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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
40/42

【魔王とは】

更新が遅れて申し訳ありませんでした。

次話更新です。

化け物だった。

幼いころ憧れ、畏怖した魔王様をもはるかに超えるその魔力に声一つ出せなくなる。

失った両腕を忘れてしまうほどのその強大さは、かつて嫌悪感と劣等感を植え付けられた旧魔族どもを思い出させた。


「ほう、その年でそれほどの魔力を内包するか。将来が楽しみだな」

そういって頭を撫でるのは先代の魔王様、憧れの存在であった彼やその側近に認められることはとてもうれしかった。将来の魔王として期待され、俺が城へ通うのに時間はかからなかった。

憧れの存在に戦い方や魔力の使い方を教わり、俺は確実に強くなっていった。そこら辺の魔族には負ける気がしなかった。勇者にもこれなら勝てると、そんな自信すら芽生え始めていた。

そんな時だ、あの化け物どもをみたのは。

いつもより早く家を出た俺はいつもと違う様相の城を見た。

門を守る魔族も中にいる魔族も皆一様にぴりぴりとしている。

せわしなく城内を走り回る魔族の顔には一つの余裕もない。

何より城外からでもわかるほどの強大な魔力が城内から感じられた。

俺は魔王様をはるかに超えたその魔力が恐ろしかった、

俺の憧れの存在が踏みにじられるような予感を抱きつつも、それを否定したい一心で俺は魔王様の下へ向かっていた。

謁見の間に着いたとき人払いをしたのかいつもならそこにいるはずの見張りがいなかった。

念のため認識疎外の魔法を展開しながら俺はゆっくりと扉を開き中を覗き込んだ。


そこには見知らぬ女魔族(化け物)に膝をつく魔王様の姿があった。


俺が憧れ目指してきたものはそんなものなのか、小さく見えてしまう魔王様の姿に俺の心は大きく揺れた。

あのような化け物がいるのであれば人族など蹂躙できるだろうに、なぜ奴らは戦場へと出ないのか?

奴らがいるのであれば我々魔族の存在意義とはなんなんだ。

いくつもの疑問が生まれ答えの出ないまま時間は過ぎていく。

「勇者が誕生したようだ」

化け物が口を開く。

「ついにこの時が来てしまいましたか、ダバルをお願いします」

魔王様はそれに応え頭を下げる。

「ダバル?ああ、あなたが気に入ってるという坊やですか。素質があるならすべてが終わった後面倒をみてあげましょう」

化け物は興味もなさげに冷たく平坦な声を響かせる。

そこからはうろ覚えだ。まるで、魔王様が死ぬことが決まっているかのような口ぶりに心が揺れ。

展開していた魔法がわずかに崩れた瞬間化け物と目があった。

その冷たい目に恐怖し、俺は逃げ出してしまったからだ。

それ以降俺は城へ行くことはなくなった。

次に城へ訪れたのは魔王様が倒され、次代の魔王候補として城へと呼ばれたときだ。

謁見の間にいた化け物はかつてのまま冷たい声で話しかけてきた。

「やはり、あの時そこにいたのはあなたですか、次代の魔王はあなたに決まりそうですよ」

王座には座る素振りを微塵も見せないにもかかわらず、魔王となる、将来の上司となる者に対しての対応にしてはいささか冷めすぎてはないだろうか。

「申し遅れました。私はクロネ、初代魔王ヨハネ様より魔王の補佐を申しつけられたものです」

あぁ、あくまでも補佐であり、俺の下に就くわけではないということか。

名を聞いたことしかない初代魔王、もはや伝説上の物語としてしか語られぬ程度の存在に俺たち魔族は負けるというのか。

「あぁ、よろしく頼む」

俺は、それが悔しかったのか短く返した。

それが気に食わなかったのだろうか、クロネはその無表情を少しだけゆがめると言葉を続ける。

「まぁいいでしょう。どうか魔王の誇りを汚すことなくその役割を全うしてください」

「役割?」

「ええ、これから役割についてお話しいたしましょう」

クロネはまた淡々と魔王と魔族について語る。

「なんだと!?それでは俺にこの世のために勇者に殺されろというのか!?」

「そうは言っていません、時がくれば勇者と刃を交えよといっているのです」

「そなたらが行けばよかろう?!それほどの力なら簡単に屠れるではないか」

「ええ、できるでしょうね。でもそれでは意味がないのですよ」

「俺が、勇者に殺されることに意味があると?」

「いえ、あなたが勇者と戦い、決着をつけることに…」

「もうよい!」

クロネの話を切り外へ出る。

冗談ではないそれでは魔族は、人族たちのためにあるようなものではないか。

誇り高き魔族が何故あの程度の劣等種族のために死なねばならんのだ。

「明日またここにきなさい。戦うための力をつけてあげましょう」

後ろから声をかけられたがその声を無視し、俺は帰路へと着いた。

次の日からクロネの手は借りず強くなろうと努力した。

人族を滅すための力を得ようとした。

だが、魔王になっても俺に身についたのは先代の劣化版程度の力に過ぎなかった。


だから、だからこそ俺は頭を使い自分の長所を生かし、策をもちいてあの時逃げ出した。

身体の一部を隠し生き延びた。

そして今日、勇者(やつ)の後ろ盾をなくし、クロネが殺さなくとも少しずつ力を削ぐことができる作戦だったというのになんなんだこの状況は?!


「さて、お待たせしてしまって悪いね。坊や」

振り向いた化け物はその恐怖すら覚えるほどの美しい顔で微笑む。

俺は声も出せずに足をばたつかせ惨めに後ろへ這いずり下がる。

ふざけるなふざけるなふざけるな

こんなところで死んでたまるか、人族なんかに負けるわけにはいかないんだ。

そうだ、腕は切り飛ばされているはず安全な場所に腕は這わせていけばバックアップとして十分なはず…。

「あぁ、腕に期待をしても無駄だよ、聖なる炎によって切り飛ばされた腕はもう燃え尽きてしまったよ」

一度目の勇者との邂逅を思い出す、あぁあの時は自分で腕を切り落としたんだったか。

「私はね、魔王としての誇りを汚した君を許すわけにはいかないんだ」

その言葉に俺の恐怖はすうっと引いていき、次に湧き上がったのは激しい怒りだった。

「魔王としての誇り?人族のために潔く死を受け入れることが魔王の誇りだとでもいうのか?!」

淡々と魔王のたどる運命を語るクロネとその姿が重なり俺は激昂する。

魔族は、誇り高き魔族はあんなやつらのためだけに生きているんではない!」

相対する化け物は少し驚いたあと悲しそうに口を開いた。

「そう…クロネが言ったのかい?」

なぜ?なぜ化け物(こいつ)がクロネのことを知っている。

「そうか、私の最期は、最後の言葉は彼女だけではなく、君たちまでも縛ってしまっていたんだね」

すまないね、そうつぶやいた彼女の瞳には哀れみが、いや慈愛すら感じられた。

ようやく更新することが出来ました。

三周目の幼女もあと少しで一旦終わる予定です。

次話投稿の予定も未定ですが、あと少しお付き合いいただければ幸いです。

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