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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
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【救出】

意識が戻ったとき、視界は歪んでいた。

冷たい床に寝かされ、体は燃えるように熱い。

歪んだ視界の中見えるのは、牢のような場所、目線を上げた先には鉄の扉。

下のほうに、食事を出し入れするのであろう扉があり、上のほうには監視のための窓があった。

壁にある小さな窓を見ると、明け方なのか外は、少しずつ明るくなっていく。

「ぐぅ…あぁ…はぁはぁ」

生前の声からは想像もできないような高い声でうめく。

どうやら本当に女として生まれ変わったらしい。

そう認識した瞬間襲った激しい頭痛に無意識につぶやく。

「なに、これ?」

自分の口調に違和感を覚えつつも、突如脳内に浮かんだ記憶に戸惑う。

流れ込んでる記憶は、小さな村での出来事。生まれてすぐ、きれいな母親と父親に抱かれる記憶。

私は最初の人生と同じスイと名付けられた。

両親との穏やかな生活。戦争が始まり戦場へ出た父親の戦死の報。

泣き崩れる母親。戦争のため警備が薄くなった村を襲う盗賊。

燃える家、背中に何度も剣で切り付けられながら私を守り、命を落とした母親。

あまりの光景と高熱に噦くが、ここへ来てからこの体はろくに食べてないのだろう、胃液がぼたぼたと口からこぼれる。

「ごほっごほっ」

咳込んでいると扉の向こうから声が聞こえた。

「これは、だめだな。薬師にもわからず、治癒魔法も効果がない。あの容姿だから、高く売れると思って治療をしてみたが全くのムダ金じゃねぇか」

「旦那もついてないですね。いい奴隷を手に入れたと思ったら。次の日には原因不明の高熱とは」

おどけるような、男のいいように、旦那と呼ばれた男が舌打ちする。

その二人の声に思い出す。こいつらは非合法の奴隷商人と盗賊だ、

この大陸には奴隷制度がある、村にいたころにも見かけることがたまにあった。

合法化され犯罪奴隷などではない限りは最低限の人権は確保されるが、こいつらは盗賊と手を組み。

襲った村の住人を買っているようだ。声から予想するに旦那と呼ばれたのが奴隷商人、商人と話しているのは、俺を売り飛ばした盗賊のようだ。

「でもよ、変な病気だったら危険だぞ。さっさとつぶして埋めちまえよ」

「あぁ、今日の夜処理する予定だよ」

「それならいいがな、夜が明けて間もないのに王子直属の騎士団が動いてたらしい、嫌な予感がしやがるぜ」

靴音を響かせながら声が遠くなっていき、そして聞こえなくなった。

それからしばらくたち先ほど、熱も下がり、頭痛もなくなったため、起き上がれるようになったのだ。


「はぁ」

これまでの経緯を思い出しまたため息をつく。

空腹もそろそろ限界で、力が入らない。

首輪も外してみようとしたがへんに触って、爆発でもしたら胴体とさようならしてしまう。

だが早く、脱出しなければとだるい体を持ち上げまた足枷を引きずり牢の中を調べる。

どこかに穴は空いてないだろうか?

昔から使われていたのなら、脱走しようとしたものが穴を掘っているかもしれない。

その考えはすぐさま否定される。どうやらこの牢屋、内側向けてに防御術式が使われているらしく。

並みの力では破壊できないようになってあった。それどころか自動修復能力もあるようで、

これでは穴なんて掘れないだろう。動き回ったことで、疲れてしまった俺はまた壁を背に座り込んでしまう。

そのまま扉をじっと見つめ、ほかに手はないかと考える。

このままでは夜になってしまう。

商人は夜につぶすと言っていた。つぶす、つまり殺して処分するつもりなのだろう。

金にならない上に違法な奴隷だ、長く持っていると問題になる。

それまでに何とか、この状況を打破しなくてはならない。

だが空腹で回らない頭では、いい案など見つかるわけもなく、扉をずっと眺めていると。

急に牢の外があわただしくなった。

「襲撃だ!」

どうやら何者かがここを襲っているようだった。

外から悲鳴がたびたび聞こえてくる。

こんな商売をしているのだ、どこかで恨みでもかっていたのだろう。

もしくは今朝盗賊の男が言っていた騎士団か?

そっちのほうが可能性はあるな。

すると首輪が急に外れて圧迫感がなくなる。

この首輪が外れる条件は二つ、主人が奴隷を開放したときか、もしくは主人となる者――俺の場合は商人――が死んだ時だ。

首輪を拾う、壊れた様子はなく先ほどの推論のどちらかが起こったと、判断する。

この状況で、首輪を外す理由がまるで見つからない、それならば後者の可能性が高い。

「旦那は騎士団にやられた!俺らもずらかるぞ!」

やはり後者だったようだ。

今朝ここにきた盗賊のリーダーの声が響きその場にいた男たちが階段を昇っていく音が聞こえる。

が、すぐにその音はやみ、足音は悲鳴に変わった。

何が起きているか把握しようと必死に耳を傾けるが、空腹により集中できない。

なおも悲鳴は続き、階段をころげ落ちる音が聞こえる。

限界が近付いてきたようでふらふらしてきた。

すると、ぎしぎしと警戒しながら階段を下りる足音が聞こえてきた。

向こうから来ているということは騎士団の勢力か。

「ここにも扉があるぞ!おい、聞こえるか?!今助けてやるからな!」

扉のすぐ前で声がする。見上げると上の監視窓から騎士らしき男が覗いていた。

この騎士団に保護されても大丈夫という保証はないが、盗賊の下よりかは

安心できるだろう。視界は霞んでいてよく見えないがドアを開けようとしているのがわかる。

「団長、どうやら鍵がかかってるみたいだ、奥に子供がいる。早く助けてやらねぇと!」

「落ち着け!鍵束は先ほどリーシャが回収した。すぐにここに来る」

若い男の声が、焦る騎士をなだめる。

力が抜け見上げるのもしんどくなってきた顔を下げると前髪が垂れより一層視界が狭くなる。

すると、若い男が次は声をかけてきた。

「俺たちが来たからもう大丈夫だよ。もう少しで出してあげるから」

男の声に小さな首肯で返す。

「団長!鍵を持ってきました!」

女の声が聞こえると、ガチャッという音が扉から聞こえた。

やっと開いた。

霞む視界に映る重い扉がゆっくりと開かれ、金髪の男が入ってくるところで、また俺は意識を失った。

脱出ルートを2ルート考えていたのですが。

悩んだ末こちらのルートにしました。

次回は騎士団の誰かの視点で進めたいと思います。

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