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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
アドバンスセブンス
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第5話 「いいね!勝負だ!」

 僕と光太はアイルタウンで合流した後、メレブーの森というエリアに来た。NPCから聴いた話によるとここはレベル上げにうってつけの場所だそうで、僕達はモンスター退治に勤しんでいた。


「あっ!ゴールドホークだ!倒したらいっぱい経験値が貰えるレアモンスターだよ!」

「だったらこの木を登って接近するぞ!」


 太い木から足場の様に生える枝を走って、空を飛んでいる金色の鳥に接近した。


「ナイン!あいつ木よりも高く飛んでるぞ!」

「こうなったら魔法の杖ってここゲームの中だった!」

「このままだと逃げられちまうぞ!」


 このままあいつを逃すのは惜しい。そうして木のてっぺんまで登ったところで、ゴールドホークを倒す策を閃いた。


「おい何すんだよ!」

「君だけでも!あいつを倒してこ~い!」


 僕は彼を抱え上げて、宙を舞う獲物へ投げ飛ばした。これで倒せれば光太が経験値を手に入れる事が出来る。


「あっ!そうだった!」

「バカヤロー!」


 しかし現実ほど膂力がなかったのを失念していて、投げ飛ばしたつもりの光太は地上に落ちていった。


「人造人間で良かった。落下ダメージなら必ずHPが1残る専用スキルがあるみたいだ」

「何それ、探索し放題じゃん」


 このゲームはヒットポイントがゼロになると感覚がなくなり、蘇生されるかリスポーンを選択するまで動けなくなってしまうそうだ。とにかく、光太が無事で良かった。


「一旦ポイントを振り分けようぜ。勘違いで殺されたら溜まったもんじゃない」

「そうだね。せめてゲームの中でくらい僕と肩を並べて欲しいもんだよ」


 お互いに不満を漏らしてから軽いノリで取っ組み合おうと殴った瞬間、残りHP1だった光太は血を吐いて倒れた。


「あっ…ああああああああ!?ごめーん!?」


 さっき偶然にも、死者を蘇らせることの出来るレアな花を手に入れたんだ!これで早く蘇生してあげよう!


 アイテムを取り出して近付けた瞬間、死体が消滅した。きっと森の外に建っていた砦の前にリスポーンしたんだ。

 絶対に怒ってるぞ。ここに戻ってくる前にステータスポイントを振り分けて、強くなってから僕を殴りにくるはずだ。

 僕もパワーアップして迎え撃てるようにしておかないと!


 ステータスポイントとはレベルアップ時に手に入るポイントだ。このポイントを振り分けることで長所を伸ばしたり短所を補ったりと、自身の能力を上昇させることが出来るのだ。

 攻撃力と防御力、移動速度など身体能力全般に関係する筋力か、技や魔法の使用に必要なEPを増やすために魔力にポイントを振るべきか。装備のクラフトや発動出来る魔法のバリエーションを増やすために知識力も上げておきたい。


「でも、ひとまずは…」


 今の身体では思うように動けない。ここは筋力にポイントを振り分けて、現実に近い動きが出来るようにしておくべきだろう。


「とりあえず3振り分けてみたけど…」


 その場で身体を動かしてみた。軽く跳ねたり、木を蹴ったり。どうやら3ポイントだけでは足りないようだ。

 残ったポイントを全て投入。それから身体を動かすと、だいぶ現実の感覚と近くなった気がした。


「おぉ!軽い軽い!」


 いや、ちょっと動きやすいような…今度は向こうで違和感を覚えるオチじゃないだろうな。




 しばらく待っていると、凄い速さでこちらに迫っている人の姿を見つけた。


「ナイン!てめえええええ!」


 やはり光太だった。倒す前までとは比べ物にならないくらい速くなっているのを見ると、彼もステータスにポイントを振り分けたことが分かる。


「デェェェイ!」

「お前も一度(いっぺん)死ね!」


 互いの攻撃が衝突して、周囲の葉が揺らぎ森がざわめいた。


「せっかく同レベルになったんだ!どっちが強いか()ろうぜ!」

「いいね!勝負だ!」


 僕が決闘を申し受けると光太は下がった。そして手に木の剣、左腕に木の盾が出現した。


「あぁ武器だ!?それ造ってたから遅かったんだな!」

「先手必勝!死ねえええ!」


 武器を構えた光太が地面を蹴り接近する。木の上へ逃げようとジャンプすると、僕を追って彼も高く跳んだ。


「エアスラッシュ!」


 急に叫ぶので身構えると、光太は剣を大きく振って技を繰り出した。僕は木製の刃を両腕で受け止めた。


「アッパースラッシュ!」

「うわぁ!?」


 間髪入れずに次の技を放ってきた!なんだ今の動きは?!エアスラッシュの直後に一切の隙がなかったぞ!


 フォーメーションソードを握っているならともかく、剣での戦闘経験がない彼にこんな動きが出来るわけがない。何か種があるはずだ。


「効いてないぞ!」

「そうかよ!だったらもう一発!」


 光太は当然のように空中を蹴って追従してくる。僕は木の幹を蹴って逃げ回り、電柱のように太い枝に跳び乗った。

 僕の元まで迫った光太はエアスラッシュを発動。その攻撃を避けたが、足場となっていた枝は付け根から切断された。長さはおよそ3メートル。武器として使うには申し分ない。


「スワロースラッシュ!」


 そうか分かったぞ!キャンセルだ!

 攻撃発生からその後の僅かな隙を含めてのエアスラッシュ。その隙を補うために連続で技を出してるんだ!


「だけど連続で出せるのはそこまでと見た!」


 隣を降下していた枝を両足で蹴り飛ばして光太に命中させる。そして背後の木を蹴って急接近し、怯んだところに強烈な一撃を打ち込んだ。


「へっへ~ん!僕の勝ちでしょ!」

「まだまだ!」


 光太は立ち上がると枝を防御したことで壊れた盾を投げ捨て、両手で剣を握った。


「そう来なくっちゃ!」

「行くぞ!」


 僕達は本来の目的を忘れ、森の中で戦い続けた。

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