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数日後。
さすがに二パーティに与えていたエンチャントやアーティファクトを集約したパーティだけあって、第十七階層まであっという間だった。
第十五階層のコカトリスも弓と魔法、魔術で倒せてしまったし、第十七階層の魔物も今の所、楽勝だ。
野営の準備をしてから、沐浴の呪文を使う。
一日中、返り血を浴びていた前衛にはありがたいことだろう。
後衛にしたって汗やホコリが気になるものだ。
沐浴がCで良かったと思える瞬間だ。
翌日は第十七階層のマッピングをして、第十八階層に降りる。
占術の鏡で宝箱と階段の位置が分かるから、効率よくフロアを回ることができる。
遭遇する魔物はオーガの亜種とガネーシャ、ロトンパンサーにキラータイガーだ。
オーガは剣を持ったり槍を持ったり、はたまた弓矢を持ったりと武器のバリエーションが多い。
ガネーシャは四本腕の直立二足歩行する象で、四本の手にそれぞれ曲刀を握っている。
ロトンパンサーは腐った豹だ。
アンデッドになっても素早い動きは損なわれていない。
キラータイガーは単純に強い虎である。
素早い上に岩陰から奇襲を狙ってくるダンジョンの狩人だ。
楽勝とまでは言わないが、しかし苦戦もしていない。
もう少し降りていけそうだ。
▽
第二十階層。
マッピングをしている最中に、ボス部屋を発見する。
……今の俺たちなら勝てる。
第二十階層も余裕をもって戦えているからだ。
宝箱を開けていってマッピングの最後に、ボス部屋に挑む。
扉が開いた先にいたのは――巨大な三首の犬、ケルベロスだ!
普通サイズの犬の魔物ヘルハウンドを従えて、こちらに襲いかかってきた。
ダニロの矢がヘルハウンドの眉間を穿つ。
アデリーナ、エヴァルド、ナーシアが襲いかかってくるヘルハウンドを斬り捨てていった。
ベネデッタが太陽の王笏を起動してケルベロスを攻撃する。
俺もマナカードから風のマナを引き出して〈ウィンドセイバー〉を放った。
「「「ガルルルルル――」」」
三首は火炎のブレスを吐いてきた。
咄嗟に光のマナカードからマナを引き出して〈フィールドプロテクション〉で前衛を守る。
火炎は〈フィールドプロテクション〉に遮られ、前衛たちは守られた。
取り巻きのヘルハウンドは片付いたようなので、前衛たたちがケルベロスに向かう。
ひとりひと首。
ナーシアが残酷な剣で首を一刀両断し、アデリーナが天雷の斧で眉間を叩き割り、エヴァルドが神速の居合いで首を落とした。
やはりウチの前衛たちは強いなあ。
ケルベロスは三首に嵌っていた首輪が換金部位になるそうだ。
鎖付きのそれは魔法の首輪で、人間につけると鎖を握った者の命令に強制的に従わされるという悪どいものだ。
……さすがにこれを売却するのは怖いな。
報酬がなくなるが、ケルベロスの首輪はなかったことにしておくのが良いだろう。
俺たちはまだ余裕があったので、第二十一階層に挑むことにした。
▽
結局、第二十三階層まで探索とマッピングを済ませて、地上に戻った。
大幅な記録更新に冒険者ギルドの受付嬢も驚きを隠せない様子だった。
領主からの招待状が来たのは、その数日後のことだった。




