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第19話 「こんにちは!」

 未だ俺には昼飯を一緒に食べる人物がいない。


 灯沢は相変わらず、カースト上位の仲間とワイワイ話してるし…あいつの名誉のためにも、さっき貸りた消しゴムは後で返すか…


「そうだ…」


 水城でも誘ってみるか。あいつ、あの性格だと友達いなさそうだし。


 そう思って隣のクラスに行って分かった。水城にも友達がいる。それもかなり沢山の友達が。


「皆、チョコレートがどこで始まったのか知ってるかしら?」

「水城様!私知ってます!イギリスです!」

「博識なあなた、とても素敵よ。というわけで今日のデザートは!本場イギリスのチョコレート!が仕入れられなかったから、ゴディヴァのアイスよおおおおお!」


 アイスってそれチョコレート全然関係ないじゃん!


 水城はそばに置いてあったクーラーボックスの中から、周りの友達にアイスを配った。流石は財閥の娘、金があるんだな。


「本場とゴディヴァッ!とても面白い駄洒落です!」

「誉め上手なあなた、とても素敵だわ」


 あいつクラスじゃお金持ちお嬢様キャラだったのかよ。ありゃ友達と言うよりは取り巻きだぜ。


 しかしあの雰囲気には馴染めそうにないな…


 そして俺は人のいない校舎裏で弁当箱を開き、孤独な昼食を楽しんだ。


「はぁ…」


 寂しいなぁ。ナインにも高校通わせるか?いや、あいつ絶対トラブル起こすからな~


 入学してからの友達作り、もっと真面目にやれば良かったな~…


 友達…作り…そうだっ!




 放課後、俺は全速力でアパートへと戻って来た。


「ナイン、友達を作る魔法の杖、あったら俺に貸して!」

「帰って来たと思ったらいきなり…友達は魔法じゃなくて努力で作るものだよ」

「努力してこの醜態(ザマ)なんだよ~!ねねね、何かない?」


 頭をペコペコ動かしていると、ナインはゲームを中断してウエストバッグを漁った。


「あれ?そのバッグは?」

「これは…その時までのお楽しみ」


 ウエストバッグのそばにはもう1つ、見慣れないバッグが置いてあった。これは肩から斜め掛けするタイプのボディーバッグだ。


「友達が作りたいんだっけ?はいこれ」


 ナインは雑に杖を投げ渡してきた。今回はペンみたいな装飾が特徴的な魔法杖だ。


「キャラクター・ワンド。君の理想とする友達の性格…つまり設定イメージしながら、杖で外見を描くんだ。すると実体化する」

「…う~ん」


 理想とする友達か。どんな人かな…


「なんでもいいや。ナインが描いてよ」

「えー?めんどくせー」


 そしてナインは大きな杖で人間を描いた。ところでこいつはこの杖を使った事があるのだろうか。だとしたらかなり闇が深いことになるが…


「…やっぱやめた!」

「え!?なんだよ急に!」


 ナインは杖をバッグに戻してしまった。おいおいこれじゃあ話が盛り上がらねーだろ!


「友達は道具で作るものじゃないよ」

「マジレスやめろよ…」

「大体君、どんな友達が欲しいのかしっかり考えてごらんよ」


 どんな友達か…


「えーっと…こんな情けない俺を気に掛けてくれる美少女」

「それユッキーじゃない?」


 そう言われるとそうだな…今日も俺が消しゴムなくて困ってたら貸してくれたし。


「お金持ちで養ってくれる美少女」

「それホッシーじゃない?…つか美少女ばっかだね」


 水城?あいつ養ってくれるか…?昼間はアイス配ってたけど…


「…いつもそばにいてくれる世話焼き白髪ロング貧乳僕っ娘天才系魔法使い美少女!」

「………」


 ナインが恐ろしい顔付きでこちらを睨んでいる。どうやら訂正を求められているようだ。


「………世話焼き白髪ロング、巨乳、僕っ娘天才魔法使い美少女…」

「それ僕じゃない?」

「はい嘘!胸ないじゃん!」

「うるせー!今はまだ小さいだけだ!そのウチボインボインで揺れるナインちゃんになるんだ!」


 そう言いながらナインは杖をバッグに戻してしまった。結局、友達は1人も作ることが出来なかった。


「分かった?これが友達だよ。こんな風にワイワイやるのが友達なんだ。魔法の力で作るなんて間違ってる…」

「えっと…灯沢と水城は?あいつらとワイワイしたことないんだけど」

「それは君がもっと積極的にならないと!友達なんだから待ってるだけじゃなくて光太が行かないと!朝会ったら挨拶するとかさ!」


 そうか…それが友達。まずは挨拶からだな。


「明日朝、学校で会ったら挨拶してみるよ!」

「それが良いよ」




 しかし、現実はそう上手く行く物でもなく…


「お前最近調子乗ってね?」

「ユッキーに近付いてさ、気持ち悪いんだけど。昨日も消しゴム盗んでたよな」


 灯沢に近付いたら周りの男子達に連行されてボコボコにされた。


「水城様に近付くな!この泥男子!」

「殺すわよ!」


 水城を呼ぼうとしたら、その取り巻きの女子たちに冷たい言葉で追い払われた。


 友達との付き合いとは、ここまで難しい物なのか…


「とりあえず…ナインがいるしいいや」


 友達は数でもなきゃ質でもない。共に育んだ友情のデカさなんだ。と言うわけで友情を育んだ人間がナインしかいないので、もういいや!


 なんか寂しくなったし、電話してみるか。あいつの声を聴いて元気を貰おう。


「もしもしナイン?」

「あーごめん。対戦始まるからまた後でね」


 ………やっぱり友達は必要ないかもしれんな。

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