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「一体、これはどういうことですか、リーダー!?」
「落ち着けエドワール。ザザが強くなったことをまずは喜ぼう」
「そんな問題ですか!?」
ザザに闘士の肉体をエンチャントしたことで、ただでさえ筋肉質だった身体が見違えるように逞しくなったのだ。
一晩で。
……そりゃ怪しいよなあ。
「一体どんな魔法を使ったのかは知りませんが、リーダー。ここまであからさまに変わってもまだ秘密にしておくと言うのですか?!」
「そのつもりだが」
「……っ! もう限界だ。リーダー、私はあなたを信用できなくなった」
「え、エドワール?」
「私たちはこのパーティを抜けさせてもらいます。リリアナ、いいな?」
リリアナは困った表情で俺とエドワールに視線をやると、小さく頷いた。
そしてエドワールとリリアナは去った。
「ナーシア。やっぱり秘密にしておくのはもう無理なのかな」
「サン。一体、何をかくしているの? 私にも秘密なの?」
「……いや。この際だ、ナーシアには打ち明けるよ。宿に行こう。今日は冒険する気にはなれない」
「うん」
▽
俺はマジックナイトの能力についてナーシアに説明した。
ナーシアは難しい顔で聞いていたが、「……よく分からない」と最後に言われてしまった。
「よく分からないけど、ザザとシャルリーナはサンの魔法で呼び出したってことは分かった。ザザが一晩で変貌したのも、サンの魔法だってことも分かった」
「それが分かれば十分だろ」
「でも分からないのは、なんでそれを秘密にしていたのか、だよ」
「……それは」
「確かに人間を召喚する魔法だなんて普通じゃないけど……エドワールやリリアナに説明したら、そういうものかって納得してくれたんじゃないかな」
「そうかもな。何もかも、手遅れだけど」
「うん……」
「俺とナーシアふたりに加え、幸いザザとシャルリーナがいる。この四人なら山岳地帯でも稼げる」
「うん。そうだね。ザザは前より強くなったんだよね?」
「ああ。格段と強くなったはずだ」
「分かった。じゃあ明日、この街を出よう」
ナーシアは「ダンジョン都市に行ってみたい」と言った。
「そうだな。この街に留まっていると、エドワールたちと鉢合わせて気まずいことになりそうだしな」
「うん。それにお金を稼ぐほど強くなるサンなら、ダンジョン都市へ行って稼ぐ方が良いと思う」
「ナーシア……」
「私はサンの味方だよ。婚約者だもん。どこまでもついていくんだから。絶対、離さないからね」
「ありがとう」
俺のことを第一に考えてくれるのは、ナーシアだけだろう。
▽
翌朝、俺たちは商隊の護衛依頼を受けて、グリアルージャンの街を離れた。
行き先はダンジョン都市モッタアルトロワ。
幾つかのダンジョンがあると言われている街で、ダンジョンから産出する魔物素材で街は常に潤っているらしい。
冒険者の数も多く、埋没するにはもってこいの場所だ。
……いや埋没しちゃダメだろう。
女神からのお題である魔物討伐を果たすためにも、ダンジョンで大量の魔物を倒さなければ。
それが理由でどれだけ目立っても、女神がくれたマジックナイトの能力を駆使してやる。




