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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
20/42

【迫害された者の国】

「陛下!我が軍は半数の部隊が全滅、敵軍は一度進軍をやめ。再度和平の申し入れが届きました」

トイフェル国の玉座の前に俺は跪き報告を行う。

王は頭を抱える。もうこの戦線を維持することは不可能だ。

このまま続けても我が国の勝ちはない、それどころかこの国自体が消えてなくなってしまうだろう。

リュートは和平を申し込んで来た。

我が国のことを思っての温情だろう、今が引き時だぞとそういっているのだ。

王は、ゆっくりと顔をあげ口を開いた。

「追い返せ…」

なんだと!?

「陛下!どうしてですか!戦線を押し上げるどころか、今の状況を維持することすら不可能なのですよ!?」

あまりの言葉に声を荒げてしまう。

「コウよ、もう引けぬのだ。仮にこのまま和平を受けても次の相手は魔族だ。ここまで疲弊した我が軍では援軍を待つ間もなくやられてしまう」

そう力なく話す王の顔は疲れ切っていた。

「だから、俺はあの時反対したんだ!シン!あの魔族のいうことなんか聞く必要はなかったんだ!」

その顔は王の顔ではなかった。だからこそ俺はこの国を共に支えてきた戦友として話す。

俺たちはこの国が作られた頃からこの職についている。

俺たちは獣人族と呼ばれる種族だ。魔族や魔力量の多いエルフほどではないが、その祖先が魔族であるから魔力の量は多い。

魔力の量は寿命に大きくかかわる。人族であっても魔力量の多い者は長命の場合が多い。

だからこそ、トイフェルが作られた300年前からこの国を支えることができたのだ。

元々ここは国ではなかった。俺たち獣人族はエルフやドワーフと違い獣の特徴を大きくその身体に受け継いでしまっている。

獣の耳、尻尾、その形はそれぞれの獣の種類によって違うが、人族にはどうでも良いのだろう。

彼らは俺たちを獣人と呼び迫害した。

魔族を裏切り、人族についたが迫害され。もはや俺たち獣人の居場所はほとんどなかった。

俺たちが生まれた里も迫害されそれぞれの国から逃げてきた人たちが集まる小さな集落だった。

国から捨てられた土地にしか住めず、近くには多くの強力な魔物が住んでいた。

その魔物に襲われて命を落とした者も少なくはない。俺とシンの両親も魔物に襲われて亡くなった。

そんな状況をどうにかしたいと、迫害を受けるものの受け皿として国を興したのだ。

俺とシンは必死にこの国を守ってきた。獣人だけでは運営は無理だ、力は強くても平均的にその知力は低い。

知能の高い獣人もいるが、その代償として力の弱い彼らは迫害によって多くが死に、数は少ない。

だからこそ、迫害されたものを種族問わず受け入れ、国を大きくした。

こうして苦労して作った国はようやく安定し始め、差別的な考えを持つ人族の国も減ってきていたというのに。

「コウ、この国はあのころに比べて大きくなった、だが獣人への差別は大きいものだ。

様々な種族が入ったことによってこの国の中でも差別をするものが出てき始めている。

内部ですらそうなんだ、外部の人間なんてものはもっとわかりやすい。この戦争の前周辺諸国がこの国への行商人の行き来を禁止した。獣人が国を持つことが気に食わず、魔王が討たれた瞬間これだ。差別は根深い、もう限界なんだよ」

かつて金獅子と呼ばれたシンはその面影もなく、ぐったりとうなだれている。

「ならなぜ!リュートなんだ!?あの国は獣人を差別しない友好的な国だったではないか!?」

「ダバルの指示だ。勇者を生み出すあの国を滅ぼしたいらしい」

現在の魔王か、勇者に討たれたと聞いていたが生きていたのか。

「ダバルは獣人を魔族に加えるといった。そこでならきっと獣人はうまくやっていけるはずなんだ」

「他の種族はどうなる?魔族は力がすべてだ!戦う術のない獣人はどうなる!?」

その言葉にシンは黙り込んでしまう。

「すまない。だがもし、彼らが害されるのであればその時は俺が命がけで守ると約束する」

ひどい顔をするシンを見ていられなくなり話を切る。

「もういい、それよりもここからどうするかだ。和平を断ったとしてどうする?現存する部隊だけでは勝てないぞ?」

「それならば、ダバルが援軍として魔族をよこすと言っていた。その一人には旧魔族もいるそうだ」

「旧魔族!?」

旧魔族は神話の時代、またはその次世代周辺に生まれた魔族のことだ。

今魔族と言われている者たちをはるかに上回る力を持っていると聞く。

その旧魔族が加わるのであれば、勝算もあるということか。

「だから大丈夫だ。この戦、絶対に勝てる」

そう力強く言ったシンの目は濁り、戦場をかけていたころの面影はもうなかった。

「その通りです」

その時窓から突如女の声が響いた。

「誰だ!?」

窓を振り返り、シンをかばうように立つ。

「狼さん、そう警戒しないでください」

狼さん?俺の事か?

「お前はダバルが言っていたものか?」

シンはその正体に心当たりがあるのか、フードを被ったその女性らしき人影に声をかける。

「ええ、どうも初めまして、クロネと申します。このたびは魔王の要請でこの国の加勢に来ました」

そういうとフードを取り礼をした。

フードから現れた姿は、偽の姿なのだろうか?一見すると魔族には見えず、人族の黒髪の美女であった。

「そうか、これからよろしく頼む」

その美しさに思わず見惚れてしまっていたが、シンのその声に我に返る。

彼女の異常さに気付く、彼女にはまるで魔力を感じないのだ。

俺たちの鼻や耳をごまかしただけではなく、魔力はどんな生物でも魔力は体外へ発せられる。

魔力操作によって隠蔽することは可能だが、それでも通常はわずかに出てしまうはずだ。

それほどまでに魔力を抑えるのは難しいのだ。

それなのに、この女からはわずかにも魔力が感じられない。

それを意図的にやっているのだとしたらなんという魔力操作の技術だ。

おそろしい、これが旧魔族と呼ばれるものの力量なのか。

歩く姿も自然と歩いているようで隙がまるで無く、こちらが一撃を加える前に殺されると獣の本能がそういっている。

シンも同じ考えなのかその額には汗が浮かんでいる。

「そう、怯えないでください。これからは仲間なのですから仲良くしましょう」

そう笑った表情とは別にその目は全く笑ってはいなかった。


その数日後彼女は再び魔族を率いてやってきた。

彼ら魔族の援軍に俺は安心することはできず、何か大変な事が起きるのではないのかと不安を感じてしまった。

そして、和平を断ってから数日後再び、リュート軍進軍の報が入り戦争が再開したのであった。

風邪をひいてしまいました。

昼と夜の気温差が激しいので皆様も気を付けてください(´・ω・`)

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