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マジックナイト ~TCG世界大会優勝者の俺が異世界で魔物を駆逐するまで~  作者: イ尹口欠


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 ダンジョンの最深階層を更新した俺たち。

 しかし泊がついた途端に、面倒くさそうな依頼が舞い込んできた。


 冒険者ギルドへ着くなり、受付嬢が「サンさん、依頼が来ています」と声をかけてきた。


「珍しいですね。指名依頼ですか?」


「はい。ダンジョンの最深部記録更新をした若年パーティに依頼です。マルカメーヌ辺境伯ご一行の護衛依頼です」


「辺境伯? 護衛なしにここまで来たわけじゃないでしょう?」


「はい。正規の護衛はいらっしゃいます。その上で、娘さんと歳の近い冒険者に護衛依頼を出した、というわけなのですが」


「つまり話し相手になれ、と?」


「平たく言えばそうです」


 国内の地図が頭に入っていなくても、辺境伯というからには国境の守りを任されている大貴族だということは分かる。

 その娘の話し相手……気が重い。


 俺もナーシアも平民の出だ。

 気の利いた話しなどできるとは思えない。


 そう正直に受付嬢に話してみると、


「そんなに気にすることはありませんよ。辺境伯令嬢は、ここダンジョン都市でダンジョン探索をした冒険の話しを聞きたがるでしょうから」


「ああ、なるほどね」


 冒険の話ならいくらでもできる。

 ひとまずダンジョン都市を離れることになるから、ナーシアと相談だ。


 ▽


「……てなわけで、依頼が入っているんだけど。ナーシアはどう思う?」


「ええと、辺境伯ご令嬢の話し相手だなんて、私たちに務まるでしょうか?」


「冒険の話を聞きたいようだから、ナーシアでも話題が尽きることはないと思うよ」


「あ、そうか。お嬢様ですもんね。そういうお話をご所望なら、大丈夫そうです」


 半年以上もいたので、ダンジョン都市モッタアルトロワに愛着がないわけでもないが、正直な話、キツくなってきたのも確かだ。

 キツいというより頭打ちというべきか。


 箔付けにダンジョンの最深部を更新してみたりしていた通り、お金を稼ぐだけなら単調な作業になってしまう。

 かと言ってダンジョンを潜り、新たな階層をマッピングすることに喜びを感じるかと言われると、そうでもないわけで。


 俺としては魔物の駆除をするという目的があるけれど、それにしたって六人でダンジョンに潜ってそれが成し遂げられるとも思っていない。


 そんなわけで、俺たちは借りていた借家を返して、依頼を受けることにした。


 ▽


 依頼を受けて数日後、マルカメーヌ辺境伯が領地に戻る日。

 俺とナーシアは同じ歳のエステル・マルカメーヌ辺境伯令嬢の馬車に乗ることになり、他四人のパーティメンバーたちは馬車の回りを歩くことになった。

 話し相手をご所望とは聞いていたが……護衛も乗せずに俺たちと三人だけの馬車旅とは予想外だった。


「あら? でもあなたたち、私と同じ歳で凄腕の冒険者なのでしょう? 護衛が同乗したところで変わりはしないでしょう」


 エステルはだいぶ肝が座った女の子だった。


 馬車の旅が始まる。

 辺境伯領まで半月ほどかかるというから、結構な距離だ。


 その間の宿代や食事代などは依頼主が負担するという条件なので、今から少し楽しみだったりする。


 さて馬車が発進すると、エステルは俺たちに冒険の話をねだった。

 別に自身が冒険者になるつもりはないが、どういうものかは知っておきたい。

 そういうスタンスだそうだ。


 俺とナーシアは冒険者になってからのことを、順番に話していった。

 収納鞄や太陽の王笏などの魔法の品を出せる特殊な魔法を持っていると話すことになったが、エドワールとリリアナとの別れを話すにはそう言うしかなかった。


「マジックバッグを出す魔法? そんな便利なものがあるの?」


「俺の周囲でしか使えません。だから冒険者は都合が良かったんです」


「条件付きマジックバッグねえ……あなたたち、ウチの領地で働かない? 六人揃って一日に金貨一枚とかでどう?」


 悪くない条件だった。


「そんなことをエステルが勝手に決めていいのか」


「いいのよ。待遇は私の家庭教師。もうすぐ魔術師学院に通うことになっているのだけど、火と風の魔術をもう少し学びたいの。後は護身術として武器をひとつやらないとだから、剣術を学びたいわね」


「家庭教師か。任期はいつまでだ?」


「私が学院に行くまでね。……それで、どうせならあなたたちも学院に通ったら? 私が支払う俸給で学費は支払えるでしょうし」


「俺たちが魔術師学院に……」


「王都にある魔術師学院には大量の蔵書のある図書館もあるし、〈フィジカルブースト〉をつかった戦闘訓練もあるし。悪くないじゃない? 学院は全寮制だから住む場所は決まっているし」


「いたれりつくせり、だな」


「悪い話じゃないでしょう? ……こうして話ができる同年代の友人がいないの。家庭教師と学院に通う話、考えておいてねえ」


 悪くない話だなあ、と考える。

 俺たちはまだ十三歳だ。

 学院に通うという寄り道をするのも悪くない。


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