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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
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【幼女の力】

「さて始めましょうか」

動きやすい服装になったリーシャが屈伸をしながら話す。

口調はいつもと変わらないのに目はとても楽しそうな顔をしている。

リーシャ自身が言っていたように、女の子らしい趣味よりもこういった訓練、鍛錬といったものが好きなのだろう。

私達は修練場にきていた、非番なのだろうか?周りにはほかにも団員の姿が見える。

私が周りを珍しそうに見つめていたことに気付いたのかリーシャはこちらを向くと説明を始めた。

「ここは団員の訓練場でもあるからね、毎日の鍛錬をここで行っている人も少なくないのよ」

そういうと修練場の物置から持ってきた木剣を下に並べる、見た目は同じだが柄頭にはそれぞれ違う印がつけられている。

一つは丸印もう一つは丸上からバツ印がつけられていた。

「それじゃあ、最初に木剣の説明から始めるわよ」

そういってリーシャは並べた木剣の前に座る。すぐさま私も近付きリーシャの目の前にしゃがむ。

木剣は通常の騎士が使うものと同じ大きさになっているらしく私の背では少し大きかったが、前世では自分の背よりも長い剣を振り回していたこともあるんだ、大丈夫だろう。

「こちらの木剣は木だけで作られたものね、刀身が細くて打ち合ったらすぐ折れてしまいそうだけど硬化の術式を付与しているからめったな事では折れないわ」

そういって丸印の付けられた木剣を指さす。

「それでこっちが、より実戦向きなものよ。中には鉄心が入っていて重さと使用感が本物の剣に近づけられているわ。もちろんさっきのものと同じ付与がしてあるから耐久度は高くなっているわ」

もう一つの木剣を指さしながら説明を続ける。そして実戦用の木剣を持ち上げると振りかぶり軽く振った。

すると風が起こり木剣を風が包む。

魔力を通したのか?

「驚いた?この木剣に使われている木はね世界樹様の枝なのよ。そのおかげでとても魔力との相性が良くて武器に魔力を纏わせる練習にちょうどいいのよ」

世界樹…ディーネの作った魔力を生み出すでっかい木か。

彗の記憶をたどり世界樹について思い出していると難しい顔になっていたのか、リーシャが慌てる。

「もちろん無断でとかではなくちゃんと許可はもらったのよ」

許可?管理しているエルフにだろうか、確か初代の勇者のパーティにもエルフがいたから彼らにということだろうか?

「エルフの国は神話の頃からの交友だからね、一度は国交も断絶されたみたいだけど、数百年前に和解したようよ。その印として世界樹様にいただいたのよ」

え?世界樹様意識あるの?

リーシャの言葉にそんな疑問が浮かぶ。

というか口に出してた。

「ええ、あるわよ。ああでもこのことは知ってる人は少ないから内緒にしていてね」

「はい」

結構な秘密じゃないのかそれは?幼女においそれと話していいのか?

いや、幼女だからこそ話してもほかのだれも信じないか。

そもそもこの話も幼女相手に話すおとぎ話の可能性すらある。

でも、もし事実だとするならば、いつかあってみたいな。

新たな楽しみも増えたところでリーシャが話を切る。

「さて、その話はまた今度にして今日はこの木剣を使って素振りをするからね。どっちを使う?」

そういって二つの木剣を私の前に出す。

さて、どちらにするか…

今更軽い剣を振ってもしかたないからな、鉄心入り一択かな。

「こっちにします」

鉄心入りの木剣を指さす。

「え、こっち?重いよ?」

リーシャはそういってゆっくりと木剣をこちらへ渡そうとした。

重いと言っても普通の剣程度な…ら!?

「ひゃっ!?」

予想していたよりも重かったために変な声をだして落としてしまう。

なんだこれ!?普通の剣よりはるかに重たいじゃないか

「んー」

どさっと音をたてて落ちた木剣を持ち上げようとするが地面から浮かすことができない。

「んはぁ!」

手をはなすと再度音をたてて地面へと倒れた。

その反動で後ろに倒れ尻もちをついてしまった。

「普通の剣より重たくないですか?」

その様子を微笑んでみていたリーシャに問いかける。

「いや、それが一般的な剣の重さだよ」

そう答えながら地面に落ちた木剣を軽々とひろいあげる。

その様子を見て、先ほども軽々とあの木剣を扱っていた事を思い出す。

まさかリーシャは怪力!?なわけはないからな…

近くに見えるほかの騎士団員もリーシャと同じように軽々と持ち上げているところを見るとリーシャだけ特別怪力というわけではないようだ。

身体能力を上げる魔術も使ってないようだ。

ここにいる全員が怪力という可能性もわずかにあるがあまり現実的ではない。

ではなぜ?痺れた手を見る。

私の目に映ったのは、年相応の小さな手。

そうか、前回の転生は魔族として成長した姿で生まれたから元々の身体はできていた為気付かなかった。

人族として生まれたということは筋力も年相応になってしまう。

私は今、成長途中の幼子なんだ、鍛えていない幼女が重い剣を持てるはずもない。

これはまずい、大変まずい、木剣もまともに振れないようではリーシャに力を認めさせるどころの話ではない。

身体強化を使ってもいいが、先ほど落としてしまっていた私がいきなり持ち上げては怪しまれる。

ただでさえ王子に怪しまれているのだ。

害はさほどないと昨日で判断されたようだが、そんなことでまた怪しまれたら面倒だ。

ショックを受け、これからどうしようかと悩んでいるとリーシャが心配そうに顔を覗き込んできた。

「大丈夫?だから言ったでしょ?重いって。こっちにしときなさい」

そういって鉄心の入ってない木剣を渡された。

仕方ない、無理矢理身体強化をしても素地ができていなければ負担も大きいし、素直に鍛えるか。

そう考え、渡された木剣を構える。

こちらも重かったが、持ち上げられないほどではなかった。

はぁ、旅に出られるのはいつになるんだろうか。

出だしで躓いてしまったが、頑張るぞ!

そう思いながら前世を思い出しながら一振りする。

「まだ何も言ってないのにきれいな構えね」

あ、またやってしまった。

本当に大丈夫かな…。


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