1-1:魔法を使えない魔法使い
アーティア家といえば知らない人はいない魔法使いの名家だ。歴史に名を残すような名立たる魔法使いを数多く輩出し、その功績から今の社会の実権を握っている優秀な血統。
そんな家に生まれついた俺も、初めは期待されていた――らしい。
らしい、というのは、俺にその当時の記憶がないからだ。
当時まだ一歳だった。俺は見限られた。
俺は魔法を使うことができなかったのだ。
適性検査を行った結果、どうやら魔力を魔法に変換することができない特異体質だということが分かったという。
魔法が使えない人間なんて、歴史を紐解いてみてもどこにも見当たらない。前例が全くなかった。魔法を使えるのは当たり前のことで、それを前提にして社会は成り立っている。それができない人間はどこにも存在しなかった。
だから見限られた。
名家名門たるアーティアの名が汚されることを恐れた両親を含めた親族らは俺の存在を隠蔽することに決めた。
魔法が使えないと分かってからは、祖母の元で一人育てられた。俺に関心を失った親族とは違い、祖母だけは俺の味方だった。
半ば絶縁状態で十六歳まで過ごした。そして十六の誕生日を迎えたその日――成人したその日に、俺は正式に縁を切られ、奴隷として秘密裏に売り飛ばされた。
それがトア・アーティアの人生だった。




