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俺の召喚した連中は、王都の冒険者ギルドで仕事を受けていた。
休日は外出して、俺は彼らの様子を見に行くのが日課だった。
「ようザザ。どんな感じだ?」
「オーナー。順調ですよ、俺たちに勝てる魔物なんてそうそういません」
そりゃそうだろう。
辺境伯領でキマイラやワイバーンを倒していると聞いている。
王都近辺では強力な魔物はあまりいないらしいが、それでも全く出ないわけではない。
「オーナーは学院はどうです、楽しいですか?」
「まあまあだな。貴族と平民との差が大きくて、そこが少し面倒だ」
「ああ貴族。俺たちの方にも勧誘とか引き抜きみたいな話が来てますね。全部、断っていますけど」
「そうか。あんまりしつこいようなら、俺に言えよ?」
「大丈夫ですよ。俺たちを誰が手に入れるのかって貴族同士で牽制しあっている最中ですから」
「それはそれで凄い話だな」
どうやら六人の冒険者生活は順調らしい。
ただ貴族の出方は気になる。
何事もなければ良いのだが……。
▽
「おい、お前! 今日も授業をサボって読書とは良い身分だな」
「…………はあ?」
貴族数名が教室で俺に絡んできた。
エステルがちょうど席を外している最中のことなので、俺が対応するしかない。
「授業の内容は既に習得したものだから、自習していただけだ。先々の予習をしていたんだが……何か問題でも?」
「平民のくせにその態度が気に入らないんだよ! なんで俺たちより魔術が使えるんだ!」
「俺は十二歳で冒険者になって、それなりに魔物とも戦ってきましたからね」
「ぬぬ、生意気な……」
「学院では勉強第一。学院でしか学べないことが沢山あるんです。平民なんぞに突っかかってないで、勉強、したらどうですか」
「貴様……っ」
怒りの形相の貴族のひとりが、すぐに表情を取り繕った。
何事かと思ったら、エステルが教室に戻ってきたようだ。
「あら、サン。なにやら級友たちに囲まれて人気のようだけど?」
「いやなに。勉強しているだけだよ」
「……あんたのその勉強に対する態度は尊敬に値するわ」
「だろう? せっかく学院に高い学費を支払っているんだ。元は取らないとな」
「そういう問題?」
いつの間にか俺に難癖つけていた貴族たちは散り散りになっていた。
こんな調子でときどき絡んでくるが、まったく暇な連中だ。




