【幼女と聖剣】
中途半端になってしまって長くなってしまいました。
読み返しているときに自分が気付いた誤字脱字のみこれより前の回で直してあります。
改稿表記はそのためです。他にも誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
正面からの突入をリーシャが開始してから数分がたった。
目の前にある隠し通路の出口の奥はまだ静かだ。
「そろそろいくか」
俺は通路へと入った。
通路は狭く人数が多ければ身動きが取れなくなり尚且つ目立ってしまうということで団長である俺一人でここまで来た。
通路に入ると羽織っていたマントを脱ぎ魔法袋へ入れる。
魔法袋は空間魔術式を刻印された袋で効果ではあるが、容量が見た目の数十倍、さらに高価なものでは数百、無限といったほど内容量が高いため冒険者から商人、騎士団までに様々な場面で使われる袋だ。その中でもこれは比較的安価で手に収まるほどのものだがその容量は大きめのバックほどにはあるだろう。
魔法袋をしまうと通路の奥を見る。そして違和感を感じた。
「見張りが、いない?」
ショーンの話では、入り口付近に二人、奥に6人ほどいたということだが…
今見えるこの通路には人のいる気配が全くしない。
「正面が襲われたから向こうへと戻ったのか?」
そうだというのならあまりにも愚かだ、いくら発見されてない通路とはいえ見張りすらおかないなど。
彼らは仮にもリュート国の衛兵を巻いていた者たちだ、だとすれば罠か?それとも何か騎士団の襲撃以外の何かがここで起こったか。
「いずれにせよ、行くしかないな」
自分の力を過信しているわけではないが、多少の罠なら看破できる自信がある、解除ではなく防御力と攻撃力での突破という方法だが…
警戒しつつ奥へと進み潜伏先まであと少しとなったとき、突如前方から大きな魔力を感じた。聖剣が魔力を放ち光り始める。
「なんだ、この魔力量は!?」
13の時倒した魔王とは比べ物にならないほどの圧力に聖剣を握る手に力がこもる。
「誰かと思えば、勇者殿ですか」
前方にフードを深くかぶった人物が見えた。声とフードから見える長い黒髪から女だとは思うが、その声、その体から発せられる圧力は異常だ。
「失礼しました。魔力を抑えることを忘れていました。さぁこれで話すことができるでしょう」
圧力が消える。
「お前は?その魔力、人族ではないな?」
やはり、これは罠だったかのかこれほどの魔力の魔族がいるなんて、俺ですら勝てるかどうかわからない。
応援を呼ぶか?あの魔力量だ地上部隊が感知できないわけが…
「応援を期待しているのであれば、それは不可能でしょう、ここは少々特別で外に魔力を逃がしにくいので外にいる
あなたのお仲間は感知することはできないと思いますよ?」
「信じろと?」
「ええ、今はあなたと敵対する気はありませんから。これからのことはわかりませんが」
そういうと彼女はこちらにゆっくりと近付いてきた。薄暗く見えづらかった首から下がだんだんと見えてきた。
「?!」
ずりずりという音に目線を下げるとまとったマントは真っ赤に染まり、その手には見張りの盗賊であろう頭をにぎっていた。
引きずる音はその胴体が地面をこする音だったようだ。
「あぁ、これですか。少々我々の若いやつらにそそのかされて、いたずらをしていたので、お仕置きをしていたのです。あなた方が優秀なおかげで今回は楽にすみそうです」
「俺らを利用したのか?」
「まぁ、そうなってしまいますね、衛兵さんたちは役に立たなかったので今回はこちらに来て静かにつぶす予定でしたが。
その必要もなかったようですね」
聖剣を見てにやりと笑う。手に持っていた頭をはなしこちらにさらに近付いてくる。
圧力はもうないが聖剣が危険だと、訴え続けている。
「それでは、さようなら」
そして、俺の横を通り過ぎた。
「まて!」
固まっていた体を無理矢理動かし後ろを振り返る。が、そこにはもう姿はなく、洞窟内に俺の声だけが響いた。
先ほどまでのことが夢かのように静まり返る洞窟に転がる見張りの死体が、夢でないことの唯一の証明であった。
少し呆然としていたが、今の状況を思い出し、魔族の女が歩いてきたほうへと向かう。
しばらくいくと何がが積み上げられているのが見えた。
「うっ」
そこには顔をつぶされ腕が吹き飛んだモノ、高温に焼かれ炭のようになったモノ、何かに食いちぎられたかのように上半身のないモノ。
様々な死体が積み上げられた。
さきほどの魔族がやったのであろう、何度か戦場へと出て、魔族領での戦い生き死にには慣れてしまったつもりっだがこれは。
「あまりにもひどい」
こいつらが彼女を怒らせたのか?もしくは彼女の人殺しの趣向なのか。
判断はつかないが、今は、先に進もう。
