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文献を当たるばかりではなく、実際に訓練をしている人にも聞いてみることにした。
辺境伯軍の魔術師に聞いてみたところ、マナを集める訓練として瞑想が上げられた。
とにかく魔術発動を考えずに、マナを集める訓練だそうだ。
これをすると、マナ不足で使えなかった魔術を使えるようになったりするらしい。
……エステルに必要なのはこの訓練だな。
文献を当たっていた時間が無駄だったような気がするが、とにかく実際に成功した手法があるならそれを試すべきだ。
さっそく、エステルに瞑想を試してもらう。
「本当にこんなことで上手くマナを集められるようになるの?」
「辺境伯軍の魔術師が言っていた方法だから、確実だと思うよ」
「そう……じゃあサンと我が辺境伯軍の魔術師を信じてみるわ」
瞑想して、マナを集めるエステル。
集まるのは火と風のマナに大きく偏っている。
なるほど、これが得意属性というわけか。
……俺がやったら全属性がまんべんなく集まるのだろうか?
瞑目せずともマナを集めることはできる。
俺は何も考えずにマナを集めてみた。
すると、全属性のマナが偏りなく大量に集まってきた。
「ちょ、ちょっと何しているの?!」
俺がマナを集めていることに気づいたエステルが目をつぶったまま声を上げた。
「俺も試しにマナを集めてみたんだよ。気にしないでくれ」
「そう……いきなり近くに強いマナが現われて驚いたわ。今度からそれやるときは事前に言ってよね」
「分かった、悪かったな気を散らせて」
「ふん。いいわよ別にそれくらい」
エステルは〈フレイムジャベリン〉を発動するに余裕あるマナを集めていたので、集めたマナを維持したままで魔術を発動してもらった。
〈フレイムジャベリン〉は的に当たり、的を燃やした。
成功だ。
「発動はなんとかなったけど、威力がサンと全然違うじゃない。もっと訓練が必要ね……」
「そうだな。マナを集める瞑想は悪くないな。瞑想じゃなくても普段からマナを集める訓練はいつどこでもできる。火属性のマナだけ、風属性のマナだけ、と分けて集める訓練をするといい」
「え、マナに属性なんてあるの?」
「そこからか……あるよ。そうか、エステルは〈フレイムジャベリン〉を行使する際、風のマナも集めてしまうから火のマナが足りないんじゃないのか?」
「そっか……マナに属性があるなんて知らなかった。火属性だけを集める訓練が必要みたいね」
「特定のマナが過剰だと、行使する魔術の威力が上がるから気をつけて。マナを集める訓練をしたら、マナを散らして魔術に使わないように」
「うん、分かりましたサン先生♪」
「……分かればよろしい」
▽
俺たちが十四歳になるのはあっという間だった。
エステルはナーシアに鍛えられてまずまずの腕前になったし、属性ごとにマナを集める術を習得したエステルは火属性と風属性の魔術をかなりの威力で扱うことができるようになった。
これには辺境伯も満足していただいたようで、こっそりと礼を言われた。
数ヶ月の間に冒険者ギルドで名を挙げたザザたちも、沢山の銀貨を稼いできてくれた。
幸いギュスターヴがワーウルフに変じるほどの強敵には会っていないようだったが、それでもキマイラやワイバーンなど、強敵を何体も撃破しており、冒険者ギルドでは下にも置かない扱いだったそうだ。
そんな俺たちも、王都へ向かって魔術師学院に入学する。
ザザたちを護衛にして、エステル、俺、ナーシアはまだ見ぬ学院に胸を躍らせていた。




