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サキュバスのナイン・パロルート  作者: 仲居雅人
少女と少年

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第101話 「最強かもな!」

 身体中が痛い…

 あのヨウエイという魔獣人との戦いでかつてない程の怪我を負ってしまった。きっとあれは魔獣の力ではなくユニークスキルだ。しかしどういう能力なのか検討が付かない。


 しかしそれよりも重要なのは、ナインが俺を必要としてくれているかどうかだ。

 ヨウエイとの戦いでナイン・ワンドが発動しなかった。一体どうしてだ?

 ダメージを負っていたから?いや、初めて発動した時は俺もナインもボロボロだった。

 魔力が足りなかった?そんなことはない。ファーストスペルを唱えた時、ナインから有り余る魔力を感じた。


 ならば失敗の原因は俺達の心にある。それを解消しないと、次はファーストスペルすら反応できなくなるかもしれない…




「あれ?光太。傷はもう大丈夫なの?」

「あぁ…ってお前達もなんだよその怪我」


 まずはサヤカ達の部屋を訪ねた。彼女は頭に包帯を巻き、他の三人も怪我を負っている。


「…学校に現れた魔獣人にやられたんだ。ごめんね、治してあげたいんだけど魔力空っぽで…」

「学校にも出たのか!?それでそんな怪我を…あんま無理すんなよ」


 気を失ってる間に色々あったらしいな。


「そうだ。ナイン知らないか?」

「さっき魔獣人と戦ったってメールがあったよ。水城達と一緒に戻って来るって」


 まさかの四人目!?一日の内に色々あり過ぎだろ…


「たっだいまーって光太!怪我大丈夫なの!?」


 噂をしているとナインが入って来た。後ろには灯沢と水城もいる。

 …って灯沢!?どうしてこいつがここにいるんだ!?


「なんで灯沢がいるんだよ!」

「ユッキーは一緒に戦ってくれる新しい仲間だ!」

「修行は私、水城星河がやらせてもらうわよ!」

「えっえっ良いのかよ灯沢!?戦うって危ない事なんだぞ!」

「私は魔獣に奪われた日常を取り戻したい。そのためなら戦うことなんて怖くない!」


 そう宣言する灯沢に迷いなどはなかった。だったら、俺も止めるつもりはない。


「そうか…一緒に頑張ろうな」

「うん!」

「はいはいは~い灯沢さん。早速修行に行くわよ」

「今から!?ちょっと休ませてもらえたりとか…あーれー!」


 鎖で巻かれた灯沢はそのままどこかへ連れて行かれた。

 大変そうだなぁ…


「それで光太!怪我は大丈夫なの!?」

「そんなことよりも──」

「そんなことで片付けられることじゃないよ!君、ヨウエイとの戦いの後に何があったか覚えてるの?」

「え…保健室で目を覚ましたけど」


 その後に生徒会長の滝嶺と文句を言い合った。まあこれは言わなくてもいいな。


「それじゃあ眠らせた後の事を僕の考察も含めて説明するよ」




 遥という魔獣人にナインが操られて喉を切り裂きそうになった時、ミラクル・ワンドに彼女のピンチを知らされた。そして痛みを堪えて杖を振った記憶はある。それから学校で何か起こったと知って、同行しようとした時にナインに眠らされたんだ。


 ナインが言うには、俺はミラクル・ワンドに身体を使われたらしい。傷などお構い無しに歩かされて、魔獣人となったサヤカの姉ショウコとナインが戦う転点高校までやって来たそうだ。

 そしてミラクル・ワンドはナインに力を与えた。彼女を超人モードへと変身させたのだ。


「そして僕は見たんだ。意識を持たずに立っている光太の姿を」

「そうだったのか…全く記憶にない」

「だろうね…そして戦いの末、僕は新しい超人モードを手に入れた」

「ふぅん…え?新しい超人モード!?なんだよそれ!」

「蒼白い姿だった…多分、氷の力を備えてるんだと思う」


 氷の力か…戦っていたサヤカのお姉さんも氷の力を持つ魔獣を宿しているらしいな。


「な~んて真面目に言ったけど、僕にもよく分かんないんだよね!知らない内に発動してたし!」

「すげーよナイン!2つ目の超人モードがあるなんて!」


 原因は分からないがナインは新しい力を手に入れた。これで戦力アップだ!


「やったな!」

「う、うん…それでね光太。もうミラクル・ワンドは使わないで欲しいんだ」

「え…なんだよ急に」

「この杖は危険だ。死にそうになった持ち主の身体を酷使させるなんて異常だよ」

「でもそれのおかげで今までピンチを乗り越えられた。今回だって新しい超人モードが増えたんだろ?」

「その度に光太が傷付くなんて嫌だよ」

「それは…大丈夫だって。ほら、今までだってなんとかやってこれただろ!焼けようが傷だらけになろうが、こうして生きてるじゃないか」

「とにかくミラクル・ワンドはもう使わないでね」

「でも…今の俺達、ナイン・ワンドすら使えないんだぞ」

「うん。僕の杖貸してあげるから、これからはそれで戦って」


 あまりにも冷たい回答だった。まるでそれで我慢しろと、代わりの物を与えるように。


「どーせ今のお前の頭の中には狼太郎だろうよ」

「…君と一緒に特訓できなくて悪いって思ってる。今は狼太郎の訓練を優先したいんだ」

「なんであいつにそこまで肩入れする!」

「肩入れとかじゃないよ。敵は少ない代わりに一人一人が凄く強い。それに勝つためには、僕達も強い仲間が必要なんだ」


 俺と比べてナインは冷静だった。何を言ってもちゃんとした答えが返ってくる。しかし俺は納得できなかった。


「…だったら良いさ。そのまま狼太郎に杖の使い方も教えてやれよ。魔獣人のパワーと魔法の杖。2つの力が合わさったら最強かもな!」


 強いやつが優先される。俺はナインから必要とされてなかったんだ。

 いや違うな。必要とされなくなったんだ。どれもこれも狼太郎のせいだ。あいつが仲間になってから、俺の存在意義が奪われている。


「いい加減にしてよ。僕だって好きで何時間もあの人に構ってるわけじゃないんだから」

「さっき話したミラクル・ワンドだってそうだ。俺じゃなくて狼太郎に使わせてやれ。魔獣人で身体は丈夫なはずさ。いくら傷付いたって平気だろ」

「君はなんて酷いこと言うんだ!」

「はいそこまで。狼太郎、部屋から出てって」

「なんだよ急に…」

「早く、出てけ」


 サヤカに凄まれて、俺は逃げるように部屋を出てしまった。


「はぁ…」


 どうしてこんなことになってしまったかな。俺はただ、ナインと一緒にいたかっただけなのに…

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