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第5話
まだ、万頭さんは帰ってこない。君詩は生きた心地がせず狭い牢内をウロウロする。不審人物みたいだ。お腹が痛そうに腹部を押さえている。ストレスは美肌にくる。君詩はまあ、死ぬかもだし、そこは諦念しようとか思索している。まだだろうか。時間は刻々と流れていく。君詩の表情は青ざめている。
「うー、どうしよう」
かつんかつんと靴音が牢内に届いた。どこかゆっくりとした動作だ。君詩は両手で顔を覆った。ショートショート好きの王子様を納得させるのは無理だ。国内のショートショートを読み漁っている人なのだ。
彼女は膝をつきがっくりうなだれた。そこへ万頭さんがやって来た。
「残念ながら……」
「ああ……」
「……また書くようにということだ」
「え」