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第120話 「この場を切り抜けるよ!」

 攻撃を受けても平然としていた魔獣人は、埃を払う仕草で僕達を挑発する。だけどそれに乗るほど僕達は単純じゃない。


「ミラクル・ワンドで──」

「まだ超人モードは使いたくない。僕が格闘で攻めるから、隙があれば魔法で攻撃してくれ」

「分かった!気を付けろよ!」


 僕は魔獣人へ接近。走力の合わさったパンチは回避された。


「邪魔するな!」


 魔獣人が硬そうな腕を振り降ろし、それに対して壊れている右腕で防御。本当なら腕がジーンと痺れるくらいには強力な打撃なはずだけど、感覚がないので痛みは感じなかった。


 転倒を狙って脚を絡めようとしたが、魔獣人はジャンプして回避。そこからしなやかな動きで蹴りを放った。


「うぐっ!」

「今だ!」


 攻撃直後、無防備だった魔獣人に光太が攻撃を放つ。いいタイミングだ。


 ドガン!ドガン!ドガン!ドガン!ドガン!


「フンッ…」


 しかし魔法の杖による炎の攻撃は効いていない。しかし注意が彼に移った僅かな瞬間、背後に回って羽交い締めにした。


「構うな!やれ!」

「後で文句言うなよ!」


 光太が構えたサンダー・ワンドから電撃が放たれ、僕ごと魔獣人を焼いた。


「くたばれえええ!」

「苦しい…!しかし…これしきのことで!」


 バアアアアアアアアン!


 魔獣人を中心に衝撃波が起こった。僕は吹き飛ばされて建物に激突。光太もユッキーを庇って身体を強く打ち付けていた。

 なんてパワーだ…せっかく仕留められそうだったのに。


「俺の邪魔をするな!俺の狙いは…お前だ!黒金光太!」


 狙いは光太だって!?


「死ねえええええええええ!」

「逃げて光太!」


 打ち所が悪かったのか、光太は立ち上がる事が出来なかった。

 このままではやられてしまうと思ったその時、魔獣人の前にオーロラの壁が出現して行く手を阻んだ。

 あれはユッキーのオロラム・ウォールだ!オーロラの壁が魔獣人の攻撃を止めた!


「黒金君、立って!」

「いってぇ…」

「邪魔をするな!」


 僕は壁を飛び越えて光太のそばへ。そしてバッグから、使用者の魔力を輝く結晶へ変換するクリスタル・ワンドを抜き、早速作り出した結晶を魔獣人に向けて放った。

 魔獣人は結晶に気付くと、それを避けようと壁から離れた。回避されてしまったが、それも想定の内だ。


「クリスタル!拳となって相手を捕まえろ!」


 クリスタルが集まって輝く拳が完成。飛ばした結晶で誘導した魔獣人を力強く掴んだ。

 僕が命じればこのまま握り潰すことも出来るけど…


「…くぁ!放せ!」

「どうして光太を狙う!」

「俺のことを忘れたとは言わせないぞ!」


 全く光太ったら!一体どれだけの人から憎まれているんだ!?


「うっ…まさかお前…白田なのか…?」

「自分の所業を忘れたとは言わせない!幸福に生きられると思うなよ!」


 白田…白田って確か、魔獣に寄生されていた光太の中学生の頃の同級生だ。最期は暴走していたウォルフナイトに切り刻まれてしまった…あの少年なの!?


「殺してやる!」

「俺は…俺は何もやってねえって言っただろ!」


 結晶の拳を破壊して飛び掛かる魔獣人。光太は身体を起こし、手元に転がっていた杖を一振。そして突風が発生し、敵が押し返された。


「自覚のないやつは誰だってそう口にする!」

「チッ…死んだやつが偉そうに説教すんじゃねえぞ!死人に口なしって言うだろうが!」

「謝っても許さない…殺す!」

「ふざけんな!俺が殺してやる!もう一度死ね!そして二度と喋るな!」


 ドクン…


 なんだこの魔力は…魔力なのか?光太の内側から邪悪な何かを感じる…



「クリスタル!発射!」


 ビー玉サイズの結晶が魔獣人へ飛んでいく。魔力の結晶はオーロラの壁を避けて、狙った敵に突撃した。


「邪魔するな!」

「復讐なんてやめるんだ!君はその怒りをアン・ドロシエルに利用されているだけなんだ!」

「うるさい!黙れ!邪魔するならお前も殺す!ウアアアアア!」


 なんてことだ!魔獣人の咆哮で壁が破壊された!


「死ねえええええ!」


 さらに接近してきた魔獣人の手刀で、光太が斬られた!


「お前は!お前はあああああああ!」

「やったなああああああああああ!」


 ドクン…


 二人の怒りが衝突している!これ以上戦ったらきっと良くないことが起きる!


「ユッキー!僕と君の魔法を合わせてこの場を切り抜けるよ!」

「魔法を合わせる!?そんなことまだ習ってないよ!」

「大丈夫!君なら出来る!僕達で光太を守るんだ!」

「黒金君を…守る!」


 僕は杖を掲げて、ユッキーは深呼吸をした。


「咲けよ!クリスタル!」

「オロラム・ライレイ!」


 僕のクリスタルとユッキーのオーロラが共鳴して、極限まで力を溜めて弾ける!この魔法に名前を付けるなら…


「「オロラム・クリスタルライツ!」」


 凄い!光の圧力という表現は変だけど、全身に浴びる光が重たくて上手く動けない!


「逃げるよ!」


 光で完全に視界が遮られた。

 魔力を辿って光太とユッキーの手を取り、その場から撤退を始める。それと同時にクリスタル・ワンドは、発動した魔法に耐えられず自壊を起こした。


「くっ!どこに行った!?逃げるなあああああああ!」


 あれが白田…でも彼は最期、光太を庇った。僕達に負けた後には復讐したことを悔やんでもいた。

 アンはそういう優しい人の心すら操ってしまうのか…


「俺は何もやってない…絶対に」

「黒金君…」


 光太がいじめをしていない…とは僕には言えない。最近の彼を思い返すと、そういう悪いことをした過去があっても驚きはしない。


 だからといって、「本当に何もやってないのか」と問い詰める気にはならなかった。まずは復讐に囚われている白田を止めるべきだ。そのためにも一旦立て直そう。右腕をサヤカに治してもらいたいし。


「くっ…」

 

 光太の傷も治してもらわないと。かなりの重傷だ。

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