16.ブースターパック購入
シャルリーナは強かった。
茨による拘束は凶悪だったし、太陽の王笏による攻撃は一撃でヒルジャイアントを焼き殺した。
迂闊だったのは、太陽の王笏による攻撃が火炎によるものだったことだ。
属性のないアーティファクトだから油断していたが、名前の時点で気づくべきだったかもしれない。
山火事にならないように、〈クリエイト・ウォーター〉で消化するようにした。
「凄いですね……あの火炎はその杖のものですか?」
「そうよ。太陽の王笏というアーティファクトなの」
「あ、アーティファクト……?」
「ええと……魔法の道具のことよ」
エドワールはこちらをチラリと見て、「その太陽の王笏とやらはどこで手に入れたのですか?」などと聞いてきた。
収納鞄といい、いきなり魔法の品が増えたことに違和感を持っているようだ。
「オーナーから頂いたものですよ」
「リーダー? マジックバッグといい、一体、どういう経路で入手したのですか?」
エドワールは不信感を隠そうともせずに、俺に詰め寄った。
「秘密だ。森の主を倒したときと同じように、切り札だからな」
「…………」
半目になったエドワールを、リリアナが「いいじゃない。強力な魔法の品をパーティのために使ってもらえるんだもの」と取りなしてくれた。
……ううむ、やはり無理があるか?
マジックナイトの能力でどこからともなく仲間や魔法の品を持ち出すのは。
実は俺の腰の剣も変わっているのだが、エドワールはそこまでは気づいていないようだ。
▽
この日の稼ぎも銀貨五十枚を越えた。
順調にブースターパックを購入できるわけだが、エドワールの不信の目を思い出すと躊躇する。
だが戦力アップは魅力的なのだ。
俺はブースターパックを購入して、開封した。
(SR)闘士の肉体 ③地地 +5/+5
(R)死肉漁り ②闇 2/2
(R)豊穣のフェアリー 地水 1/3
(C)ドラゴンの卵 火 0/1
(C)麗城の衛視 ①光 1/2
(C)シャルリーヌの魔除け 地
(C)蒼穹の翼 ①風
(C)サファイアの首飾り ①
まずSRの闘士の肉体。
これは見ての通り、強力なエンチャントだ。
攻撃力と防御力に+5する以外にも、エンチャントされたモンスターが破壊された際に、闘士の肉体だけが墓地に落ちてモンスターは再生するという効果を持っている。
次にRの死肉漁り。
墓地にあるモンスターカードをゲームから取り除くことで、攻撃力と防御力を一時的に上昇させる能力を持っている。
Rの二枚目は豊穣のフェアリーだ。
任意の属性のマナを生み出す能力と、飛行能力を持っている。
Cの一枚目はドラゴンの卵だ。
火属性のマナをつぎ込むことで、カウンターが溜まっていき、一定の数以上になると4/4の飛行能力を持ったドラゴンに変身する。
Cの二枚目は麗城の衛視。
こいつ自身は特別な能力を持っていない。
麗城の~シリーズのモンスターであり、他のモンスターとセットで使うことで強化されるタイプのモンスターだ。
Cの三枚目はシャルリーヌの魔除けだ。
茨姫シャルリーヌにちなんだカードで、モンスターの拘束を行う呪文である。
Cの四枚目は蒼穹の翼。
これはモンスターに一時的に飛行能力を与え、攻撃力と防御力を上昇させる呪文である。
Cの五枚目はアーティファクト、サファイアの首飾りだ。
このアーティファクトからは毎ターン、水のマナが生成される。
デッキを組み直して、闘士の肉体を竜巻の拳闘士ザザに与えた。
見違えるように筋肉質に変貌したザザ。
これは怪しい。
しかし強力になったザザはきっと頼りになることだろう。
疑惑の目を甘んじて受ける覚悟でいよう。
あとはサファイアの首飾りを俺が身につけることにした。
これは服の下に仕舞っておいた。
常に水のマナが周囲に溢れている状態になったが、魔術師のエドワールくらいしか気づかないだろう。
……まあ一番疑っているエドワールにバレるのは痛いが。
さあ問題のザザの変貌は受け入れられるのだろうか。




