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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
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【幼女の心配事】

昨日クロネの魔力を感じ取ってからクロネのことを考えてる。

普段は冷泉沈着なのに、最後に見せた涙がとても彼女らしかったことを覚えている。

彼女はよく俺の下で働いてくれた。

魔王になった時、何をするのがいいか等よく二人で相談した。

一番世話をかけた分、1000年の間一番近くにいたのがクロネだろう。

だからこそ、彼女を置いて先に逝ってしまうのはとても心配だった。

魔王であった1000年の間、彼女は番を持たなかった。

俺が死ぬその瞬間まで一人だった。今は番を持っただろうか?

そんなことを考え番をもらっていたとして少し寂しく思ってしまうこの心境が親心という者なのだろうか?

彗としても人生では家庭どころか彼女事態いたためしがないのでよくわからない。

せめて、幸せであってほしいなとは思う。

だが、あの魔力は彼女にしては微量ではあったが、あれは戦いを控えた時の殺気を孕んでいた。

彼女ならば、衰退して全体のレベルが下がったこの世界の生物では、例外はあるが苦戦することはまずないだろう。

彼女は魔力操作がうまくまず俺と四人いる幹部の一人の感知や偽装に長けた者以外には全体量を見破られることはなかった。

彼女と出会っても能力の低い者ならば、雑魚だと判断してしまうだろう。

だが、その魔力量は魔王であった俺より少し少ないくらいでかなりの魔力量をそのうちに秘めている。

この世界に今、彼女を倒せるとすれば勇者や四魔将が二人以上同時に相手をした時くらいだろう。

もっとも二人ならば、退けるくらいしかできないだろうが。

そんな力をもっているのだ。彼女の名を魔王としてこの世界で聞かないのは、俺の死に際の言葉を律儀に守ってくれているのだろうな。

「「魔王を支えてやってくれ」」

その命令を守ってくれていることに嬉しく感じるとともに、罪悪感がわく。

この約束を俺のために数千年も魔族をまもり続けてくれているのだ。

四魔将とクロネは魔力量が他の魔族よりもはるかに多い、この世界の寿命は魔力量が高い生物ほど長い。

現在エルフと呼ばれている魔族ですら数千年生きるといわれているのだ。

ヨハネが死んでから2000年、彼女はずっと俺との約束を守ってくれていたのだろうか。

彼女の時間を奪ってしまったのではないかと考えるととても心が痛む。

「いでッ」

何かにぶつかったことで訓練後手伝いをするためにメイドさんのところへ向かっていたことを思い出す。

とても硬いものとぶつかったがなんなんだ?

「おっとすまん、スイ、大丈夫か?」

尻もちをついた私の前に手が差し出された。

顔を上げると鎧を身に着けたアルノーがいた。

「うん」

「ん?どうした?元気がないな」

「いや、何でもないよ!」

「いや、何かあるな」

にやっと笑ったアルノーは私を持ち上げると高く持ち上げくすぐり始めた。

「ぃやっ、ふふっははっな…んでもははないいぃぃいいぃひひっひ」

逃れようとばたばたしているとアルノーの身体が横に吹っ飛んだ。

「ぐぶるぅああ」

「なにやってんですか…」

リーシャが風魔法をアルノーにぶち込んだようだ。

リーシャの両手に一つずつ魔法陣が浮かんでいた。

空中で急に持ち上げていた人がいなくなったにもかかわらず、急に落ちるわけでもなくゆっくりと地面に降り立った。

どうやらリーシャが魔法で私の身体を受け止めてくれたようだ。

「リーシャ!?死んだらどうすんだ!?」

「あれくらいの魔法で死ぬ効果の付与はついていません」

「まぁそうだがよ、スイはちげぇだろ」

「私の魔法の制度をなめないでください」

アルノーは体を起こしこちらにやってくる。

リーシャはその鎧を改めて観察する。

「やはり上位の魔法防御と物理防御の付与の鎧ですか」

「やはりって確信なかったのかよ、下手したら俺死んでたぞ」

アルノーがびくりと体を震わせる。

「私が見間違えるわけないじゃないですか」

リーシャがキッとにらむ。

「そうだな」

アルノーがやれやれといった感じで頭を掻く。

「その鎧を着ての出撃ということは、トイフェルに動きがあったのですか?」

「あぁ、魔族が出てくる可能性が高いということで俺らにもお呼びがかかった。今回は旧魔族も確認されたらしい」

リーシャは普段は騎士団の情報を話すときは私を遠ざけているのに、今は普通に話している。

焦っているのだろうか?

「リーシャ、お前は」

「わかっています。ここで待機しています」

アルノーの言葉を切ってリーシャが答える。

「すまんな」

「いえ、団長の決めたことですので。すぐに出られるのですか?」

「あぁ、俺はもう準備ができたからこうしているが、そろそろ収集がかかるだろうな」

「気を付けてください」

リーシャはそういいながら自分の服を握りしめている。

着いていけないのが悔しいのだろう。

「油断はしないでください。旧魔族が本当にいるのならば。団長はそっちにつきっきりになるでしょう。勝てるかも…」

「あぁ、わかってる。必ず生きて戻ってくる。」

アルノーは深くうなずいた。

「旧魔族?」

ヨハネのころやここに来る前までの記憶のどこにもなかった単語がなぜか気になった。

「あ、旧魔族っていうのは、神話と呼ばれる時代付近に生まれた魔族のことをそう呼ぶの今ではほとんど残ってないんだけどね」

私がいることを思い出したのか先ほどまでの重い雰囲気が薄くなり、いつものように」リーシャが私に説明してくれる。

神話、俺がいた時代がそう呼ばれているのは知っている。

そのころからいた魔族、クロネや四魔将の誰かがいるのか?

いや、あの頃のからの生き残りならば彼らの子孫という可能性もなくはない。

そう思ったものの気になった私はリーシャに尋ねずにはいられなかった。

「ねぇトイフェルってどっち?」

「ええっとあっちね」

リーシャはきょろきょろとして方角を確認した後、指をさす。

彼女の指が向いた方向はクロネの魔力を感じた方角だった。

ということはクロネか…

「アルノーさん」

私は、アルノーの鎧に触れる。

「ん?どうした」

アルノーは私に目線を合わせてくれる。本当に優しい人だ。

「黒髪の、黒髪の女の魔族には気を付けてください、決して戦おうと思わないで。じゃないとアルノーさんが死んじゃう」

「ははは!さっきの鎧の防御力を見ただろう?大丈夫さ!生きて帰ってくるさ」

ガシガシと私の頭を撫でたアルノーはがははと笑いながら集合場所へ行ってしまった。

戦場でクロネと出会わないことを祈るしかなかった。

できることならば、みんな生きて帰ってほしいと思う。

それがどんなに難しいことか、知ってはいてもそう願わずにはいられない。

「スイ?」

アルノーが去った方向を見つめる私にリーシャが心配そうに呼びかける。

「なんでもないよ」

余計な心配をかけないようにリーシャに笑いかける。

「そう、今から手伝いよね?いってらっしゃい」

「うん、行ってきます」

私はリーシャに手を振りメイドさんのところへ向かう。

私は今、私が守れる人たちを守ろう。私はそう考えながら窓の外を見つめる。

じりじりとこの街に近づいてる魔族の魔力を感じるその方向を。


本日から更新が3日に一度に変更になります。(前回、前々回は!?っていうツッコミはご容赦くださいorz


6月3日後書き改稿

業者→ご容赦

業者下さいって何やねん(´・ω・`)

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