で恐竜から逃げて壕の中に飛び込んだ。


「ガラン!ガラン!」

「この野郎!後でブッ飛ばしてやるからな!」


 避難壕の中からエネルギーボールをぶつけてやろうと思ったけど、この中では魔法が使えないみたいだ。




 僕は恐竜がどこかへ去るのを待ちながら、ウィンドウを開いて何かやれることがないか探した。


「設備なしで作れるアイテムは小さい物ばかりか…如意棒シリーズは全滅だな」


 一応、今の状態でも作れる武器はある。だけどこれがダガーやナックルダスターと言った印象の悪い物ばかりなんだ。


「ハァ…誰か助けてよ~!」


 僕しかいない壕の中で、情けない悲鳴が響き渡った。



 スカルザウルスが去ったのを確認してから外へ出た。日はゆっくりと沈み、間もなく夜が訪れようとしている。ログアウトする前には再会したいので、僕は火山の活動状況に警戒しながら次の避難壕へ向かった。


 夜になると地面に積もった火山灰からゾンビが出て来た。全く悪趣味なゲームだ。


「エネルギーボール!」


 スカルザウルス程ではないゾンビは格闘とエネルギーボールを駆使して倒していき、経験値へと変えた。


「数が減らないな…退散!」


 しかし倒しても無限に湧き出る性質のようで、EPが限界を迎えた時は最寄りの避難壕へと飛び込んだ。それから火山が噴火し、地上にいたモンスターは一掃。安全を確保してから次の壕へ向かうというムーブを繰り返した。


 しかし島の左半分に掘られた壕を全て回っても、海さんのヒントに関係のありそうな物は見つからなかった。というよりも、壕の中では旅商人と出会う以外に何も起こらなかった。


「どうすんだよこれ…詰んでんだろ」


 もう薄暗い穴を覗くのも飽きてきた。正直面倒くさくなってきたというのもあるけど、このまま島にある避難壕を全て回っても何もない気がした。


「はぁ…だとしたら…」


 避難壕に何もないとしたら、次に調べるべきは中心にある火山だ。しかしその周りにはスカルザウルスのような強力なモンスターが獲物を探して徘徊している。

 僕だけで突破するのは間違いなくキツイだろうなぁ…もしもそんな時に青い鯨が出たらヤバい。


「けど…やるっきゃないか!」


 誰かが迎えに来てくれるなんて甘い考えは持たない方がいいだろう。海さんは僕が合流できると信じてヒントだけ教えてくれたんだ。


「エネルギーボール!行くぞおおおおお!」


 僕は唯一の技を手に握り締め、火山を囲う魔物の群れへ突撃した。

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