表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
不法移民者達の居場所
229/313

第28話 「出来たじゃん!」

 左腕に開いた傷は硬質な毛に縫われる形で塞がった。薬品などによる適切な処置は行っていないけど、このまま放置しても大丈夫だろうというのが僕の考えだった。


「キメラの力なのかな…」


 僕は戦いの最中、力の発現と同時にキマイライズと叫んでいた。きっとそれがこの力の名称なのだろう。

 今回の経験を通して僕はまた強くなれた。キマイライズ、きっと使いこなしてみせる。


 シャワーを出た後、地球に帰ろうと光太を探した。

 それにしても月で起業してたなんて、将来は萬名財閥って感じで有名になってそうだな。


「いたいた。光太~帰ろ~」

「探したぞ。狼太郎が話があるから第2会議室に来いって…何だその顔」

「狼太郎が関わってるのに君が冷静でいることに驚いてる」


 これまでの光太なら狼太郎から話があることすら伝えずに、そのまま地球へ帰っていただろう。

 裸の付き合いってやつかな。一緒にシャワーに行ったみたいだし、その時に打ち解けられたんだろうか。


「重要な話みたいだからな。それに移民者を受け入れてもらうからには最低限の関係は保っておく必要があるだろ」

「…ツンデレ」

「黙ってろ」


 それにしても良かった。ここで受け入れてもらえなかったら、もうアノレカディアに連れて行くしかあの人達を助ける手段はなかったから。


 言われた部屋に行くと狼太郎とフェン・ラルクが席に着いて待っていた。


「遅くなってごめん。話って何?」

「今回の金星に行って分かった事、考えた事を話す。まず俺達は宇宙開発の一環として金星の調査に向かった」

「金星に着いてから私は異様な力を感じて、その力を辿って洞窟に入った。そこで月の内部にある装置と全く同じ物を見たんだ」

「フェンが封印されていたあの装置だ。俺達はあれにケージと名付けたが、そのケージが金星にもあったんだ」


 月の内部には巨大な装置が置いてある。元々フェン・ラルクはそこに封印されていた魔獣で、それを解いたのが小学生だった頃の狼太郎だ。

 ただ、装置に関してはフェンが封印されていた事以外は一切が謎なのだ。


「その…ケージっていうやつの中にも、フェンみたいな魔獣がいたの?もしかして金星で戦ったあいつがそうだったの?」

「いや、フェンみたいに話が通じるか分からなかったからケージは開けていない。あの魔獣は金星に着いてから37時間後に現れたやつだ」


 月にある物と全く同じ。ならきっとその中にも、フェン・ラルクと同じように封印されている魔獣がいるはずだ。


「ここからは俺の考察だが、ケージはこれまで見つけた物以外にあと6機ある」

「6つも!?」

「ちょうど6機。水星、火星、木星、土星、天王星、海王星それぞれに1機ずつあるはずだ」

「つまり太陽系全ての惑星にあるって考えか。だとしたら月で見つかったのはおかしくないか」

「そこが注目すべきポイントなんだ。ここにあるケージは本来地球にあった物なのではないか。ではそれがどうして月の内部で発見されたのか」


 あまり仲の良くない2人が真剣に話し合っているのが何だか面白くて、話を聴きながらその様子を静かに見守った。


「2つの説がある。まず、以前の人類が月へ運んだという説だ。知ってるだろ?人類は過去に4回も滅んでいて、俺達は5回目ってやつ。それで今より高度な技術力を持ったその時代の人達がケージを月に移したというのが1つ目の説だ」

「わざわざ月に移した理由が分からないが…それでもう1つは何だ」

「もう1つはジャイアントインパクト説だ。月の元となった原始惑星と地球の衝突の際、地球にあったケージが月へ流れていった。僕的にはこっちの方が納得出来ると思う」

「どっちも信憑性に欠けるな。それにお前が推してるジャイアントインパクト説は矛盾が指摘されているんだ。それを取り上げられてもな」

「最初に言ったけどこれ考察だからな?文句付けるなよ」

「考察だから文句付けるんだろうが。けど暇潰しにはなった。帰ろうぜナイン…ナイン?」

「光太…狼太郎と上手にお話出来たじゃん!仲良くなれたんだね!感動したよ!」

「ハァ!?誰がこんなやつなんかと!」

「ちゃんと俺の話聞いてた!?」


 狼太郎の考察はそれで終わった。2つの説で共通しているのは、大昔という言葉では足りないほど過去だという事だ。

 一体ケージとは何なのか。情報が足りない今のままでは、どれだけ考えたところで答えは出ないだろう。


「それじゃあそろそろ帰ろうか。加奈子に移民させてもらえる事を伝えないと」

「今回は本当に助かったよ。2人ともありがとう」

「私からも礼をさせてくれ」


 そう言うとフェン・ラルクは華麗な動作で頭を下げた。


「暇になったら遊びに来いよ。今度はちゃんと地球発の船に乗ってな。じゃないと月にお金が入らないし」

「うん!それじゃあまたね!」


 ウェーブダッシュ・ワンドを振って、僕達は地球に帰還した。

 移民者の移住を相談するつもりで来たはずが色々と大変だった。まさか遠く離れた惑星に赴くことになるなんて。

 だけどキマイライズが発動したし、狼太郎達を救う事が出来た。結果オーライだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