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 俺は無事に産まれたようだった。

 産まれてしばらくは目が開かなくて不安だったが、唐突に目がパッチリ開き自分の身体を確認すると、ちゃんと産まれたんだなあという実感が湧いてきた。


 視界の隅にあるアイコンは慣れ親しんだマジックナイトのアイコンだ。

 金髪巨乳の女神、ちゃんとマジックナイトの能力を授けてくれたのが分かってホッとした。


 さて視界の隅にあるアイコンを意識すると、目の前にホロウィンドウが展開した。

 どうやらこのメニュー画面からカードの整理やデッキの構築を行うらしい。


 まず『コレクション』を確認する。


 ……ない、だと。


 おそらく俺のカード資産である『コレクション』のメニューには、一枚のカードもなかった。


 他のメニューを確認すると、『ショップ』というメニューがあることに気づく。

『ショップ』メニューにはお金を消費して、ブースターパックを購入する機能があるらしいことが分かった。


 あのクソ女神、お金がないとカードが買えないとかふざけてんのか!?


 これじゃあお金を貯めるまで能力は発揮できないではないか。

 当たり前のカードゲームの仕様を取り入れるこたあないだろうに、何を考えているんだあの女神め。

 能力を発揮できなければ、目的の魔物退治だっておぼつかないだろうに。


 今度は『デッキ』メニューを確認する。

 新規作成で新たなデッキを作ってみるが……おっと、マナカードは無制限に生成できることに気づいた。


 マナカードとは、マジックナイトの呪文カードを使うために必要となるカードのことで、マナを生成することができるだけの基本的なカードだ。

 大抵、六十枚のデッキの中の三分の一以上を占める。


 俺はとりあえずマナカードだけの六十枚デッキを組んでみた。

 呪文がなにもない、むなしいデッキだ。


 デッキを構築すると、『イクイップメント』というメニューにデッキを指定することができるようになった。

 どうやら幾つもデッキを用意しておくことはできるが、同時にふたつのデッキを使うようなことは出来ないらしい。

 まあこれは納得のいく仕様だ。


 シュルルルルル――。


 視界の端にカードの束……デッキがシャッフルされた状態で積み上がる。


 俺は試しに一枚、デッキトップを引いてみた。


 シュルルルルル……と手札に七枚のカードが引かれた。


 おう、自動で初期手札の七枚が引かれるのか。


 手札は見事にマナカードばかり。

 勝負の場だったら呪文がないこんな手札はマリガン――初期手札を引き直しすること――している手札だ。


 とりあえず相手のいないソリティア状態なので、手札からマナカードを出す。

 マジックナイトでは一ターンに一枚のマナカードを場に出すことができる。


 光のマナカードを場に出すと、不意に温かい何かを感じた。


 ……なんだ?


 不思議な感触に思わず周囲を見渡す。

 だが何の変化もない。


 デッキトップを叩くと、自動的に次の手札が補充された。

 二ターン目だ。

 またマナカードを出す。


 今度はハッキリと熱を感じた。

 出したマナカードは火のマナカードだ。


 もしかして、これは本当にマナを出しているのか?


 呪文のカードを試していないからなんとも言えないが、どうやらマナカードを場に出すと、該当する属性のマナが周囲に溢れ出すらしい。


 ……これ、使えないかな。


 呪文カードはないが、ここが魔法のある世界だということは分かっている。

 母親がロウソクに火を灯すのに、何か唱えて火をつけていたからだ。


 ……いま場に出ているのは光と火のマナカードが一枚ずつ。


 ならば明かりをつける魔法とか、使えないだろうか。


「ばぶぶー!」


 もわっと、何かが動いた気がした。

 どうやらマナに働きかけることは成功したらしい。


 あとはこれがちゃんとした呪文になれば……そういえば母親は何か唱えていたな。

 もしかしたらちゃんと言葉が使えないと、魔法は使えないのかもしれない。


 ……いや、でもなんか動いた感じはあったよな?


 俺はデッキを収納して、『デッキ』メニューで光のマナカードだけの六十枚デッキを作成した。


 その新しいデッキを『イクイップメント』して、場にデッキを出す。


 さあ、試すぞ。


 俺はまず初期手札を引く。

 当然、七枚全部が光のマナカードだ。


 場にマナカードを出す。

 デッキからカードを引く。

 場にマナカードを出す。


 これをひたすら繰り返していく。

 デッキが残り数枚になる頃には、周囲に光の魔力が溢れていることが感じられた。


 ……今なら、できるかも!


「ばぶぶぅ!!」


 パっと、光った。


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