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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
アドバンスセブンス
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第15話 ボス戦!?

 ナインは作り上げた如意銅箍棒を握り、先導するぷらはの後を追っていた。

 出発前、ナインは道中で得たステータスポイントを筋力に振り分けた。今もまだペースを合わせてもらってはいるが、ぷらはから離れる事はなくなった。


「ねえ、どこに向かってるの?」

「ダンジョンのゴール地点なんて決まってるでしょ」

「ボス部屋かぁ!」


 レベルアップして武器も手に入り、どれだけ強くなったのか早く試したい。ナインは胸を踊らせた。



 さらに進んでいくと道が広くなっていく。モンスターを倒して進んでいた二人は、巨大なゲートの前に辿り着いたのである。


「この向こう側にメテオ・ビルのボス──」

「待って!ネタバレなし!」


 情報は武器になるが、今いるのはアノレカディアではなくゲームの世界である。

 ナインは無知のまま挑みたいと、ぷらはの解説を阻止した。


「それじゃあ開けるよ」


 設置されたコントロールパネルを操作すると、大きな扉がゆっくりと開いていく。ナイン達は開ききる前にボス部屋に突入した。



 メテオ・ビルのボスは制御コンピューターシリウスという直立不動の機械型モンスターである。


「へえ、こんなやつなら僕にだって倒せるよ」

「待って!」

「分かってるって。あの本体を守るように道中戦ったモンスターとかが出てくるんでしょ?」

「違う!そうじゃないんだ!」


 ナインはボス部屋の中心にそびえ立つシリウス本体へ走り出す。すると床が開いて、彼女が予想した通りにモンスターが現れた。


「ん!?」


 色が違う。敵を見た瞬間のナインが感じた事である。

 地下から上がってきた機械兵は、これまでダンジョンで倒してきた個体と色が違っていたのだ。


「だからなんだっ!」

「気を付けて!こいつはシリウスじゃない!メビウスだ!」


 少なからず、ボスが存在するゲームには裏ボスという物もいる。部屋の中心に立つ大型コンピューターが銀色ではなく金色なのを見て、戦った経験のあるぷらははこれがノーマルボスのシリウスではなくハードボスのメビウスだと分かった。


「発生条件は満たしてないのになんで…」

「んのやろおおお!」


 これまで戦ってきたやつらとは格が違う。強化された機械兵達はナインの行く手を阻み、メビウスはダメージを受けることなく佇んでいる。


「邪魔だぁぁぁ!」

「無茶だよナインさん!一度下がって!もしも青い鯨が出てたらヤバイ!」


 青い鯨。それを聞いて我に帰ったナインは敵兵隊から跳んで離れた。


「ありがとう…ちょっと熱くなってた」

「こういう空の見えない場所じゃ特に気を付けて。青い鯨がいると知らずに無茶な戦い方をして死んだらもうおしまいなんだから」


 忠告したぷらはが武器を構えてナインより前に立った。部屋の中にいる限り敵の攻撃は続く。青い鯨の有無に関わらず、敵は倒さなければならない。


「長引かせればそれだけ雑魚が増えるから早く終わらせよう。兵隊はボクが倒すから、君がメビウス本体に攻撃して」

「両前衛ってわけね。分かった!」


 ナインの火事場馴れしているような反応にぷらはは驚いた。もしかしたら死ぬかもしれない。そんな状況でも彼女は心を折られず戦うつもりなのだ。


「それじゃあ行くよ!」


 ぷらはが隊のど真ん中に突進していった。強化型機械兵は右腕のビームマシンガンを稼働させて迎撃する。しかしぷらはの振るった鎌がビームを弾き、そのついでの様に兵達は斬り壊されていった。


 後方にいたナインは敵がぷらはに集まっていくのを見てから、戦場に近付かない様に大回りでメビウスに接近した。


「周りに誰もいなきゃただの木偶だな!」


 守りのいなくなった本体の元へ辿り着いたナインは如意銅箍棒でひたすら殴った。ゲームの中には連続突きなどの技が存在するが、ロッドというジャンルの武器を使い始めたばかりのナインはまだ技を一つも習得していない。

 メビウスの体力がゼロになるまで殴り続けるしかないのだ。


「体力に気を付けて!無茶な動きを続けると体力が減っていっちゃうよ!」

「ハァ…ハァ…!」


 息が続かなくなってきた。自分の力不足をその身で痛感しているナインだったが、これでも現実の肉体を遥かに上回るパワーで戦えているのだ。それほどまでメビウスは硬く強力だった。

 もしも現実でこんなやつに遭遇してしまったらと、単調な攻撃を続けていた事で意識が戦いから離れていく。油断していたナインは敵の動きが変わった事に気付けなかった。


「ナインさん!」

「えっ!?」


 ぷらはの声に気付いて振り返った時には敵兵が彼女を囲んでいた。力不足に続いて集中力不足とはどうしようもないものだと、ナインは怒りを通り越して呆れていた。


「やられるかよ!」


 敵の攻撃パターンは分かっているつもりだった。弾を避けつつ壁を走って逃げようと考えたナインだったが、強化型機械兵は左腕にも兵器が備わっていたのだ。


「ビームセイバー!?」


 敵は一斉に距離を詰めてナインに襲い掛かる。1本目の如意棒が呆気なく両断されると、そのままナインは攻撃を喰らった。


「ナイン!」


 ここまでノーダメージだったぷらはがナインを助けようと強引に道を切り開く。襲われている彼女の元に近付くと、両足でブレーキを掛けながら技を放った。


「ヘルサイスウィンド!」


 鎌を一振りすると暴風が起こり、ナインの周りにいた機械兵が壁や天井に叩きつけられ爆発した。


「ぷ、ぷらはさん…!」

「死んじゃダメだ!ここはボクに任せて身体を休めて!」


 スキルを持たないナインに体力が見えていないが、敵の体力は4/5まで削れていた。それによって攻撃が第2フェーズへと移行し、ナインを妨害する機械兵が追加されたのだ。

 こうなったのも情報を伝えなかった自分の落ち度だとぷらはは猛省。ここからは自分一人で戦うつもりだ。

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