第18話 「ごみ処理だ!」
ナインが色んな物を買い揃えてくれたおかげで、最近は随分と充実した日々を送れている。
でも最近、俺の作った大金に甘えて色々買い過ぎてる気がする。今もこうして1つ、小包が届いたんだから。
「ちょっとナイン!今度は何を注文したんだよ!」
「カボチャも簡単に切れる包丁」
包丁はこれで10本目だろ…
届いた包丁をキッチンに置いて、とりあえず説教するためにリビングへ。
ナインはゲーミングチェアに座って4Kのテレビと向かい合い、ポテチを食べながらゲームに勤しんでいた。
「おいこらっ!」
「うわっ!耳元で叫ばないでよ!」
「周りを見てみろ!ここに引っ越してから2週間、なのに全然ダンボールが減らない!それどころか増えてるじゃないか!どうするんだよこれ!」
「ダンボール工作でもやってれば?」
ゲーム機のプラグを引っこ抜く…のは流石に可哀想なので、メニュー画面に変わったところでテレビの電源を落とした。
「あっ!何するのさ!」
「このダンボールの処理!ごみ処理だ!」
ちょうど明日は資源ゴミの日だ。今から始めればきっと処分出来る。というわけで早速、箱の中身を取り出して行くことにしよう。
「さて1つ目は…ミキサーってまた料理道具かよ」
「あーそんなの頼んでたっけ」
注文した物を忘れてるって典型的な通販バカだろ。
ナインにミキサーの箱を渡してキッチンへ運ばせる。俺はその間に、ダンボールを潰して空いているスペースに置いた。
「今度は…」
一週間前に届いた物の封がまだ切られていなかった。俺はカッターでガムテープを切り、中に入っていた物を取り出した。
「…据え置きのゲーム機!?しかもウチにあるやつじゃねえか!おいナイン!どういうことだ説明しろ!」
まさかこいつ、転売とかやってないだろうな…
「光太と一緒にゲームやりたくて…ちゃんとテレビも買ってあるよ!」
「そうか…」
叱りづらい理由だな…罰としてそれらの準備はこいつにやらせよう。俺はダンボールを潰して、さっき潰した物の上に重ねた。
部屋を見渡すとダンボールはまだまだある。これ、今日中に片付けられるのか?
「今度は~…あ?なんだこれ?黒いビニールに包まれてるぞ」
「あ~それは後で自分でやるよ!他のお願い!」
ナインは開けた箱を持っていった。あいつ…なに頼んでたんだ?
それから日が暮れるまで俺はダンボールを開封、中身をナインに渡すという作業を続けた。
絶対に使わないだろと思う物がいくつかあったが、それらは魔法の杖を作るための素材らしい。
「疲れた~…後はこれだけか」
残りのダンボールは小さな物が1つだけ…このダンボール、シールが貼られてないぞ。
「ナイン、変な小包があるんだけど」
「あれー?さっき注文履歴確認したけど、これでもう全部のはずだよ。光太が頼んだんじゃないの?」
いや、俺は注文した記憶ないけどな…
とりあえず、ダンボールを開けてみることにした。
「機械だな」
ダンボールの中には機械が入っていた。液晶画面には数字が移っていて、その下にはティッシュ箱サイズの装置が付いている。
「目覚まし時計か…?」
液晶画面に表示されているのは時間だ。しかし…数字は少しずつ減っている。ちょうど10分経ったら0になるな。
「ナイン、なんだと思うこれ?」
「どれどれ~?…これは…」
ナインの顔から笑みが消え、さっきダンボールから取り出したばかりの工具セットを広げた。
「おいおい、分解するつもりかよ?」
「これは時限爆弾だね。僕には分かる」
「じ、時限爆弾!?」
爆弾だって!?なんでそんな物騒な代物がウチにあるんだ!
「魔法でどうにかしろよ!」
「いや、この爆弾の送り主を探るためにも、爆発させず解除しておきたい」
「爆弾なんて解除出来るのかよ!」
「僕はナイン・パロルートだぞ!見よ!試作品のソリューション・ワンドだ!」
そしてナインは魔法の杖を取り出した。今回はラジカセの様な装飾で、持ち手部分が銀色でアンテナみたいだ。
…あれ?こういう形の杖、前にも見たことあるような。
「試作品だから1回使ったら壊れちゃうけど、これでなんとかなる!」
「試作品って…大丈夫なのかよ?」
もしも失敗したら、俺たちはアパートごと木っ端微塵。人生の終わりだ。
「それでどうすんだよ。くだらないやり取りで5分切ってるぞ!」
「ミュージックスタート!」
装飾のスイッチを押すとノリノリな曲が流れ始めた。これもう魔法の杖じゃなくてラジカセだろ。
「時限爆弾やって来た、我が家にとうとうやって来た」
「ケーブル切断は爆弾だけ、ゲームでやったらお前敗け」
「必要な物は分かるなぁ、光太ぁ?」
「親方ぁ!親方ぁ!怖くておやおやガタガタぁ!」
「爆弾解除は大工と一緒、便利なペンチ、叩けるトンカチ、曲オンイヤホン、好きだかんな、梅干し昼飯」
「忘れちゃいけないないないないないドライバー!」
「安全よし!気分もよし!テンション既に爆発!」
「心頭滅却すれば火もまた涼し、爆弾解除ミスれば爆死、僕の真似してやってみな」
「腹が減ってはいくさは出来ぬ、白飯梅干し目の白い両親」
「ドライバー」
「でかいなー」
「入るかなー」
「フタがパカッ、中に紐っ、見てみろ若いのこれが現場」
「おい、手紙だぜ?」
「ワオ!ママからだ」
「この爆弾、母から、手紙見てみるみぴょこぴょこ」
「見せてみろみろみぴょこぴょこ」
「不倫で産まれた子どもがいるなんて知られたら私の名前に傷が付きます。どうか爆発に飲み込まれて安らかに地獄に落ちてくださいw」
「読まれない前提、許せねえぜってぇ」
「へいへい親方、あと1分で爆発、一片残らず爆発、こんなで死んだら、みんな爆笑」
「ペンチでコードを切ってくぜ、無駄毛の処理と同じだぜ、ワン、ツー、スリー」
「やったぜ親方、止まったぜ」
「僕たち大工、出来て当然、僕たち僕たち僕僕僕僕…」
魔法の杖が壊れてナインも壊れた。なんか歌ってたら爆弾解除出来たけど…文章だけで伝わるのかこれ。
「しかしビックリだな…まさか母親から爆弾が届くなんて」
「これからはこういう危険物が届かないように気を付けないと」
最低な人間とは言え、母親に殺されそうになったのはショックだった…でも、とりあえず爆弾を解除出来て良かったぜ。
「疲れた~、この爆弾どうする?」
「あー、それ爆発するよ」
「は?」
「解除されたら別のシステムが作動して爆発する仕組みだからさ…ごみ処理、出来て良かったね」
ナインが部屋から出ていった瞬間、俺は目の前で起こった物凄い威力の爆発に巻き込まれたのだった。