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今回の戦争は講和の使者を送ることはせずに、俺たちを戦力の要として逆侵攻を行うことになった。
デッキをリセットしておき、何食わぬ顔で煉獄の猛火を手札に入れておく。
また使わされるかも知れないからだ。
俺たち五人は他の冒険者たちとは別行動で、辺境伯の周囲の護衛に混ざることになった。
完全に特別扱いだが、まあ仕方のないことだろう。
敵陣はボロボロで、早々に降伏をしてきた。
位の高い者は捕虜にし、そうでないものは殺す。
つくづくナーシアを連れてこないで良かった。
戦争は非情だ。
▽
国境を越えた先にある敵国の砦を攻める。
ダニロの閃光の弓とベネデッタの太陽の王笏、そして俺の魔術で胸壁の敵兵を掃除していく。
突撃する兵士や冒険者たちの援護が俺たちの仕事だ。
アデリーナとエヴァルドは鬼神の如き活躍を見せて、敵の砦に一番乗りを果たした。
どちらが早かったか、後で揉めることになるほど同時だった。
砦に入ったら後はアデリーナとエヴァルドの独壇場だ。
強力なエンチャントをつけたふたりに、敵う人間はいまい。
砦が落ちたのは、その数時間後だった。
▽
「今回もサンの活躍は目覚ましかったな。サンの仲間たちもあれほどの強さとは……そういえば以前、冒険者ギルドに派遣していた仲間たちはどうしたのだ?」
「実はダンジョン都市の領主に熱烈に勧誘されて、今も雲隠れしている最中なのです」
「あのクズか……王国貴族として恥ずかしく思う。あればかりが貴族だとは思わないでくれ」
「はい。それは分かっております」
「うむ。では次は街をひとつ、切り取るか……」
今回の戦争では国境の位置を変えさせて、街をひとつ手に入れることらしい。
煉獄の猛火の出番はなさそうだ。




