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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
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【終戦へ】

「俺は人族の中じゃ若造って歳でもないんだが…」

頭を掻きながら苦笑いを浮かべる男を見つめる。

精神操作されているとはいえシンをここまで追い詰めるとは…

アルノー、ここ最近彼の国で活躍している人族か。

「コウ将軍、あなたは精神操作を受けてないようですね?」

先ほどまでのシンへの口調とは違い固い口調で問いかけてくる。

「あぁ、統率を行う必要があるからな」

それが俺の書いたシナリオ、この戦争俺たちに勝ち目はない。

いくら魔族の力を借りていようとも王子直属の部隊が勇者である王子ごとやってこられては勝てるわけがない。

ならば敗戦したとき責任を取る者が必要になる。

それは俺でいい、いくら後悔していようと国民を率いるべきはシンなのだから。

「なら、引いてくれませんか?明らかにそちらは不利だ、魔族の援軍も俺たちの部隊があらかた殲滅してしまったしな。」

「口調が崩れてきてるぞ若造?」

「これは失敬、めんどくさいからいうが、あんたたちは引くべきだ。統率していた隠し玉の魔族は王子と遊びに行き、そいつが率いていた魔族は壊滅寸前。

退くべきだ。」

アルノーはこちらを睨みつけそういった。

ただただ兵を殺すだけのこの戦争に指揮官として怒りを覚えているのだろうか。

彼を見ているとシンとともに戦場を駆けていた日々を思い出す。

アルノーのいうことはもっともだ。

もはや俺たちの軍はほぼいない。

魔族が辛うじて戦線を維持しているだけ、しかもあいつらは俺たち獣人の被害なんて考えやしない。

撤退を考え始めた時、突然シンが叫んだ。

「そんなことできるわけないだろぉおおおお!」

シンが大剣を振り回し突っ込む。

「まて!シン!」

急いで後を追いサポートしようと魔法を展開する。

「うるさい!」

「なっ」

隣へ出た俺をシンが腕で吹き飛ばした。

大きく吹っ飛び視界が回る、なんとか身体を起き上がらせたとき目に映ったのは軽々と攻撃をよけられ激昂するシンの姿だった。

「シン!」

吠え続けるシンはすでに怒りと精神操作にのまれもはやこちらの声など聞こえてないようだった。

「おいアルノー」

シンをひかせることをあきらめた俺は、アルノーに近づき声をかける。

若造ではなく名前で呼んだためか、アルノーは構えかけた剣をシンへと向け直し俺の声に耳を貸してくれた。

「なんですか?コウ将軍」

「この戦争を終わらせる。シンの意識を落として連れ帰る、手を貸してくれ。」

「虫のいい話っすね」

「すまない」

そういって俺は頭を下げる。それを見てアルノーは大きくため息を吐くとシンを見つめたまま口を開いた。

「わかりましたから頭を下げないでください。あなたたちは俺の英雄なんだ、胸を張ってください。一緒にシン王の目を覚まさせてやりましょうや」

「恩に着る」

アルノーの隣に立ちシンへと自分の刀を向ける。

「コウ…お前まで裏切るのか!」

シンの目が大きく開き、シンの身体は光に包まれた。

「なんだ!?」

アルノーが驚いた顔を見せる。

「あれは俺たち獣人の奥の手、獣化だ。スピードもパワーも大きく上がるぞ、気を付けろ」

獣化、大きく身体能力と魔力を上げる代わりに、理性がほとんどなくなる。

こうなってしまっては精神操作を破るどころではない。

「これはちときついなぁ」

アルノーが苦笑いを浮かべる。

「行けるか?」

俺の問いかけにアルノーは

「もちろん」

と笑った。

「ぐぁあああああああああああああ」

「来るぞ!」

シンが突っ込んでくる。

獣化により、より獣へと近付き、より一層大きなったその様はまるで大きな岩が突っ込んでくるかのようだ。

振りかぶった大剣が地面を割る。辛うじて左右別々に俺たちは回避する。

俺は回避しながら魔法を放ちシンを挑発する。

「裏切者がぁああ!」

シンはその挑発にのりこちらへと突っ込んでくる。

それをまた回避し、剣で攻撃する。身体強化されたシンの身体には、この程度では大したダメージにはならない。

何度も回避と攻撃を繰り返し時間を稼ぐ。

アルノーが力を貯める時間を。

シンは何度も無意味な攻撃を繰り返す俺の動きを疑うこともなく大ぶりの攻撃を繰り返す。

アルノーを回避の隙に見てみるとどうやら準備はできたようだ。

「シンこっちだ」

再度挑発を行いアルノーの間合いに入れる。

シンが飛び大きく振りかぶる。それに合わせあるのが斬撃を腹にめがけて放つ。

「くらいやがれええええええええ!」

大きな魔力を纏った斬撃が俺の後方から飛んでくるのがわかる。

シンの大剣を身体強化で無理矢理切り上げシンの身体へ向けての斬撃の道を作る。

空中で体をひねり斬撃をかわすと、それはシンの身体へと直撃した。

大きく巻き上がる砂と爆音がその衝撃の大きさを物語っていた。

「ぐあぁあ…ああ」

砂埃が収まりそこから現れたのはなおも大剣をこちらへ向け攻撃をしようとするシンだった。

「何っ!?」

アルノーが驚きの声を上げる。

アルノーの最大の攻撃でもやはり意識を削り切ることすらできなかったか。

力を使い果たし膝をついたアルノーを置き去りに俺は右腕に魔力を集め走る。

シン大剣が目の前と迫り俺は左腕を差し出し懐へと向かう。

「ぐぅ…」

俺の左手を大剣で受け吹き飛んだ。痛みで視界が揺らぎ、倒れそうになるが必死でこらえ懐へと到達した。

シンはその行動に驚き目を見開く、俺は先ほどアルノーが攻撃を食らわせたところへ魔力を最大に込めた掌底を打ち込んだ。

「がはっ」

シンは血を吐き膝をつく。

獣化がゆっくりと解けていき元の姿へと戻ってきた。

倒れてくるシンを右腕で受け止める。

「コウ…すまない…俺は…」

「もういい、撤退だ。負けたんだ俺たちは」

「そうか…」

どうやらようやく、精神操作が解けたようだ。

他の獣人たちも同様のようで、後ろの方でアルノーが指示を飛ばしているのが聞こえる。

耳を傾けるとどうやら魔族だけを攻撃対象にし、獣人の保護をしてくれているようだ。

「シン、帰るぞ」

「あぁ…」

シンはうなづくと意識を失った。

「コウ将軍!」

右肩にシンを担ぐ俺にアルノーが駆け寄ってきた。

先ほどまで膝をついていたというのにもうここまで回復してるとはさすがは精鋭部隊の指揮官と言ったところか。

若造は失礼だったな。

「あんた!左腕が!救護班早く!」

自らの治癒魔法で止血は済ませた。人族ではもう結構な年だというのに焦るアルノーを面白く思いながら

勇者のほうへと向かった、魔族の女のことを思い浮かべた。

勇者が負けるとは思えないが、あの女も普通ではなかった。

傷口は自身の治癒魔法と、アルノーの呼んだ救護班によりふさがった。

少しの不安を覚えつつも俺は戦争終結のため、残りの魔族の掃討へと向かった。

すごくお久しぶりです。ようやく続きを書くことが出来ました。

何個か上げるつもりでいましたが結局一話分しか書けなかったorz


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