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第144話 「戦うんだ!」

 タイムフリーズによって時間が凍らされる。僕は魔法で身体を超高熱で暖めていたので、凍った時間の中でも動くことが出来た。


「それじゃあ…勝負だ!」

「くっ!」


 しかし、超人モードの時よりも身体が重く感じる。停止前までは熱かったはずが、ヒンヤリとした感覚に覆われていた。


 身体が思うように動かせない。ショウコが繰り出した氷の拳を掴んで止めた。

 この攻撃を止めた右手だって滅茶苦茶熱かったはずなのに今は凄く冷たい!


「前よりキレ悪くない?」


 装飾部分に炎の()いたファイア・ワンドを振り、ショウコを追い払った。


「へえ、やるね」

「まだ時間は動かないのか…!」


 焦れったく感じていたその時、凍っていた時間が解凍されて世界が再び動き出した。


「いい!?全員冷麺だよ!戦いが終わるまで熱いのは出しちゃダメだからね!」

「さ、寒い~!」

「味分かんないよー!」


 要塞のデッキでは女子達が冷たい麺を死に物狂いの表情で啜っていた。


「物真似、ベトナム料理を頼もうとするマイケル・ジャクソン…チリンチリ~ン!」

「ヘイラッシャイ!御注文ハ?」

「ポウッ!」

「…ハイ?」

「ダカラ、ポウッ!」

「スイマセン、モウイチド…」

「ダッカッラ!ライスヌードル!フォー!モウイイネムーンウォークデ帰ルヨ!」


 そして始まったコント大会では早速滑り散らかしている女子の姿が…あぁ、あそこにいなくてよかった。


「何…なんのつもり?」

「教えてあげるニャン!ソウルフリーズは相手の魂を凍らせる魔法ニャン!ニャンニャンニャン!」


 キッツ!我ながらキツい!語尾にニャンってないだろ!


 そう、サヤカの狙っているソウルフリーズは時間ではなく魂を凍らせる必殺技。発動のためには気温は勿論、周囲の人々の魂、感情が冷えていなければならない。


「それじゃあさっそくね、この秘密の資料に記載されている生徒会のみんなの◯◯暴露を始めます!まずは穂乃果は◯◯!◯◯だよ!でも時雨君は◯◯なんだよ!可愛い顔してやることエグいよね!◯◯!」

「私副会長が◯◯されるの好きって知ってるよ!ヤバイよね!」


 ヤバイのはオメーらの会話だよ!伏せ字まみれじゃねえか!それに凍り付くどころか盛り上がってるってどんな倫理観で生きてるんだお前ら!?


「…ハッ!」


 急な静寂がまた時間が凍ったことを告げる。

 さっきよりもさらに身体が鈍い!もしかして熱が減るとそれだけ動きが鈍くなるのか!しかもファイア・ワンドじゃ今の冷気に敵う程の熱が出せない!


「面白い作戦じゃん!」


 僕と敵の拳が衝突する。恐ろしく冷えていて、もはや氷を殴っているような感触だ。


「ぐっ!?」


 指が凍って慌てて手を引っ込めたが、その隙に顔面へ蹴りが入った!


「アイスジャベリン!」


 さらに宙を漂っていたところに氷の槍が飛んできた。

 身体を浮かせているフロート・ワンドを口に咥え、ファイア・ワンドを両手で構えた。そして炎の刃を作り出し、飛んできた槍を溶かし斬った。

 タイムフリーズ中は絶対不利だ。時間が動き出した時に猛攻を畳み掛けるしかない!


「まるで侍みたいだね」


 そしてタイムフリーズの効果が切れた瞬間、ショウコに急接近してファイア・ワンドを振り回した。


「ヤァアアア!」


 しかし炎を刃は掠りもしない。反撃出来るはずのショウコだが、微笑んで攻撃を避けている。

 完全にナメられている!


「この野郎!」


 最後の一振りの瞬間、炎を拡散させた。ショウコの注意が炎に向いたその瞬間、腕を目掛けて右足での蹴りを放った。


「おぉ、今のは危なかった!」


 まだだ!受け止められた右足とは反対の左足で、もう一度蹴りを放つ!


 バキィン!


「しまった!」


 ショウコに触れていた両足が凍らされてしまった。義肢のためダメージは少ないが、接続部も凍っていてこれではパージが出来ない。


「タイムフリーズがなくたって私は強いんだよ!」


 ツバキのやつめ!何が「遠距離タイプじゃなかったしら?」だ!こっちの攻撃が全部防がれたぞ!


