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第8話
「出来たわ。でも、駄目だけど」
「お、お渡ししこよう。印刷してくれ」
「でも、自信がないわ」
「プロの作家でもあるまいし、気に病むこたあねえ。気軽に書き、気軽に出す。それでいいじゃねえか」
「そんなものかしら……」
不安とプレッシャーしか感じていない君詩。彼女にしたらいつ終わるとも知れない牢屋生活。続くのも困るけど継続しないということは……つまり死だ。残して置いたフランスパンの欠片をデスクから拾いハムっと噛む君詩。彼女はまったく味を感じていないだろう。しかし、栄養補給のためと自戒し、自己を内心叱責することでポジティブに物事を把握しようと意識する君詩。お尻を痛める椅子に座ったがやはり君詩には痛み以外のものは察知できなかった。