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第2話
兵士たちが牢屋に粗末なデスクとパソコン、プリンター、紙、椅子を持ち込んだ。
「君詩、生きのびたくば、ショートショートを書くのだ。書いている間は斬首を先延ばししてやろう。面白ければ褒美をやろうとも」
「群読様、真ですか?」
「もちろんだ、二言はない」
君詩は決断した。まだ死にたくはなかったのだ。土下座したまま「かしこまりました」と言葉を返した。
〇
木製の椅子は君詩の華奢な体には辛かったが生き残るためせっせと書き始めた。彼女は勘案した。
『ノルマとかはないのかしら? 一日一本ということかな? それは流石に無理だわ』
旧型のパソコンに文字をタイプする君詩はどこか憂鬱気に牢番を見た。向こうは「む」と言い立ち上がった。やばい、怒られるかも、そ、それとも斬首? と君詩は震えた。
「君詩、ショートショートができたのか?」
「今書いているところです、すみません!」
牢番は白髪の老兵士だ。目つきが鋭く、名を万頭さんという。肉のそげ落ちた頬をゆがめ「くく」と笑った。何の笑いかしら。あ、侮辱されたのだ。 くーとか思う君詩。