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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
33/42

【リーシャの反撃】

予想した通りどうやら双子らしき色違いの魔族はもう一人の魔族に手出しを禁じられているようだった。

不服そうな顔をしながらも引くところを見るとあいつが指揮官のようだ。

「スイ!!どうして…いや、どうやって来たの!?」

リーシャの起こった声に思考を中断し、リーシャを改めてみる。

彼女の身体はいたるところを切り付けられていていた。

体力を随分と削られたらしく、肩で息をしている。

リーシャも魔族たちに攻撃の意思がないことに気が付いてるようで、注意はしながらも私に近づいてきた。

「開いている門があったからそこから回って」

我ながら苦しい嘘が口から出る。

確かにほかの門は空いてる可能性はあるだろうがこの状況で住民を出すとは思えない。

「そう」

だが、リーシャはどのようにして出たかをそれ以上聞いてくることはなかった。

「なんで来たのかとか聞きたいことはたくさんあるけれど、ここを切り抜けるのが先よ。これは最終手段だったんだけど…」

そういいながら首からきれいな羽の飾りが付いた首飾りを胸元から取り出し私に着け魔力を流す。

すると私とリーシャの周りに半透明の結界が作られた。

「これは歴代の勇者一行が持ってた首飾り、特大の上位魔法でも喰らわない限り破られることのない結界よ」

これを張ると中からは攻撃できないんだけどね。と付け加えリーシャが微笑む。

「じゃあこれをもって一緒に逃げよう?」

それならばと当初の目的を話す。だが、リーシャは首を振る。

「私は…。あいつを倒さなきゃ。妹の仇なの、一度目はレインに取られちゃったけど、もう一度チャンスが来たのよ。

だから行くわ、すぐ倒してくるからスイはそこで待ってて」

そういったリーシャは先ほどのまでの焦りがなくなっていて私は様子を見ることに決めた。




「話は終わったのか?」

いつの間に出したのかも分からない玉座に座りダバルが笑う。本当にいけ好かない奴だ。

「ええ、待たせて悪いわね」

「いやいや、別にいいよ、姉妹の美しい時間の邪魔をするのは悪いからね。しっかりとお別れは済ませたかい?」

本当の妹ではないことを知りながらダバルは気色の悪い笑い顔を浮かべながら話す。

「いいえ、その必要はないもの。私はあなたを殺してあの子と帰るだけだから」

先ほどまでの焦りがなくなったことで、心に余裕が持てた私は笑みを浮かべながらそう返す。

「そんなことできると思ってるのー?」

「そんなことできないよー」

先ほどまで黙っていた双子が交互にしゃべる。

「お前たち待てを解いた覚えはないぞ?」

ダバルが笑いながらたしなめる。

「だってもう我慢の限界だよー」

「たくさん我慢したよー」

「わかったわかった、いいぞあいつはお前らにくれてやるよ」

ダバルに言いよる二人をしっしと手で払いながらダバルは玉座に座りなおした。

「やったー」

「やったねー」

双子はこちらを見て鎌を構える。

「「さあ、遊びましょ?」」

「いいわよ、おいで」

笑う双子に笑顔で返す。確信があったから、今なら勝てるという確信が。

「むかつくなーさっきまで死にかけてたくせにー」

「イラつくなーよわっちぃくせにー」

「「さっさと死んじゃいなよ」」

二人が同時に左右から切りかかってくる。

私はどうかしていたようだ、アルノーさんに教わったことをわすれるなんて、こんな挟み撃ちをしただけの直線的な攻撃を喰らうなんて。

左からくるミルと名乗った魔族の鎌を片手で受ける身体強化は継続している片手で受けることなんて簡単だ。

右からくるルミと名乗った魔族の鎌を剣で受ける。

「「えっ」」

たやすく防がれたことに驚いた二人が声をそろえて驚き動きが止まる。

そのすきを逃さず魔法を発動させ、風の刃を二人にぶつける。

とっさにガードしたようだが、魔法の勢いによって二人は吹き飛ばされる。

同属性であろうミルは大したダメージではなかったようだが、ルミは風の刃に右肩を切り裂かれていた。

「ルミ!!」

「ぐぅ」

ルミは傷を抑えてうずくまる、傷は大きくまともに動けないらしい。ミルはその光景に動揺し、ルミを呼ぶ。

「よそ見してる暇なんてないわよ」

剣に風属性の魔力を纏わせルミに接近する。

「よくもルミをぉおおおおおお」

ミルも怒りのままこちらに接近してくる。この双子は見た目通り幼いのだろう、攻撃が単純だ。

それがいま怒りによってよりわかりやすくなっている。先ほどまでの私もこんな感じだったのだろうか?

なるほど、攻撃が当たらないのも当たり前ということか。スイに感謝しなくちゃね。

「甘い!」

鎌を剣で受け流しそのままミルの腹を切り付ける。

「ぐぅう」

だが、切った手ごたえはなく棒で殴ったような感覚が手から伝わった。

ミルは吹き飛び遠くへ転がる。

「隙あり!」

ミルが飛んだ方向とは逆方向から鎌が飛んでくる。

ルミのほうは治癒魔法も使えるのか。そんなことを冷静に考える。

「はっ!」

鎌を再び剣で受け止め、次は魔術式でルミの身体を覆う。

「おしまいよ」

魔術式が囲んだ範囲に無数の風の刃が飛び交いルミの身体を切り刻む、腕が飛び足がちぎれ首がとぶ。

数秒後、ルミはバラバラに切り刻まれ命を落とした。

「あとはあなただけね」

「ルミ…?」

ルミの死を受け入れられないのだろうミルは呆然として空中から地面へ落ちていくルミだった肉片を見つめていた。

その姿に自分が重なり罪悪感がわく。

「ごめんね、すぐに、あなたも送ってあげるから」

「殺してやるぅうううう」

ミルが膨大な魔力を開放する。風魔法を私の方に打ち出しながら突撃してくる。

私はミルに向け風魔法を一度打ち出してみる。だが、簡単にミルの風魔法にはじかれ消滅する。

「そんなしょぼい魔法喰らうわけないじゃない!!!」

やはり同属性では私の魔法の威力では通らないか、なら

私は魔力を高め再びミルに向け魔法を打つ準備をする。

「だから喰らわないってば!!」

ミルとミルの魔法が目の前に迫った瞬間私は魔法を発動させる。

「貫け<炎の矢>」

「火属性!?」

無数の炎の矢がミルの魔法ごと貫く。

四属性の性質上、風魔法を火魔法で打ち破ることはそう難しいことではない。

「なんで、風魔法使いなんじゃ…」

炎に貫かれ腹に大きな風穴を開けたミルが苦しそうにしゃべる。

「属性が一つしか使えないなんて一言も言ってないわよ?」

「ひきょう…もの…」

そう言い残したミルは炎の矢から燃え移った炎に焼かれやがて動かなくなった。

魔族は魔力と身体の融和性が高い分、属性ダメージをより高く受けやすい。

あれほどまでに見事に直撃しては持ち直すことはできなかったようだ。

これで余計な二人は消えた。あとは、

「あなただけね」

私はダバルへと剣を向けた。

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