43.ブースターパック購入
マルカバッソ子爵となり王国内から魔物を駆逐した現在、どうなっているかというと……。
人間同士で戦争を始めた。
当たり前の帰結。
だが少しガッカリしたのは秘密だ。
国境の街マルカバッソも戦争とは無縁ではいられない。
マルカメーヌ辺境伯も軍を出して、隣国を攻めるよう王命が下ったからだ。
辺境伯の寄せ子である俺も当然、戦争に参加だ。
デッキを調整して、戦争用に組み替える。
とはいえ、ほとんどの呪文カードを魔術化した今の俺にとっては、煉獄の猛火ですらデッキに入れる必要もないのだが。
なお作為的な疫病はデッキから外してある。
あの魔術が敵国の人間にバラ撒かれる未来は見たくない。
▽
ナーシアが離脱したので、前衛を増やす必要があった。
ダンジョン都市の領主が出てくることはないのだが、単純にブースターパックを剥きたくて新しい前衛を引くことにした。
十パックも引かないうちに目当ての前衛が来た。
(SR)放浪の剣姫オレリア 火光 3/3
放浪の剣姫オレリアは単純に攻撃力と防御力が優れた剣士だ。
オレリアにはナーシアが抜けた分のエンチャント、即ち残酷な剣、暗黒の力を三枚を与えた。
更に追加で余っていた豊かな成長も与える。
マナを生み出す能力は実際、有用なのだ。
神算鬼謀のデルフィーヌを傍に置いて、浄化の使徒アデリーナ、野盗の弟子ダニロ、刀術の騎士エヴァルド、覚醒した魔道士ベネデッタ、そして放浪の剣姫オレリアを護衛にして戦争に赴く。
デルフィーヌは軍師として俺の行動にアドバイスをもらうことになる。
戦争は素人だから、頼れる知恵者がいてくれて助かる。
算術の申し子マルスランと機械技師のクラリスはマルカバッソの街に残ってもらうつもりだ。
特にマルスランには領主代行を任せてあるので、しっかりと働いて欲しい。
▽
「今回も当てにしているぞ、マルカバッソ子爵」
「はい、マルカメーヌ辺境伯様。お任せください」
「うむ。領主となって顔つきが変わったか? この戦争で隣国を支配下に置け、との王命だ。しっかり働くのだぞ」
凄いな。
一気に隣国を支配する気か。
「してマルカバッソ子爵、疫病の筒は?」
「準備してあります。野営のときに必要でしょう」
「ありがたい。高価なうえに品不足とあってな。手に入らなかったのだ」
「おやそうでしたか。増産しているのですが、さすがに王国全土に行き渡るまでにはまだまだ時間がかかりそうですね」
「そなたは優秀な部下を持っているな……羨ましく思うぞ」
「その優秀な部下を持つ私を部下にしている辺境伯様こそ最強なのでは?」
「ぬう……確かにな。つくづくエステルを嫁がせられなかったのが残念でならぬ」
「ははは……」
実は縁談は引きも切らない。
妻がいるから、と全て断っているが、伯爵以上からの縁談は断るのに苦戦するので、辺境伯のお力を借りている。
〈アーティフィシャル・プレイグ〉の開発者にして、疫病の筒を一手に販売している俺は大金持ちになっていたから、貴族からすれば娘を嫁がせる先として適任なのだろう。




