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第3話
「王子様のご指示だ、君詩よ。一編、ショートショートを書きあげよ……とのことだ」
「万頭さん、あの、まだまだ下手なのですが……」
「くははは。そんなことはわかっておる。そなたの精進をみたいのであろう」
「はあ」
私は仕方なくタイプしていく。パソコンの光が室内を照らす。旧型のパソコンだから見づらいし、反応速度も遅い。私は有名な詩を脳髄で反芻させてからショートショートをつづっていく。
「あと、五分だそうだ」
「で、できました! 処女作です」
鈍いプリンターで印字した紙を掴んで鉄製の格子の隙間から差し出した。万頭さんは意地悪そうに「くく、冗談だ」と言った。それを受け取った彼は暗がりの奥へ姿を消した。
「私、どうなるかな。死ぬ?」