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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
トッテンカン鉱国
200/311

最終話 「めでたいや!」

 無謀にもラカン・ダインシャ海賊団に挑んだ僕だったが、勢いで壊滅させることに成功した。


「えっ!ラミルダまで送ってくれるんですか!」

「海賊達をやっつけてくれたお礼にしては足りないですが…ナイン隊員の目的地が私達との貿易国ならば乗せないわけにはいきませんよ」


 報酬などは受け取れないけど、その代わりにラミルダまで船に乗せてもらえる事になった。


 島に戻った頃、町の教会では結婚式が行われていた。昨日、海賊に襲われているところを助けた新郎エウィン・タバネと新婦フィセラ・グンギニルの結婚式だ。

 船の出発まで少し時間があるので、僕はその式を遠くから眺めていた。


「結婚かぁ…」


 僕はどんな人と結婚するんだろう。光太は…多分ないな。束縛ヤバそうだし。定期的に電話しないとスタ爆してきそう。


 ハクバは…ハクバは王子様だから。きっと僕と違って行儀のいいお姫様と結婚式するんだろうなぁ。


「ナイン隊員、商船の準備が完了しました」

「ありがとうございます。すぐ向かいますね」


 港に向かおうとすると、教会の方からクラッカーの鳴る聴こえた。その後にブーケが高く上がり、幸運にも降ってきた場所に立っていた人がそれをキャッチ。


「めでたいや!」


 将来のことは今はいい。結婚式を挙げにここへ来たあの人達が無事に帰れるように、海賊達をやっつけたんだ。今の僕はそれが出来るだけで充分だ。


 ラミルダに向かう商船が汽笛を鳴らして出発した。トッテンカン鉱国はどんどん離れて小さくなっていく。


「ようやく終わりかぁ…長かったなぁ」


 ハクバからの手紙を貰って始まった冒険はようやく終わりを迎えようとしている。1週間近く経ったけど、向こうの世界は大丈夫かな。


 日が暮れて月が昇る。鳥の魔物キラサギチョウが羽根を休めに船へ降りる。尖った口には船に乗る直前に狩った魚を咥えていた。


「そういや僕も魚が食べたいなぁ。光太の世界に帰って、チェーンの回転寿司で出てくるシンプルな寿司を」


 …とは考えたけどあの世界の回転寿司、どういうわけか注文しないとレーンに寿司が流れなくて不便なんだよな。


「…僕にくれるのかい?」


 1羽のキサラギチョウが手元に小魚の魔物を落とした。くちばしでつついて、まるで食べろと促しているみたい。

 その好意に甘えて、一切の調理もせずに魚を食べた。


「モグモグ…ありがとう、美味しいよ」


 夜が明ける頃、商船はラミルダに到着した。


「送ってくれてありがとうございます!」


 久しぶりのラミルダ。僕はアノレカディア・ワンドを設置してある滝の裏の洞窟まで疾走した。


 そういえば光太は滝壺という単語が、滝の裏にある洞窟を指していると勘違いしていた。全く勘弁して欲しい。

 現状この作品で一番モノローグを担当しているのは君なんだよ。それなのに単語を誤用してたなんて…全く恥ずかしい!直すのだって大変なんだし!


 アンヌラドの森にある大きな滝。その裏にはアノレカディア・ワンドという別の世界にある同型のゲートに繋がる魔法の杖がある。


 え?なんでゲートなのに魔法の杖扱いなのかって?

 僕は作った物のほとんどを魔法の杖として扱う職人気質なんだ。これ以上この話題に興味を寄せると怒るよ!


 ゲートを起動させると別世界と繋がるトンネルが生成されて、そこにボロアパートの和室の景色が現れた。


「へへへ…ようやく帰ってこれた」


 大変だった冒険もようやく終わり。久しぶりにゲームするぞ~!




「たっだいま~!僕がいなくて寂しかったよね!…あれ?」


 元気に挨拶したけれど、同居人の黒金光太の姿はどこにもなかった。

 隣町まで買い物に行っているのだろうか?

 せっかく主人公である僕が帰って来てサブキャラの君に出番が回ってきたのに…


「あれ?書き置きだ…」


 いつも食事をしているテーブルの上に目立つ赤色の紙が1枚置かれていた。


「なんだろう…」


 光太…ではなく隣の更に隣、203号室に住んでいる石動加奈子、僕はナッコーと呼んでいる少女の書いた物だった。


 …光太のやつ、僕に散々言っといて自分は他の女を部屋に上げるんだ…へ~…


 彼女の書き置きには、僕が帰ったらまず自分の部屋に来て欲しいという頼み事が書かれているだけだった。そういうことなら彼女に会いに行こう。

 そうして部屋を出た僕は驚くべき光景を目撃した。


「おいおいおいおい…」


 ハクバに会いに行くまで、ここ単端市には僕と光太とナッコー以外の住民は誰もいなかった。そのはずなのに…


 沢山の人がいる。それも光太とナッコーが当てはまる日本人ではない。目や肌の色が違って、明らかに外国人という感じの人達ばかり…

 いや、アパートの前を歩いている人達の中に日本人は一人もいない!


 一体どうなってるんだこりゃ!?


 足元を覗くとアパートの中心に魔法の杖が立っていた。あれは杖を設置した敷地に関係者以外を入れないように出来る境界守護魔法の杖バウンダリーバウンド・ワンドだ。


「…ナッコー!僕だよ!ナイン・パロルートだ!今帰って来たぞ!」

「ナインさん!良かった!ささ、上がってください!」


 ナッコーの部屋へ上げられた僕は席に着かされた。


「あのさ、外にいた人達って何なの?」

「それについてはこれから話します。いいですか、落ち着いて聞いてください。黒金君は魔獣との戦いで重傷を負い、今も意識を失ったまま隣町の病院に入院しています。その戦いで左腕を欠損。体温は常に40℃を上回っています…それとこれ、彼からあなたに渡すよう頼まれたバッグです」


 ………は?

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