「チクショウ!」


 咄嗟に出した左手のパンチも受け取められ、そして凍らされる。

 タイムフリーズに焦って接近戦を挑んだのがマズかった!


「凍れよ!」

「スチーム・ワンド!」


 即座にファイア・ワンドを投げ捨てて別の杖を抜く。そして顔に向かって高熱の蒸気を放つと、流石につらかったのかショウコは僕を手放した。


「さて…あっ!?」


 叫んだ時にフロート・ワンドを口から放しちゃった!な、何か別の杖で滞空しないと!


「これがあった!エアースキャフォルド・ワンド!」


 咄嗟に下方向へ投げた杖の装飾が即座に足場に変形してその場に固定される。尻を打ち付けながらも地上へ落ちることは免れた。


「いってって…」

「もう凍らせた時間の中を動ける程の熱は残ってないみたいだね」


 ショウコがすぐそこまで来ている!まさかここに来るまでにタイムフリーズを発動したのか!


 ヤバイぞ…次時間が止まったら殺される!


「君を目の前で痛め付ければ、少しはやる気になるかな」




 次の瞬間、僕の身体はボロボロにされて、髪を掴んで上まで引き上げられていた。タイムフリーズの間にかなりやられたみたいだ


「うぅ…」


 ソウルフリーズの準備は出来ているだろうか。

 しかしショウコにはタイムフリーズがある。それを何とかしない限り、こちらの攻撃は狙えない。


「ナインッ!?」

「ごめん…負けちゃった」


 ショウコの拳が腹に1発。痛いけれど悲鳴をあげる力も残ってない。


「やめてよお姉ちゃん!」


 動揺しちゃダメだよサヤカ…ソウルフリーズを構えるんだ…!


「ここだけは生身なんだね」


 唯一残っていた四肢である右腕を折られた…!痛い!凄く痛い…!


「サヤカ…真面目に戦ってよ…せっかく転生して会えたのに、これじゃあつまらないよ」


 ここまでしてサヤカと戦いたいのか…よっぽど戦いが好きなんだな…


「こんなの…お姉ちゃんじゃない!」


 いや、何かおかしいぞ…なんだこの邪悪な魔力は!

 ショウコの中から邪悪な力が漏れ出ている!今までの魔獣人からは感じた事のない絶対的な悪意!


 戦いが好き人だと思っていたけどそれは間違いだ!これは彼女の本心じゃない!中にいる魔獣が何か悪さをしているんだ!

 どうして今まで気付けなかったんだ…!


「酷いよお姉ちゃん!どうしてこんな酷いことが出来るの!?お姉ちゃん、凄く優しかったじゃん!」


 サヤカに伝えないと…君のお姉さんは魔獣に心を凍らされているんだって…


 寒い…意識が遠退いてきた…当然か、ダメージを受け過ぎたんだ。


 言わないといけないのに…でも…声も出せないくらい苦しくって…


 もうダメだ…




「諦めるな!」


 その時、僕の中に誰かの声が届いた。それはお兄ちゃんや光太、ここにいる誰の声でもなかった。

 誰だっけ…凄く大切な人の声だ。だから聞き覚えがあるんだ。


「諦めるな!お前にはまだやるべきことがある!」


 そうだ…僕にはやらなきゃいけないことが沢山ある。だから…だから…


 こんな寒さで眠ってたまるかよ!


「サヤカ…サヤカアアアアアアア!」

「ナイン!?今、助けるから!」

「君のお姉ちゃんは魔獣に心を凍らされている!だから君の知る生前と違ってこんな残酷なことが出来るんだ!もう迷うことはない!戦え!君のお姉ちゃんを倒すためじゃない!邪悪な魔獣の力から彼女を救うために!戦うんだ!」

「余計なことヲ…言ウナ!」


 魔獣は容赦なく残っていた右腕を潰した。とうとう、四肢を全て失ってしまった。


「ショウコ…いや、氷の魔獣!お前はサヤカに倒される!今さら僕の右腕を潰したところで、お前の敗北に変わりはない!!」

「相性ノ良イ器ニ入レラレ、セッカク心ガ修復シタンダ…ココデ倒サレテタマルカ!」


「ナイン…私やるよ!」


 サヤカの戦う意志が固まった!


 もう僕に出来ることは何もない。後はサヤカが魔獣を倒してくれるのを待つだけだ。

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