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第157話 「攻める!」

「そろそろ本気を出してあげるわね…手加減されて負けるのも悔しいでしょう?」


 硬い物を砕くような音を立てながら、アンが恐ろしい姿に変貌する。

 そっちが変身するならこっちも変身だ!


「光太!超人モードだ!」

「あぁ!炎と氷、どっちでいく?」

「攻める!烈火だ!」


 どれだけ強力な攻撃を放ったところで、あいつは魔獣を利用して復活してしまう。だったらその魔獣を全て燃やし尽くすしかない。


「ハァッ!」


 身体が燃え上がり、超人モード烈火へ。

 先手必勝、変身したアンに高熱の火炎を放った。


「ファイアァァァ!」


 火炎は命中。しかしその位置から結晶化しているのを見て、慌てて炎を止める。よく見ると僕の放っていた攻撃は凍っていた。


「気を付けろ!何をしてくるか分かんないぞ!」


 凍り付いた炎を押し退けて、ニタリと微笑んだアンが歩いてくる。


「アノレカディア出身のあなたなら知ってるでしょう?シータ・ファジルドの名前」

「アノレカディア最強の100人、ハンドレッド・レジェンズの一人でしょ。事故死したって雑誌で読んだけど」

「私は彼の弟子なの」


 参ったな…ただでさえ力の差を感じて嫌気がさしてるってのに、アンの師匠が超絶格上の人だったなんて…


「そのレジェンズの弟子がなんで悪事を働いてるんだ!きっと天国で師匠が悲しんでるぞ!」

「優れていたけどあの人は凡人だった。その能力を社会奉仕にだけ使って、さらなる魔術の発展には一切関わらなかった。弟子入りしたのを後悔したわ」

「乱雑な発展は良くない事態を招く!お師匠さんはそれを分かってたんじゃないのか!」

「だから殺したの」


 その時、アンの手の平から水属性の魔法が勢いよく飛び出した。僕は一瞬で火力を高め、水を付着する前に蒸発させた。

 それよりも…殺した?シータ・ファジルドを?


 アノレカディアで最強と呼ばれている内の一人を!?


「ナイン、焦んな」

「だけど光太!シータっていう魔法使いは──」

「だから焦んな…よく見てみろよ。目の前のブスがそんな強そうに見えるか?」

「あら、酷い言い様ね。これでも結構モテるのだけど…」

「整形野郎が…ナインは騙せても魔獣を通して繋がってる俺は騙せんぞ。この卑怯者め…毒殺したんだろ。しかも魔獣が生成した超強力な毒で」

「ふっふふふふ…繋がってる相手の記憶まで覗けるのね」

「性格もブスなあいつには魔獣しかいないが…こっちにはサヤカ達やノート…仲間とは認めてないが、狼太郎達もいる──」

「おいおい」

「そして俺がいる。優勢なのはこっちだ」


 いや、自分に自信持ちすぎでしょ…でもまあ…


「確かに、少し怯え過ぎてたかも」


 気合いを入れ直すと、僕の気持ちを反映して身体の炎が強くなった。


「それじゃあ再開──」


 全速力の勢いを乗せて打った拳が、頭部を空間の果てまで飛ばした。しかしアンはすぐに再生し、無数の触手を僕に伸ばした。


「ちょっと、人が喋ってる途中だったじゃないの」

「ナイン、こいつを使え!」


 光太から投げ渡されたディサーキュラー・ワンドを炎で掴む。そして円形のブレードに着火させることで、炎を纏う斬撃を繰り出した。


「オリャア!」


 高速回転する刃で触手を切り落として、がら空きになった敵の胴体に押し付ける。

 装飾部分の丸ノコはただ相手を斬るだけでなく、敵の防御力を削り魔力を漏らすデバフ機能も付いているのだ。


「ウオオオオオオオオ!」


 アンの身体は頭から真っ二つになり、僕は勢い余って転ぶように前へ。しかし2つに分かれた彼女の肉体から、糸のように細い触手が現れて両腕に巻き付いた。


「あなたの身体を吸し──」

「やれ!バリュフ!」

「スレイヤー発動!対象は魔獣!ジゾルゴ・フレイア・デルガンマ!!」


 バリュフはユニークスキルを発動、そして僕とアンを一緒に燃やした。

 今の僕は炎を吸収出来るし、魔獣を取り込んでいるこいつには特効で大ダメージになるはすだ!


「ゥギャアァアァアァア!?」


 そして僕から離れたアンを、会長とノートが伸ばした鞭によって捕縛。そこへウォルフナイト・ブラストによる一撃が放たれた。


「ウォリアアアア!」


 ディサーキュラーで真っ二つにした身体が、さらにウォルフナイトの武器を喰らってバラバラになった。


「アオオオオオ!」

「うるせえ吠えるな!ナイン、ニックルに使った杖を出してくれ!あの時と同じやり方であいつを倒す!」

「うん!………って杖が壊されてる!?」


 あいつ!さっきバッグを漁るついでに強力な杖を何本か折ったな!こんなことして、弁償じゃ済まさないぞ!


「はぁ…無駄な抵抗、御苦労様ね。私は魔獣がいる限り絶対に死ぬことはないわ」

「そうか…ところでよ、なんかこの空間狭くないか?」


 そうかな…光太はそう感じているみたいだけど、僕には何の変化も感じられない。


「あなた…やってくれたわね」

「何かやったの?」

「この空間は、空間という概念に干渉する魔獣達の能力を紡ぎ合わせて作った場所だったんだ。つまり、俺達の眼では捉えられないが、この空間には大量の魔獣がいた。お前達が時間稼ぎしてる間にそいつらに殺し合いをさせて、数を減らしたってわけだ」


 時間稼ぎって言い方よ…


「どうだアン?ナメてかかった相手に籠城していた砦を崩される気分は?俺達の世界(オモテ)に出ろ。決着をつけてやる」

「…ふふふ、まあいいわ。あなた達に有利な場所なら別にそこでも…やっぱり戦いはスリルがなきゃ」


 そして僕達のいた空間が崩壊を始めていく。その僅かな間に、光太が心を通して語りかけてきた。


「気を付けろ。まだこれで終わりじゃない…あいつ、何か隠してるぞ」

「え?マジで?」

「念のために防御力のある堅氷に切り替えよう」


 すると僕の超人モードが切り替わり、氷の能力を扱う青色の姿、堅氷となった。




 そして転点高校の跡地へ出た瞬間、迎撃を準備をしていたハンターズの女子達が武器を構えた!


「撃てぇ!」


 生徒会長が指示をした瞬間、アンに向けて攻撃が開始される。僕は流れ弾や爆風にやられないよう氷で壁を造り、皆を背後へ避難させた。


「これで倒せるのか!?」

「攻撃に使われている弾には魔力を抑制させる効果がある。倒せなくとも、あいつを弱体化させられるはずだ」


 そう説明するバリュフは氷越しにアンを睨み付けている。出来ればこれで倒れて欲しい。その気持ちは僕も同じだ。


「グアアアアアアア!」

「こっち弾切れ!」

「そっちもですか!?」

「やることなくなったやつから撤退!早くここから離れろー!戦いの邪魔になるぞー!」


 攻撃を終えた少女達がこの場から避難していく。アンは滞空したまま、僕達の事を見下ろしていた。


 残念だけどまだ生きているみたいだ。けれど先程と比べて感じられる魔力が弱い。弾の効果で弱体化したんだな。


「フウゥゥゥゥ…」


 バキバキバキバキ!


 空気中の水分を凍らし、ゆっくりと氷を伸ばす。このままアンを捕らえられるといいけど…


「流石に痛いわ…さっきのあなた達の攻撃なんかよりよっぽど痛かった…魔力抑制系の術で防御力が下がってしまったのね…」


 傷一つないアンの両足に氷が届き、そのまま凍らせた。すると僕の何倍もの魔力が伝わってきた。

 そうして膨大な魔力を受けたことが原因か、氷はバリンと砕けて散ってしまった。


「あなた達の作戦、中々良かったわよ。魔獣がいなかったら死んでたわ」

「だったらそのまま死んどけよ」


 ペッと唾を吐き、光太は中指を立てる。

 こっちの心を読んで事前にこうなるって知ってたくせに…わざと喰らったな。


「白けちゃったわね。もう終わりにしようかしら」

「ウオオオォ!」

「「「「フォーメーションソード・コンバイン!」」」」


 空中で剣になるサヤカ達のそばをバリュフが跳躍。彼は武器になった彼女達をキャッチして、そのままアンに斬りかかった。


「怖い顔…」

「お前達の魔力を全て攻撃力に変えろ!」

「ダメージアップエンチャント!」


 バリュフは剣を抜いた。サヤカが攻撃力上昇の魔法を発動したことで、赤く光る紅の刃が姿を見せた。


「ウオオオオ!」


 ユニークスキルよって魔獣への特効を得たバリュフが剣を振るう。刃はアンの腕を切断し、そのままバリュフは次の攻撃に移る動きを見せた。


「身体が回復しない…」

「お前の敗因は無数の魔獣を身体に埋め込むため、そのボディを縮め過ぎたことだ!」


 バリュフの攻撃はただアンを斬っているだけじゃない。彼が握っていることで魔獣特効を付与された刃が、骨や臓器にされている魔獣を接触した瞬間に抹消しているんだ。

 間髪をいれず剣を振り連撃を繰り出す。そしてバラバラに切り刻んだアンに、バリュフが魔法を撃つ!


「ジゾルゴ・ライデア・バグロ!」


 呪文を唱えた瞬間、彼の正面から強大な電撃が放たれる。そしてアンは肉片一つ残さず、電撃に飲み込まれていった。

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