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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
8/42

【前夜】

騎士団のターン!!

日も落ち、街に明かりがつき始めるころ、俺は騎士団の拠点の団長室にいた。

俺の父が統べる、我が国リュートは大陸の北西に位置する王国であり、その国力は大陸において、二大勢力の一つとされている。

この国の成り立ちは、神と魔神との戦いであったといわれている。第1次人魔戦争にさかのぼる。

突如現れた魔の神とも呼べる魔王ヨハネ・リート、それと同時期に現れた魔族により我ら人族は、蹂躙された。

だが、神の啓示を受けたものが砦を築き、人族につく魔族もあり、彼らの助力により長き時を経て、勇者による魔王討伐はなされたらしい。

このことは、諸説あり、愚かな人間への天罰だという者もいるが、真偽は定かではない。

その時の勇者がこの国の初代の国王、始まりの勇者であるリュート・フォン・センである。

俺の祖先でもあるのだが、なぜらしいという曖昧なものなのかというと、その後の人族に一部の魔族が紛れての大戦争によるものだ。

この国はその時に国土を広げたが、どの国も多大なる被害を出した。

その時に資料も、それ以前の研究、人材、ほぼすべてがなくなってしまったのだ。

その後、魔王と勇者は定期的に現れている、魔王の危機に脅かされているときは力を表面的には合わせているのだが、

一部の国同士では、魔族の誕生の間に戦争がたびたび起きている。

魔族領との国境から離れている国は、よりこの傾向が強い。

そしてこの国もその例外ではない。

今期の魔王は、倒された。他ならぬ自分、レイン・フォン・センによって。

そうして猶予期間に入ってから二年後、隣国が宣戦布告してきたのだ。

俺は13の時に勇者としてパーティーとともに、魔王を討伐した。

その結果いつものように攻めてきた領土を退き魔族は魔族領へと戻った。

このことが魔王を討った証拠だと、人は言うがあまりにもあっけない今までの討伐もこうだったのか?

資料と比較してもこれは早すぎる。あれは、本当に魔王だったのか?

玉座に座る魔王と名乗っていた魔族の不敵な笑みが脳裏にちらつく。

何故このような疑問が出てくるのかというと、隣国の宣戦布告が不自然なのだ。

その国の名はトイフェル、国力は我が国の半分にも満たない。

そんな小国が勇者のいる国に、それも大陸屈指の王国に宣戦を布告したのだ、後ろに魔族の影を見ずにはいられない。

歴代の魔族がこのような謀を行ったという記述はないが、警戒しなければならない。

俺は、この国を継ぐ王子なのだから。

そう決心を固め、報告書に目を通す。

すると、団長室の扉がノックされた。

「リーシャです。違法奴隷の件で報告に上がりました」

「リーシャか、入っていいぞ」

「は!」

扉が開き金髪を短く切りそろえた女性が入ってくる。

彼女の名はリーシャ、俺の側近であり、騎士団の副団長を務めている。

年は俺と同じ15歳でありながらその力は強く、剣士としても魔術師としても優秀だ。きれいな白金の髪を短く揃え、その体は日頃の鍛錬で引き締まっている。

容姿もよく、美少女と言われる類だろう。少し、融通の利かないところもあるが、その根はやさしい子で団員の中でも彼女を慕う者は多いらしい。

「報告します!」

俺の前に立ちリーシャが報告を始める。

「先日、クル村を襲った盗賊と、その時捕らえられた違法奴隷および、商人の所在が判明しました」

この大陸には奴隷がいる、それは大きく分けて三つ、一つは犯罪により奴隷となった犯罪奴隷。

そして金銭的な事情などで、奴隷として売られた者たちだ。後者は法によりその扱いが細かく決められており、人権もある程度認められている。この法は、国を問わず決められており、奴隷制度のある国は必ず守らなければならない。

そして、もう一つこれらの法を無視し、無理矢理奴隷にされ売られる違法奴隷だ。

裏での取引ゆえにその結末は悲惨なものが多く、盗賊に襲われた村の者たちや行方不明だったものが無残な死体となって見つかることもあった。金持ちのおもちゃか、生贄か、いずれにせよろくな扱われ方はしない。

先日、戦争により警備が手薄になってしまった村が次々と盗賊に襲われ、その村の生存者の報告によると村人が数人ずつ、各村から誘拐されたということだ。何度か商人の潜伏場所にこの国の警備隊が突入しているのだが、もぬけの殻か、奴隷がそもそもいないか。

確たる証拠を得られず、救出すらできずにいたのだ。

事態を重く見て、戦線には出ていない俺の騎士団が調査をしていたのだが、先日クル村が襲われたとき状況確認のため先行した隠密の得意な騎士団員が奴隷を買う商人と盗賊がともに動いているのを発見し、追跡していたのだ。

「よくやった、気付かれてはいないだろうな?」

「ショーンの報告によると、警戒はしているようですがばれてはいないようです。今まで何度か衛兵らが取り逃がしている連中とは思えません。

本命を隠すための囮の可能性もありますが、民を見捨てるわけにはいきませんし行くしかないでしょう」

「それについてだが、タレこみで隠し扉があるという情報が入った。確認したが事実のようだぜ」

突然声がして後ろを振り返るとフードを被った男が立っていた。

「ショーン、入るときは声をかけろと、何度も言っているだろう。他に示しがつかんぞ」

「いいじゃねぇか、どうせ誰にも見られないように入ってきてんだし」

「その言葉使いもだよ」

ため息をつく、この男はショーン、諜報部隊唯一の団員だ。

優秀なのだが、あまり素行がいいとは言えないのが玉に瑕だ。

自他ともに認める女好き、出会った女はとりあえず口説けが座右の銘らしい。

「それで、その情報の出どころは確かなのか?罠とかはなかったのか?」

「それがよ、いきなり声をかけられて情報だけ渡されたんだよ。怪しいと思ったが本当だった場合一網打尽にするチャンスだからな。

罠も含めその隠し通路全部調べたよ」

「で、その結果は?」

リーシャが聞く。

「罠の類は皆無、監視は数人しかおらず、恐らく本物だろうな」

「出来すぎですね」

「いよいよ、囮の可能性が出てきたな。動いてみて様子を見るのも手だな。

明日潜伏場所に踏み込むぞ、正面はリーシャが率いて内部の制圧を、俺は隠し通路から入り込む。ショーンはこの街を見張っておいてくれ」

「は!」

「あいよ」

各々は返事をすると部屋を後にする。

二人が出て行ったのを確認して、自分の剣を取り出す。

神話と呼ばれた時代、魔王を屠ったとされる聖剣が仄かに光っている。

何かが迫っていると俺に告げるかのように。

レイン「まだまだ、俺のターンは終わっちゃいないぜ!」

レイン「ドロー」(ページをめくる)

てなわけで次の更新も騎士団回の予定です。


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