第14話 「ナインの味方って認識で良いのか?」
石動が俺に銃を向けた。
どうしてこいつは銃なんか持ってるんだ。ナインが造った銃みたいな外見の魔法の杖ではなさそうだ。
「私の反射速度は常人の10倍速い。いくらナインさんが強くても、あなたが動くよりも先に黒金君の眉間に弾丸を命中させられますよ」
冗談には聞こえない。向けられている銃が本物という確証はなかった。しかし短い付き合いとはいえ、石動が今までに見せたことのない表情から信じ込んでしまった。
この冷徹な瞳…必要とあらば本気で俺を殺すつもりだ。
「なんで僕達に銃を向けるんだ」
「今後私の指示通りに行動すると誓うなら銃を降ろします」
「まずは街を直してからでいい?」
「街は直させません。ここまで人目に付いてしまったからには、魔法の存在だけでも隠しておきたいですから」
「人に知られるのが嫌なの?だったら記憶を消す杖があるからそれで──」
「既に魔獣とあなたの存在はネットに流出してしまいました。それを見た人全員の記憶から今日の記憶を消せますか?それに、京都に突如現れては消失した黄金都市。あの一件も揉み消すのが大変なんですよ」
俺が左腕を失って病院送りになった戦い。あの時、石動はテレビ局のヘリコプターが離れるまで魔法の杖を使わないよう制止してきた。その後ヘリコプターはタイミングよく去って行ったのだが…
魔法の杖がメディアに露呈するのを恐れているのか?俺と歳の変わらない少女が一体なぜだ。
ヘリコプターが去って行ったタイミングが良すぎた。もしもこいつが関係していたとしたら…
「一ついいか?」
「…どうぞ」
「石動さん…達はナインの味方って認識で良いのか?」
「…はい、日本の味方でいる限り、私達はあなた方の味方でいます」
僅かに見せた動揺、それに含みのある言葉。
間違いない、こいつは…都市伝説と言われているあの組織の人間だ!でなければここまで日本に拘る理由が思いつかない!
「光太、何か知ってるの?」
「う~ん…俺が考察したこと言っていい?」
「駄目です。万が一という事がありますから」
「駄目だって~」
「あっそう…後で頭覗くから」
こいつは魔法の杖を使うつもりだ。そう気付いた俺は石動の方へ身体を移した。
「石動さん、人質として俺をそばに置いてくれ。そんでナインが敵になると思ったら俺のこと撃ってくれ」
「はぁ!?どうしてそうなるんだよ!」
「おめーもハクバってやつに浮気してたんだし、お返しだお返し」
「ハァァァァ!?意味分かんないんだけど!大体ハクバとはそういう関係じゃないし!そもそも僕と光太は付き合ってないからね!?」
「うるせー!知らねー!」
「そう仰るのなら…そういうわけなのでナインさん。これからは私の指示通りに動いてもらいます。ですが安心してください。あくまでも行動を制限する程度ですので」
「もうっ!なんでだよ!」
まあナインに意地悪したい気持ちも本当だが、今は石動と背後にいるやつらを敵に回さないようにするべきだ。
俺が入院してる間に何があったか…聞くの怖いなあ。
そういうわけで俺達の話は纏まった。破壊されてしまった街はそのままに、魔法の杖でアパートへ戻った。