その山の隣を通り過ぎまた少し進むと扉が現れた。扉の向こうからは戦いの音がかすかに聞こえてくる。
深呼吸をし、一気に扉を開ける。
「団長!」
部屋に入り前方から向かってきた、敵の首飛ばすとリーシャが、やってきた。
「あ!」
「え」
リーシャが驚いた顔をしたので困惑する。
「どうした?」
「それ、ここの頭のようです、生け捕りにしたかったのですが」
リーシャが何をやってくれてんだという目でこちらを見る。
「す、すまない。とにかく制圧を進めるぞ、リーシャ、戦況を」
「上の階は制圧が終わっています。残りの敵は奥の部屋に向かいました。違法奴隷ですが、確認できたものは二階に10人、3階に5人です。あとは奥の部屋はまだわかりません。牢には鍵がかかっていましたが恐らく」
そういうとリーシャは商人の服を探り鍵束を取り出す。
「おそらく仲間も信用してなかったんでしょうね」
こちらに鍵束を見せる。
「リーシャ、それを使い違法奴隷を保護せよ、その後こちらに合流せよ」
「は!」
リーシャは騎士団を引き連れ上の階へ向かう。
それを確認した後、俺は奥の部屋へと向かう、そこには隊長の1人の中年の騎士アルノーがいた。
俺をみたアルノーは手を挙げながら近づいてきた。
「レイン!お疲れさん!」
「アルノーさん、せめて作戦中は呼び方だけでも団長にしてください」
「しかたねぇな」
そういって頭を掻く。
魔族領に行く際にこの人のところに弟子入りして、今も時々剣術を教えてもらってるので、あまり強く出られない。
それは向こうもわかっているようで、話し方は粗野ではあるが、こちらを尊重し、おかしな命令でなければしたがってくれる。
「団長、敵は中にこもってる。今から突撃するぞ?いいな」
「あぁ、俺も行く」
「よし、ドアを開けたと同時に敵に向け攻撃魔法展開、その後突入だ」
隊員に命じたあと扉の前に構える。
「いけ!」
ドアが開かれ魔法が撃ち込まれる。中にいた盗賊たちから悲鳴が上がる。
「突入!」
アルノーさんが命じると同時に俺たちは部屋へと突入した。
瞬く間に制圧を完了した。盗賊の頭も捕獲することができた。
「つかまっていた人はどうなったんだ?」
アルノーは平民出身なため奴隷制度をあまりよく思っていないため少し声が荒くなる。
「大丈夫だ上の階にいた人たちはリーシャが保護している」
「リーシャか、なら安心だ。向こうに階段があった。見てくるよ」
そういうと階下へ向かう。最近子供が生まれたらしく、子供すらも無理矢理奴隷へと落とし売り飛ばす盗賊らに思うところでもあるのだろう。
すると下の階から声が聞こえた。
「ここにも扉があるぞ!」
近くの部下にリーシャを呼ばせ、俺も地下へと向かった。
降りるとアルノーが焦った表情で扉を開けようとしていた。
「団長、どうやら鍵がかかってるみたいだ、奥に子供がいる。助けてやらねぇと!」
「落ち着け!鍵束は先ほどリーシャが回収した、すぐここに来る」
怒りに我を忘れかけてるアルノーさんを落ち着かせるため、強い口調でなだめる。
「す、すまん」
アルノーさんははっとして頭を下げた。
俺は。肩を叩くと監視窓を覗き込む。
そこにいたのはかわいい女の子だった。歳は十にも満たないほどで長いことここにいたせいか、顔も服も少し土によって
汚れているが、それでもなおそのうちに秘める美しさがわかった。
彼女は衰弱しているのか、焦点の定まらない目でこちらを見ている。
「俺たちが来たからもう大丈夫だよ。もう少しで出してあげるから」
不安にならないようにと、声をかける。するとうなずいてくれた。
どうやら、意識はまだあるようだ。
「団長!鍵を持ってきました!」
リーシャから鍵を受け取ると、扉を開ける。
それと同時に倒れてしまった女の子に駆け寄る。
「おい!大丈夫か?…」
どうやら眠っているだけのようだ。
「団長その子は?」
「眠ってるだけのようだ。この子は俺が連れて行こう。」
その子を背負うと返事を聞かずに歩き出す。
「ですが」
「医者を呼べ、俺たちの拠点で休ませる、ここのことはリーシャ、頼む」
反論を仕掛けたリーシャを止める、この子をほかに任せるわけにはいかない。
その体に触れた時、一瞬ではあるが魔力を感じた。
洞窟であった魔族と近い質の魔力を。
聖剣が魔力を放っているのがわかる。
洞窟の魔族、この少女、これからのことに不安を抱きながら岐路へとついた。
数日間、ロリコンと呼ばれるようになるとはこの時は思ってもいなかった。
レイン「俺が連れて帰る」
~部隊内にて~
「団長が幼女に惚れて、反対押し切ってここに連れ帰ったらしいぞ!」
「しかもつきっきりで看病しているらしいぞ」
「浮ついた噂はなかったが、そうか団長はロリコンだったのか」
~その後団長室にて~
アルノー「よッ!ロリコン団長さん!」
レイン「!?」




