9.ブースターパック購入
特に依頼を受けずに森に入る。
依頼は獲物を狩ってからでも受けることができるとエドワールから聞いたので、とりあえずブレイドファングボアを狙いつつ、遭遇した魔物も狩るという臨機応変な方針だ。
途中、遠目に一角ウサギを見つけた。
警戒心の強い一角ウサギはなかなか狩れない難敵だ。
リリアナが弓を構える。
エドワールが俺たちを制する動きをしたので、任せてみることにした。
結果は見事、リリアナの矢が一角ウサギを貫いた。
「凄いな。この距離で的確に当てるのか」
「自慢の妹です」
エドワールが微笑みながら言った。
▽
木にブレイドファングボアのつけた研ぎ跡があったので、警戒しつつ周囲を索敵する。
ブレイドファングボアを見つけたのはリリアナだった。
今度は俺たちが実力を見せる番だろう。
ナーシアを前衛に、俺は魔術の準備をする。
普段使う〈ストーン・ハンマー〉ではなく、今回は風属性も扱えることを見せるために〈ウィンド・カッター〉だ。
突進してくるイノシシに、〈ウィンド・カッター〉を放つ。
ビュッ!!
風の刃が空気を切り裂き、ブレイドファングボアを両断した。
ナーシアの出番がなくなってしまったが、実力は示せただろう。
エドワールは目を丸くして「まさか〈ウィンド・カッター〉でブレイドファングボアを一撃両断とは」と驚いていた。
「どうだ? 〈ウィンド・セイバー〉と〈サイレントムーブ〉を教える気になったか?」
「教えると申し上げましたが、……風属性が得意な私よりも〈ウィンド・カッター〉の腕前が上ですね。これは私も精進しなければ……」
うっかり両断してしまったので、血抜きと解体に難儀したが、なんとか獲物を持ち帰ることができた。
やはり四人いると持ち替えることのできる獲物が増える。
リリアナの仕留めた一角ウサギも俺たちには初めての獲物だったし、他にも鳥の魔物を何羽か弓で獲っていた。
エドワールの実力も見たが、〈ウィンド・カッター〉の腕前は決して俺に劣るものではなかった。
しかし矢と〈ウィンド・カッター〉では貫通力と切断力に特化しすぎていて、ブレイドファングボアのような重量級を相手取るには確かに不安がある、という話もよく分かった。
その日は結局、二頭目のブレイドファングボアを仕留めて、持ち帰ることができた。
四人にパーティメンバーが増えたが、収入もまた増えたため、収支は余裕でプラスだ。
エドワールとリリアナを加入させて良かった。
▽
数日を一緒に過ごして、エドワールとリリアナはすっかり俺たちと打ち解けていた。
エドワールは風属性が得意だという話だったが、使ってみれば光属性も悪く無さそうだったので、〈ライト・ヒール〉と〈フラッシュ〉を教えた。
俺の方もエドワールから〈ウィンド・セイバー〉と〈サイレントムーブ〉を教わった。
ナーシアの剣の腕前も見せることが出来た。
〈フィジカルブースト〉全開で、単独でブレイドファングボアを倒してみせたのだ。
前衛が足りないから、と加入したエドワールとリリアナはこれに満足したようであった。
さてこの数日で一気に稼ぎが増えた。
マジックナイトの『ショップ』メニューの課金額は銀貨百枚に達し、遂に俺の個人資産がブースターパック購入の銀貨五十枚に届いたことになる。
俺は宿で『ショップ』メニューを眺めながら、どのブースターパックを買おうか悩んでいた。
マジックナイトのエキスパンションは古いものが使用禁止になり、新しいセットに移行していく。
しかし俺が生まれてから今まで、『ショップ』で売られているブースターパックのラインナップが変わったことはなかった。
地球で発売しているはずの最新エキスパンションには興味があったが、さすがに女神も俺のマジックナイトを頻繁にアップデートする気はなさそうだ。
……しかしこのセットだと、俺が世界大会で優勝したあのコンボデッキが作れるんだよな。
カードが揃うまで、どのくらいの銀貨を消費するか分かったものじゃないが。
とりあえず、俺はこの人生で初のブースターパックを購入することにした。
購入したパックは、『パック』メニューで開封することができる。
俺は早速、ブースターパックを開封した。
(SR)竜巻の拳闘士ザザ ①風風 2/2
(R)予期した結末 ②水
(R)丸呑み ②闇闇
(C)城塞の弓手 ①光 1/2
(C)大食いワーム ④地地 6/6
(C)網投げ 地
(C)脚長の蜘蛛 ①地 1/3
(C)肉食鳥 ②風 3/1
ほほう、初のSRはザザか。
まあまあかな。