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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
29/42

【レインVSグラ】

グラは先ほどの場所から少し離れたところへと移動した。

「ここらへんでいいだろう、ここなら俺たちが戦っても雑魚を巻き込むこともないだろう」

そういいながらグラが立ち止まる。

今更、周りへの心配だと?

先ほど味方であった獣人ごと焼き払った者の言い分とは思えない。

魔族が参戦したことを考えてもこの赤い魔族が味方を巻き込むことを心配するとも思えない。

ということはだ

「罠か」

「罠なんて、人聞き悪いなぁ。俺はただ俺たちの戦いに水を差されるのがいやなだけだよ」

そういいながらグラは不自然に横移動をしている。

こいつわざとじゃないのか…?

あやしい、怪しすぎる。魔族は好戦的になればなるほど馬鹿になるという噂があったが、あながち間違えではないのかもしれない。

なんて馬鹿なことを考えている場合ではないな。

ここに連れ出されたのは十中八九罠だ。ならばどのような罠が仕掛けられているかだ。

俺は聖剣に意識を集中させあたりの魔力を探る。

そのしぐさに気付いたのか、グラが慌てる。

「ま、まて!だから罠じゃねぇっていってるだろ!?おい!探知やめろ!」

頭の悪そうな発言に頭が痛くなってくるが、我慢して探知を続けているとすぐに罠の正体に気付く。

グラの向かっている場所を避けたあたり一面に中級の攻撃魔法の魔法陣が地面の下に埋め込まれていた。

すぐ発動できるようにあとは魔力さえ流せば発動するようにしてあるようだ。

「ちっ!だからこんな面倒な事いやだって言ったんだよ!着地地点ミスるしもうめんどくせぇ、死ねぇ!」

俺が気が付いたことを察してこちらへとグラが攻撃を放とうとした。

発動位置であった場所はグラが飛び出したところのすぐ隣だというのにだ。

こいつ場所忘れたんじゃ…

グラの攻撃を聖剣で受ける。

相手の剣は炎属性の付与魔法がかけてあるらしく熱気が伝わる。

俺はグラを左に受け流すと魔法陣の隙間に飛び込む。

「自分達の魔法に焼かれちまえ!」

そういいながら地面へと手を着き魔力を流す。

するとただの平原に俺の周りを除いて周りが魔法陣に埋め尽くされる。

その瞬間魔力が想像よりも持っていかれることに気付いた。

「なんだと!?」

「はは!かかりやがった!」

俺は魔法陣に目を凝らす、すると魔法陣をつなぐ回路に無駄なものが多くあることに気が付く。

「さっきまでの馬鹿な行動も演技か?」

「そうだよ馬鹿が!てめぇの魔力を削ぐための作戦だったんだよ!」

グラが叫ぶ。

魔力はさらに吸収されていく、途中で止めては魔法陣が崩壊しこちらにダメージがかえって来るので止めるという選択肢はない。

ならば、俺がとる選択肢は一つ。

「なめるなよ?」

あたりにちりばめられた中級魔法が発動するまで魔力を注ぎ込んだ後回路を構築しなおす。

グラの周りの魔法陣の回路は残したまま供給を続け、威力を上げつつ新たにその魔法陣に直線の魔力の通り道をつなげる。

中級魔法が発動しグラの周りと俺の周り以外の近くの平原から轟音を響かせながら火柱が上がる。

「なに!?」

他の中級魔法が発動しているのに自分の周りだけ発動しないことにグラが驚く。

「くらえ!」

直線の回路から送り込まれた膨大な魔力を受けた中級魔法を発動させる。

魔法陣自体が小さいため魔力を込めても無駄が多く魔力を少し多めに持っていかれたが、これで上級魔法並みの火力にはなったはずだ。

「中級程度なら耐えれると考えたんだろうが、これならどうだ!?」

先ほどより大きな音をたてグラの足元から火柱が複数上がった。

「ぐぅううああああああ」

グラの悲鳴が轟音の中に混じる。

火柱が収まった後、煙の中から体から煙を上げるグラが姿を現した。

「ちくしょうがやってくれやがったな」

グラの想定していたよりも大きなダメージを負ったのだろう、その顔は悔しさで怒りに満ちた表情をしていた。

「てめぇ!ぶっ殺してやる!」

「その傷で俺を倒せるとでも思っているのかい?」

「確かに思ったよりも喰らっちまったが、あれだけの魔法を使ったんだてめぇの魔力もかなり消耗して…え?」

グラが言い切る前に自分の魔力を操り聖剣へと流し込む、その姿を見てグラが困惑する。

「なんでだ!周りの中級魔法の発動式だけでもかなりの量なんだぞ!?それに加え中級魔法の威力をむりやり上級魔法まで上げたんだ!普通の人間ならとっくに魔力切れを起こしてるはずだろうが!」

「普通の人間ならな?」

あれくらいの魔力なんて微々たるもの、あれをもう数回、いや数十回繰り返しても俺の魔力が枯渇することはないだろう。

これまでの勇者と魔王の戦いで勇者が勝利し続けてきたのは他の魔族をしのぐ魔王すらも上回る力を勇者が持っているからだ。

世間では聖剣にその力があると噂になっているがそれは違う。

勇者その時代において無二なのだ、膨大な魔力を与えられこの世に生まれてくる特別な存在それが勇者。

「勇者が魔王を倒し得る存在ということすら忘れたのか?」

聖剣を構えグラへと狙いを定める。

「くそがぁ!」

グラが悪態をつきながら懐から取り出した黒い短剣を両手に一つずつ握り、構える。

「おらぁあああああ」

グラはこちらへ走ると短剣に炎を纏わせ左右へ動きながら近づいてくる。

かなりの速さだ、でも見える。

「死ねぇええええ!」

俺の右にグラが出現し短剣が差し込まれる。

焦ることはなく俺はそれをかわすこともなく腕を掴み止める。

「馬鹿な!?」

「遅い!」

腕を掴んだまま、逆の腕で聖剣を切り上げる。

「くそがぁあああああ」

グラは身をよじり掴まれている方の肩を差し出す。

振りぬいた聖剣によって俺が掴んでいた左腕は切り離されぼとりと地面へ落ちる。

グラは左の肩から先を失い傷口から大量の血をまき散らしながら後ろに引く。

「くそがぁくそがぁああああ」

グラは痛みを紛らわすためか、悔しさのせいか叫ぶ。

「人族程度にこの俺がぁああ。おい!!!見てるんだろう!?クロネぇえええええ!!俺を助けやがれぇえええええ」

グラは後方に向かい叫ぶ。

クロネ?誰だ?まさか!

「やれやれあなたが1人で十分だというから任せたのに何ですかこのざまは?」

何もなかった空間が切り開かれ黒髪の女性の魔族が姿を現す。

「お久しぶりですね勇者様」

そういって黒髪の魔族は一礼する。

ついに来た、あの隠し通路でみた魔族!

やつはほかの者では歯が立たない、ここに現れてくれたことに感謝しつつも苦戦の予感に俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

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