カードバトル
テニスのときと同じく…カードバトルというものを
ほとんど知りませんでした
負けず嫌いの現代っ子
そんなイメージでした
今日もカードバトルに精を出す
自分の名前は実
この近所ではちょっとは注目されているような
連戦連勝が続いてたからね
ところが…ここのところまるで勝てなくなっている
デッキには…強力なモンスター
アイテムだってすごいのが揃ってる
成金の勝利だ…なんていうけど
結局勝てばいいと思うのは間違いじゃないと思う
ここのところの名誉回復のためにも
今日は勝たなくては…そんなことを考えながら会場に向かった
会場っていってもゲームセンターの隣にあるちょっとした
小屋みたいなものなんだけどね
「よお実…また来たな…」
ライバルの一人がこう口にする
「何度でも来るよ」
「負けが込んでもうやめちゃうんじゃね?っていうのが評判だぜ」
…今に見ていろ…そんなことを考えると集中出来なくなってしまう
ダメだ…集中だ…
そんなことを考えながらゲームに向かう
まずこれを…二番目くらいに強いモンスターを差し出す
「いきなりそう来るか…」
ライバルはそう言うが…どこか余裕を感じる
「こうこうするってね」
威力の弱いモンスターを複数登場させ…それを実のモンスターの
周りに配置する
少しづつHPを削る戦法だ
「これしきのことで…」ガードに集中するも…HPが…
「くそ…これなら!」
魔法の中でも1番強力なものを…
ところが強力過ぎる故なのか…相手に当たらず
「当たるとこれは怖いけど…当たらなかったねって」
魔法を使いHPも減ってきた…もうこのモンスターはダメか…
次にまた強力なモンスターを登場させる
「これで勝負だ…」弱気ながらも意気込んでみると
「同じ戦法は通用しないってね…」
ライバルがこう呟くと…また同じ形に
それからやり取りが続いたが…結局実はまた負けてしまった
「………」
「やっぱりもうやめたほうがいいんじゃね…」
ライバルもかつての負けが込んでたのと
それを打ち負かした優越感はあったけど
心境は少し複雑なのだった
帰宅するなりげんなりしてしまう実
「どうして…勝てない…」
そんなことを考えてると…テレビで将棋をやってるのを
父親が見ていた
「実どうした?元気が無いようだが…」
「そんなこともないけど」
「そうか…ならいいけどな」
それから黙ってテレビを見る2人
「そう…そこだ…」
将棋を指す棋手に感情移入してるのか…熱くなってる父親
「よし…」
どうやらひいきの棋手の勝利を確信したらしい
「やっぱりこの人の将棋はいつもすごいね」
「何がどうすごいの?」
「なんていうのかな…それぞれの駒の特性を掴み…」
難しくなってきそうな話だったので
「そう…とりあえず宿題してくる」
父親はまだテレビに釘付けのようだった
宿題と言いながら…やはりカードのことばかり考えてしまう実
「もうダメなのか…引退か…」
カードバトルで勝つことが…今のところ最大の喜びであったので
それが無くなると思うと…
「何だかなぁ…」家の中なのに遠くを見つめるような目をしてしまう
「何が一体いけないんだ…」
しばらく考えに集中する…そういえばさっきの将棋もカードバトルと
少し似てるな…
「それぞれの特性…」
実のカードは強力なモンスターばかり…でもこれで…
そんな強力なものでも…それぞれの個性というのは設定されていて
「特性…個性を掴む…」
「うん…今度はこれで…」
何か閃いたのか…違うことをするチャレンジで
また熱気も戻って来たようだ…前のめりになって宿題に取り掛かる実
「冷静になるのって…案外難しいな…」
そんなことを言いながら…1日が終わった
また会場に足を運ぶ実…だけど足が少し震えている
「今度負けたら…」
また別のことをやればいいさ…そう思うも…それはずっと前から
見つからないことに…
「とにかく…」
言いながら会場に着いた
「また来たか…」昨日のライバルが居た
「もう最後かもしれないよ」
こう告げる実に少し驚いたのか
「そ、そうなんだ…だからってでも容赦はしねえよ」
「うん」
「さあバトル開始だ!」
昨日と同じく強力なモンスターを登場させ
何だ昨日と同じじゃん…ライバルも驚きから呆れの感情に変わる頃
「それならまたこうってね」
昨日と同じく威力の弱いもので取り囲む
「何度やっても同じだよ…」思うも
実のモンスターが使う魔法は強力である…しかし
「え?当たった…」
魔法はいつもの直線ではなくカーブを描き
ライバルのモンスターを蹴散らしていく
「そんな…」
瞬く間にライバルのモンスターは倒れていき
いとも簡単に実は勝利した…かのように見えた
「また負けか…しかし一体どうなってるんだ?」
負けの屈辱より…そのからくりが知りたくて仕方ないライバルは
思わずそう口にしてしまった
「ああ…実はね…」
実のモンスターは確かに強力な魔法と膨大なHPを有し
向かうところ敵なしのようなものである
しかし…限界まで設定されたところまで魔法を使ってしまうと
それがコントロール出来ないという仕組みになっていて
強いモンスターを持ってるだけでは勝てないという
メーカーの配慮でもあった
「ついついこういうモンスターを使ってると…目いっぱいの
魔法で全滅とかを狙う…でもそうじゃなくて」
「そうじゃなく…」
「目いっぱい出来ても…それはほとんど使わないほうがいいってことさ」
出力を抑えた魔法は…ある程度その弾道をコントロール出来るように
なっている…これもまたメーカーの配慮であるのだが…
「力いっぱいやったら…やられちゃうんだ」
「そんなことって…」
聞いたことないような説明に…力を落とすライバル
しかし…
「じゃあ俺もちょっと変わったことやってみる」
「うん…また対戦しよう」
自分の思惑が大当たりだったので…ちょっとばかりの安心感を
覚える実だったが
「こういうことをやってると…真似されて…」
またの苦戦が待っているような…そう思うも
「それもまた考えたらいいさ」
今度は父親の説明も最後まで聞いてみよう
そんなことを思った実だった
おしまい
バトルに勝利しても…慢心しない実の姿勢は
見習うべきだと思いました
どのようなものにも…現実を生きるヒントがある
そんなことを考えてはみましたが…
読んで頂いた方…ありがとうございました