表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

家探し

作者:

結晶された生活の一部に僕は居て、呼吸を繰り返している。


つまらない言い方をすれば金と飯が僕を縛霊にしているので、結晶から這い出すことは能わないのです。


其れから女だ。僕は真っ黒な視覚のようにして、生活という結晶そのものについては()()()()いるのだが、アイロニックにも触覚はまるで澄明に保存されているのです。だから掌は同じゅう呼吸する皮膚をもとめている。あたたかい亀裂を内在させた皮膚をです。


このとき不意に、ある光景を、僕の盲目の皮膚は想起する。


追懐の内容はセクシュアルなものでも何でもない。


家探(やさが)しの日に、不動産仲介業者に急き立てられて転がり込んだコンビニエンス・ストアの駐車場。


春めいた光が降る片田舎で、羊歯や竹林のように粗雑なみどりが彩る周囲を背に、孵化したタマゴの中身のごとくモコリと聳立(しょうりつ)する埃っぽい店の、店先のコンクリート打ちはやはり乱雑な光を撒きしめられる一種の生命だったのです。


其処に数台の自転車が雑魚(ザコ)並びしていた。


制服をお仕着せた中学生の男児がいくたりか(さえず)り囀り、何か、僕の網膜が瞬刻だけ視覚をとりかえし、其の囀りの放つ発色をみていた。


其れを覧じて、僕は今、うつろな涙滴をつるつると零しているでしょう。


触覚を伝い知ることが出来ます。


春はあたたかいが寂しいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