45.戴冠
半年で隣国の首都を落とし、隣国は王国に編入した。
広域殲滅魔術の使い手がいる、という噂が流れていたので、与し易かった。
デルフィーヌの手腕を認めた辺境伯は、辺境伯軍の軍師にデルフィーヌを据えて、進軍や兵の配置、指揮系統を整備させた。
驚くほど機能的になった辺境伯軍とマルカバッソ子爵軍は、一体となって有機的に機能しはじめ、デルフィーヌの手で迅速に進軍を行うことが出来た。
特に長く伸びた補給線を補うために占領した街のひとつに物資の集積場を作り、そこから補給をするという手法を用いて安定した兵站を築き上げた。
さて隣国の支配は辺境伯の仕事だ。
なのだが、ここでも辺境伯はデルフィーヌに頼り、彼女の隣国併合作戦を採用した。
それはマルカメーヌ辺境伯の養子となった俺が、隣国レナル王国の姫君と婚姻し、王となるというものだった。
たしかにレナル王国の王族になっちゃえば支配は早かろう。
だが妻ナーシアの意見も聞かずに、これはちょっとマズい。
マズいのだが、この方法がもっとも堅実であるとして辺境伯はレナル王国の王都リッツァレナルで俺と養子縁組をして、王女セヴリーヌとの結婚を進めた。
この段になってナーシアと息子をリッツァレナルに呼び寄せることになった。
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結婚式は派手に行われた。
民には酒と食べ物が無料で配布され、お祭り騒ぎだ。
また疫病の筒もまず王都に設置された。
魔物が衰弱する魔法の品は、世界を変える発明だと国王が絶賛する。
更にセヴリーヌ姫と結婚した俺の戴冠式も近々行われる、と宣伝がなされた。
マルカバッソ子爵、マルカメーナ辺境伯子息、レナル王国国王。
それが今後の俺の肩書になる。
マルカバッソからはナーシアと息子だけでなく、算術の申し子マルスランと機械技師のクラリスも呼び寄せた。
本格的に拠点をリッツァレナルに移すことにしたのだ。
というより国王がリッツァレナルを動くことはできない。
厳重に護送されてきたナーシアと息子と半年ぶりに再会して、互いの健康を喜ぶのもつかの間、ナーシアは「なんとなくもう何人か妻を娶る気がしていたから別にいいけど、王女様と結婚して王様になるのは予想外」と案外、冷静だった。
俺はナーシアと息子の命を守るためにも、周囲に予めセヴリーヌとの子を次代の国王に据え、ナーシアとの子は自由に生きさせる、と宣言しておいた。
平民のナーシアの立場が危うかったためだ。
万が一にでもナーシアと息子が毒殺などされたら、この国をメチャクチャにしてしまいたくなる。
ひとまず安全になったことを祈って、俺は戴冠式に臨む。
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戴冠式は厳かな儀式と、民へのお披露目のニパートに分かれていた。
今更堅苦しい儀式もなにもないが、前国王から正式に王冠を譲りうけ、民の前に立った俺は、高揚感とともに新たな国造りをしようと誓った。
各地に王国の兵が配置され、息苦しい思いをしている民を解放するためにも、政治の安定は急務だった。
(SR)完璧主義メイドのミュリエル 水光闇 4/4
予め引いていたミュリエルを常に身辺警護につけて、デルフィーヌの意見を聞きながら治安の安定策を順番に進めていく。
(SR)汚職政治家ヤニック ②闇闇 2/2
やはり予め引いておいたヤニックを政治の専門家として採用。
露骨に賄賂を要求するのが玉に瑕だが、提案してくる施策はどれもまともで、今の俺に必要な人材だった。
カードだからか、吸い上げた賄賂を俺に回してくれるのもありがたかった。
一部は酒や煙草に使っているようだったが、微々たる額なのでそのくらいは許してやる。
機械技師のクラリスの開発した通信機を各地に配備し、国内で治安の乱れがあった場合はすぐに知らせが入るようにした。
デルフィーヌの案だが、これで王国側の人員削減ができる。
目が回るような忙しさに嫌気がさすときもあったが、二人目の妻、王妃セヴリーヌはレナル王国をよりよくしようと、政治的に俺を積極的に後援してくれた。
なんでも戦争で王国には勝てないことがハッキリしている以上、現状で最善を取るのが王族の務め、だとか。
俺との子作りも積極的で、なんとしてでも男の子を生んで次代の国王を自分の子供から出したいのだとか……。
王家の血筋を絶やさないためなら、何でもする、という覚悟が見える。
ひとまずセヴリーヌを信用して、ヤニックとデルフィーヌの頭脳を借りて、俺はなんとか国の舵取りをしていた。




