21
第十五階層のボス部屋の扉を開けた。
中にいたのは、鶏に蛇の尻尾の生えたコカトリスだった。
「……マズい、石化か!」
鶏が濃紫色の霧を吐き出す。
シャルリーヌが茨による拘束で動きを止めて、リュシエンヌが閃光の弓から矢を放ち、フランセットが手斧を投げた。
霧から離れた位置から俺は地のマナカードからマナを引き出して、網投げを放った。
網投げは攻撃力と防御力を下げ、飛行能力を奪う呪文カードだ。
コカトリスは飛ぶことはないだろうが、攻撃力と防御力を下げる網投げは役に立つことだろう。
なにより網に絡め取られたコカトリスは動きづらそうにしている。
俺は風のマナカードからマナを大量に引き出して、〈ウィンドセイバー〉を放った。
コカトリスを深々と斬り裂き、出血を強いる。
再びコカトリスは濃紫色の霧を吐いてきたが、距離をとって戦う俺たちにまでは届かない。
最期はフランセットの手斧で、とどめを刺した。
「……ふう。誰も石化、してないな?」
確認を取った結果、怪我をした者もいなかった。
さすが茨姫シャルリーヌ、その拘束能力は完璧らしい。
「魔物が一体なら何が出ても、問題ないな」
ナーシアがコカトリスの死骸を見ながら言った。
「コカトリスの石化が出たってことは、第十六階層以降は石化能力をもった魔物が出てくるかもしれないってことじゃないの?」
「あり得るな。とりあえず換金部位を剥ぎ取ったら、第十六階層の様子を見て、……一旦、帰ろうか」
ボス部屋のコカトリスに対しては準備不足だった。
次に潜る場合は、石化の解除薬などを仕入れておく必要があるだろう。
▽
第十六階層は、魔物こそ強くなっていたが、これまでとそう変わらなかった。
前人未到なので、占術の鏡で宝箱を探しながら魔物と戦う。
ナーシアとザザはボス戦で活躍がなかったせいか、積極的に前に出て戦っていた。
オーガという人間より一回り大きな魔物で、武器を操る強敵だったが、残酷な剣を装備したナーシアと、闘士の肉体をエンチャントされたザザの敵ではなかった。
俺たちは第十六階層と第十五階層だけマッピングして、地上に帰還した。
▽
冒険者ギルドの受付嬢に、「第十六階層まで行った」ことを告げて、地図を売った。
第十五階層にボスがいたことで納得の色を浮かべていたが、ボスがコカトリスであるとの記載を見つけると、心配そうにこちらを伺ってきた。
「石化に冒された方はいらっしゃいませんか?」
「ああ、距離を取って戦ったから大丈夫だったよ」
「それは良かったです。それでは記録更新ですね」
「なあひとつ聞いておきたいんだが、光魔術に〈キュア・ストーン〉があったよな? どこかで教えてもらえたりする場所ってあるのか?」
「それでしたら、冒険者ギルドの個別講習で可能です。予め予約を入れておいて頂ければ、該当する魔術の教官を用意しておきますので」
「それはありがたい。じゃあ早速、〈キュア・ストーン〉を」
「はい、かしこまりました」
「おっと、第十六階層までで取得した戦利品の換金を頼むよ」
「マジックバッグの中のものですよね? 大量でしたら、カウンターではなく別の場所でお願いしたいところですが」
「分かった。解体場でいいかな?」
「はい、よろしくお願いします」
俺は諸々の手続きを終えて、家に戻る。
ここのところナーシアが料理を頑張っているので、今日は手料理だ。




